第27話 書を拾え、町へ出よう


 私がよく本を読む場所は、家の外である。

 うちの中だと、誰かがテレビやラジオを付けているため、あまり集中できない。しかし、留守番中は私がテレビを見てしまうので、結局読めない。


 大学生くらいから、バスの中や図書館、講堂などで本を開くようになっていた。

 その時には携帯電話を持っていたものの、代金がかかるからと、インターネットに繋がらないようにされていたので、退屈しのぎに本を用いるようになった。


 特に、カフェで本を読む時、私は悦に入っていた。我が家が貧乏すぎて、カフェなんて夢のまた夢であったからだった。

 スタバで島崎藤村の『破戒』を読んでいた時が、私の調子乗り度が最大風速を観測したと思う。


 社会人になって、給料を貰って、スマホに買い替えてからは、一気に読む頻度は減った。出先でもスマホを開いてしまうようになってしまったからだ。

 読書メーターに登録した小説を数えて、一年に十冊以下しか本を読んでいなかったことに私は愕然とした。そして、二〇一九年は三十冊読もうと決めたのであった(『ペンギン自由帳』第14話参照)。


 しかし、家の外で本を読むという習慣は、なかなか治らない。いや、読もうと思えば読めるのだが、やっぱり外で読みたいなーという気持ちが強い。

 丁度その頃、仕事を辞めて、携帯料金を見直して、ギガを1に抑えていたので、外ではスマホを触るよりも、本を読む機会がぐんと増えた。


 ただ、カフェなどに行くお金もない。私は無料で留まれて、本を読める場所を求めて、さまようようになった。

 海岸沿い、公園、ショッピングモールなどなど、あちこちに出没して、読書に没頭している。お陰様で、波の音や風の音、人の雑踏や行き交う車の音をBGMに読書できるようになっていった。


 また、本を持ち歩くことを意識し、今年で三十冊読むことを目標としているために、文庫本が中心、ハードカバーでも薄めの本を選ぶようになってしまった。

 どんな本でも読むぞ! というのが座右の銘であるはずなのに、この体たらく。私は内心密かに反省した。


 今年のゴールデンウィークは、熱い本を一冊読んでやろう! と意気込んで、今現在一番読みたい本の中でも最も分厚い、恩田陸の『蜜蜂と遠雷』を図書館から借りた。あと、「蜜蜂」って五月っぽいという理由もある。

 何という重厚感。ページ数は五百越えで、さらに二段組である。これは骨が折れるぞーと思いながらも、異様にわくわくしている自分がいた。


 ゴールデンウェークは毎日どこかしらに出掛けて、出来るだけお金をかけずに、本をじっくり読みたいと計画している。

 ゴールデンウィーク三日目の現在、『蜜蜂と遠雷』は三分の一を読み終えた。純粋な読書体験に胸をときめかせながら、これからもじっくり読んでいこう。

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