第24話 拙作問わず語り 『日常キリトリ線』編
いつの間にか、『日常キリトリ線』が千PVを超えていた。
閲覧してくれた皆様、ありがとうございます!
それを記念して、今回は『日常キリトリ線』について解説していこうと思うのだが……実のところ、それが一番難しい。
カクヨムに登録した頃から始めていて、今でもコンスタンスに新作をアップしているので、私のライフワークと言っても過言ではないのだが、つかみどころのない短編集だと思う。作者でも。
一応、コンセプトとしては、「舞台が現代だったら何でもありな短編集」なんだけれども、色々とやりたい放題している。
ワンシチュエーションと説明文には書いているけれど、必ず守っている訳ではない。割と異世界っぽい話や、がっつり未来の話を書いたこともある。
連載を開始した頃は、非日常な話、日常の話、夢や幻のような話、人外が出てくる話、不思議が当たり前な世界の話と、細かくルーティーンしていこうと思っていたのだが、段々そのような分類が面倒になってしまった。
現段階でも、日常話が連続しないように気を付けている部分があったりするのだが、まあ、大体関係なくなっている。
それから、バッドエンドはあんまりないと説明文にあるが、「あんまり」という部分を強調しておこう。
人が死ぬ瞬間は書かないようにしようと決めていたのだが、これから先も、ずっと守られているとは限らない。
もちろん、好きなように書いていたからこそ、三年ほど続けられたのだろうと思うのだが、じゃあこの作品を初見の人に呼んでもらえるように一言で説明してと言われたら、悩みまくってしまう。
そのため、キャッチコピーが四回も変わっている。拙作では変更数が最多である。
まず最初のキャッチコピーは「普通の毎日は、意外と輝いている」。
この説明文だと、「日常の中のちょっとした出来事を描く」ように感じられる。そういう話もあるのだが、がっつりシュールなネタも描いているので、これは当てはまらない。
次のキャッチコピーが「普通の人も 人じゃないヒトも 日常も 非日常も」。
これならば、大体の掲載作が当てはまるのだが、しかし、ぼんやりと輪郭が見えない。そもそも、「普通の人」よりも「変わり者」の比率が高いので、あんまりしっくりこなかった。
その後が、「日常から切り離される/日常を切り取る」。
これはかなり気に入った。論文や翻訳文では「/」という記号は「どちらも当てはまる」みたいな意味合いなので、日常系も非日常系も言い表しているし、タイトルの文字りになっている。
ただ、「日常から切り離される」は分かりやすいけれど、「日常を切り取る」と呼応していないなという事がずっと気になっていた。
そこを少し直して、「日常から切り取られる/日常を切り取る」が現行のキャッチコピーとなった。
しかし、キャッチコピーが定まったからと言って、「なんのこっちゃ」と言われたらそれまでである。
『日常キリトリ線』を連載し始めた頃、どんな短編集か分かりやすく言うために、「○○に似ています」という話を近況ノートに乗せて宣伝しようと思った。
色々と候補を挙げて考えてみたが、「これ!」というものが見つからず、結局断念した。
それを思い返して、リベンジしてみようと思う。
とはいえ、明確に言い表すことは困難だろう。
何せ、「日常キリトリ線」は私がこんな話を書きたいというパッションだけで構成された、モザイク画のような短編集なのだから(ちょっとカッコつける)。
短編スキーとして、様々な短編集を読んできたので、様々な影響が表れていると思う。
特に、芥川龍之介の細やかだが読みやすい描写力、星新一の筋の通った大どんでん返し、川上弘美の不思議と隣り合わせの日常などが、『日常キリトリ線』のエッセンスとなっている。
他には、ラーメンズのコントによる、会話から世界観を描いていく方法とか、相対性理論の曲に表れる、不可解な出来事の中でも失われない日常感覚とか、『空は灰色だから』のうっすらとほの暗い不穏さとか、「似ているかもなー」という作品は色々ある。
そのため、「○○と似ている」と完全に言い切ることが出来ずに、私の好きなものが寄せ集まったカオスな短編集になっている。
まあ、短編集というものは、そういうものであるのだから仕方ない。そう言えるだけならば、まだよかったのだが。
実を言えば、短編集に一度出た人物や設定が再び出てくる、つまりは短編集内で連載しているものもある。
短編集の一番の強み、「好きな位置から読んでも大丈夫」を完全に潰してしまっている。私自身、好きな所から読んでもらっても構わないのだが。
とりあえず、単発で呼んでも大丈夫なように書いているのが、分かりにくくなってしまったら申し訳ない。
そのため、ここからは『日常キリトリ線』内の連載を紹介しよう。
・幸子と紗世シリーズ 「同居中のふたり」「それでもこの冷えた手が」
保育士の幸子、OLの紗世のなんでもない生活を描いたシリーズ。
レズビアンのカップルのお話なのだが、あんまり肩肘張らずに読んでほしい作品。
時間軸で言えば、「それでもこの冷えた手が」→「同居中のふたり」なのだが、それは「同居中のふたり」から書いて、またこの二人の話を書きたいなーと思ったのがきっかけ。
これまで幸子目線の話を書いていたので、紗世目線でも書きたいし、前日譚や後日譚なんかも書いていきたいと思っているくらいに気に入っている。
・「私」語りシリーズ 「お土産」「チェス」「ラブレター」
こちらは、昔から私の頭の中にいるキャラクターたちを登場人物に、出来るだけ説明せずに彼らの日常を描こうという実験的作品。
いつでも冷静沈着な「私」の目線で語られる、とある部署でのお話。
女性好きな部長のシェイクスピア、人をからかうのが大好きなカミュ、負けず嫌いのチェスタトン、モテモテな紅一点クリスティーが登場人物たち。
名前が海外作家と同じなのだが、拝借しただけで、彼ら本人とか子孫とかそういう設定は無い。
ただ、何故海外作家から拝借したかという理由はちゃんとある(意味深な笑み)。それから、「私」の名前も現段階では伏せている。
一応、掲載順に時間軸はあるつもり。
そして、こちらはこれからも続く予定である。
・写真サークルの話シリーズ 「再会の話」「アニメの話」「憧れの話」
とある大学内の写真サークルが舞台のお話。
その写真サークルの登場人物ごとに、語り手を変えて物語が展開していく。
タイトルに「~~の話」となっているのは、この写真サークルのシリーズである。 時間軸は掲載順と関係ないのだが、個人的には掲載順で見てもらう事を推奨する。
登場人物の設定もがっつり決めているので、全員出して、ちゃんと完結させたい。
ただ、季節を意識して掲載しているので、中々進められないのがもどかしい……。
・読書好きの「私」シリーズ 「コインランドリー一景」「花に嵐」「ここから先は夏」
一番分かりにくいシリーズ。
語り手の「私」が、色んなところで本を持って出かけているので、心の中ではそう呼んでいる。
「私」が目にした、印象的な風景とちょっとした誰かのドラマを描いたシリーズ。
こちらは芥川龍之介の「蜜柑」にかなり影響を受けていて、あのように鮮やかな人生の一瞬を切り抜きたいという一心で書いている。
これからも続くかどうか分からないが、ネタがあれば細々と書いていきたい。
・JKシリーズ 「坊主頭に関する雑談」「図書室でもくだらない話」
AとBとCの三名の女子高生が、何かがずれた話をずっとしているシリーズ。
こちらは、描写などが一切なく、会話文だけで描かれている。
Aはしっかりしているようで天然で、Bはツッコミのようでツッコミではなく、Cは計算しているようで全然していないという、三人ともおとぼけなキャラクターである。
こちらは全く頭を使わずに書けるので、思い出した時に書いていくだろう。
・EとFの戯言シリーズ 「EとFの戯言①~③」
EとFの二人の男性の会話だけを述べるシリーズ。
こちらはJKシリーズとは真逆で、彼らの正体とかいろいろと伏せられた状態ですすめられている。
こちらも箸休め的なイメージで書いていたのだが、かなり設定を練り込んでしまったので、それらを小出しにしながら進めていく所存。
・風変わりカップルシリーズ 「『七夕ですね。』」『「中秋の名月ね」』『「クリスマスだけど」』『「また会いに来たよ」』
一組の男女カップルが巡る四季について描かれているシリーズ。
二人に名前は無くて、単純に「彼」「彼女」と呼ばれている。「『七夕ですね。』」『「クリスマスだけど」』は「彼」目線、『「中秋の名月ね」』『「また会いに来たよ」』は「彼女」目線になっている。
恋人同士だけど、穏やかで、肉体関係の全くない二人の恋愛が主題である。
元々は単発短編だった「『七夕ですね。』」の二人の話を、同題異話・三月号の『「また会いに来たよ」』まで続いたので、中々思い入れがある。
『「また会いに来たよ」』でこちらのシリーズは一つの終着点に辿り着いたので、ここからまた続くかどうかは未定。
でも、続いてもきっと波乱の無い、二人の日々についてだろうなあとは思う。
以上が、『日常キリトリ線』内の連載作品である。
ただ、このキャラクターの話をまた書きたいとたくらんでいる部分がかなりあるので、絶対にシリーズものは増えていく。ああ、また余計にややこしいことに……。
まあ、私はもったいない精神を発揮してしまうので、名前のあるキャラクターはどっかで再登場するかもしれない。
それから、それから、実を言うと『日常キリトリ線』の最終回の構想もある。
それが一体いつになるのかは分からないけれど……(傍らのネタ帳を見る)、その時に向けて、色々としかけている途中である(自分の首を占める行為)。
そんな『日常キリトリ線』ですが、これからも読んでいただければ、そしてここきっかけに目を通してもらえれば、幸いです。
最後の最後にリンクを張ります→https://kakuyomu.jp/works/1177354054881796766
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