第20話 同題異話全タイトル解説
記念すべき、20話目の『ペンギン自由帳』は、予告していた通り同題異話のタイトルについて、主催者からの解説をしていこうと思う。
私はカクヨムで自主企画が出来るようになった頃から、「自主企画をするなら、タイトル統一の企画をしてみたい」と思っていた。
四月一日から始めて、一カ月間開催するとして、ではそのタイトルはどうしようか考えた時に、思い出したのは「春はまだ青いか」だった。
「春はまだ青いか」は、お笑い芸人を目指す青年二人の話を考えていた時に思い付いたタイトルで、ここからコントの話題など思いつかないようなタイトルを気に入っていた。
もしも「春はまだ青いか」というタイトルで募集したら、どんな話が出てくるのだろうか、非常に気になった。すごく抽象的なタイトルで、不安があったけれど、丁度春だし、ちょっとやってみよう、そんな気持ちでスタートした。
もしも十作品以上の参加作が集まったら、五月からも続けてみたいなとぼんやり思っていたところ、四月の初旬くらいに十個を達成した。
さらに結構評判が良かった。そして私は近況ノートで、同題異話の毎月開催宣言をした。
しかし、これから十二か月分のタイトルを考えなければならない。
一先ず、タイトルを考えるうえで、いくつかの自分ルールを課した。
①タイトルは抽象的に、特定のジャンルのイメージが付かないようにする
②一度使った単語と同じ分類の単語は使わない(例えば、「青」を使ったら、色の言葉はもう使わないなど)
③同じ助詞と同じ記号は使わない
④響きが似通らないようにする
我ながら、ハードモードなタイトル決めとなった。
後から苦しまないようにと、五月ぐらいで十二カ月分のタイトルを考えたのだが、その時が一番大変だった。
例えば、言葉一つ一つでも、すでにイメージというものが付いている。
「好き」と言ったら恋愛、「謎」と言ったらミステリー、また、「笑い」と言えば明るいイメージが、「みじめな」と言えば暗いイメージがどうしてもついてしまう。
とりあえず、四月から三月までのタイトル予定を並べて、そこを埋めながら、自分ルールに当てはまるのを考えていこう。
そうして、私はネタ帳にタイトルを箇条書きしていった。その為、思いついた順番は月と関係がない。
以下は、それぞれのタイトルの単語を細かく分けたものだ。
四月号 春はまだ青いか→春 ……名詞(季節)
は ……助詞(主語)
まだ ……副詞(未然)
青い ……形容詞(色)
か ……疑問/反語
大学生の頃、日本語について勉強した時を思い出しながら、分類してみた。
「か」の後に「?」を付けなかったのは、「これが反語として読まれてもいいな」と思ったからだ。
とりあえず、最初のタイトルから、色んな単語を消費してしまった感がある。
五月号 薔薇香る憂鬱→薔薇 ……名詞(植物)
香る ……形容詞(嗅覚)
憂鬱 ……名詞
最初は、「薔薇色の憂鬱」だったが、先月で色を使ってしまった上、この言葉だとネット上でヒットするものがあったから却下した。
「薔薇と言えばなんだろうなー」と考えて、次に連想したのが香りだった。薔薇の香りで憂鬱になる、なんだか背徳感があって良い。
また、日本語で書くと難しい二大漢字の競演であり、プラスなイメージのある「薔薇」とマイナスなイメージのある「憂鬱」を掛け合わせるのが良いと思えた。
六月号 飴と傘→飴 ……名詞(食べ物)
と ……助詞
傘 ……名詞(日用品・和語)
ずばり、ダジャレタイトルである。印象的なタイトルのためには、ダジャレを使うことを私は厭わない。
ただ、元々は「雨とカーテン」というタイトルを考えていた。悪くはないが、インパクトが無くて、こね繰り返した結果が「飴と傘」である。
「○○と○○」系のタイトルは、二つの関係性がどうなっているのかがはっきりしていないので、無限の可能性を秘めていると思う。
七月号 コップの中の漣→コップ ……名詞(日用品・外来語)
の ……助詞
中 ……名詞(位置)
の ……助詞
漣 ……名詞(自然現象)
「コップの中の嵐」という言葉をパロディしたタイトル……というのは後付けであり、殆どインスピレーションによるもの。
私は、「漣」という言葉が好きだ。響きが繊細で、美しい。
「○○の○○」というタイトルはある意味王道でもあるので、「の」をタイトルに使うときは出し惜しみしないようにしようと思った。
「コップ」は日用品で、「傘」と被っているのだが、「いや、こっちは外来語で、あっちは和語だから」と、言い訳させてほしい。
八月号 火花を刹那散らせ→火花 ……名詞(自然現象)
を ……助詞(目的語)
刹那 ……名詞(時間)
散らせ ……動詞(命令系)
またしても、「火花」で自然現象が被ってしまった……。
元々は、「殺陣書きたい」と考えていた話のタイトルで、ストレートに「火花を散らせ」だけだった。
しかし、これを同題異話にするとして、こんなにシンプルで大丈夫だろうか、と思ったのが七月の最終日。
そして、考えに考えて、「刹那を付けよう!」と思い付いた。「刹那」以外では、「目前」も候補だった。
「刹那」を付ける位置は、違和感がありつつ、意味は通る場所を選んだ。
九月号 さいわいなことり→さいわいな ……形容動詞
ことり ……名詞(生き物)
ここら辺から、苦悩が始まる。
そう言えば、動物ってまだタイトルにしていないなと気付いたがいいが、季節と動物が結び付かない。九月の季語を調べて、「鹿」「猪」「蜻蛉」などの中から、「小鳥」を選んだ。
形容動詞も使いたいと思ったが、「小鳥」と繋げる形容動詞はどうしようと、悩んだ。「密やかな」「たおやかな」「
「啾啾と」はまあまあ気に入っていたのだが、これまで難しい感じが出てくるタイトルが多いので、却下した。
その反動によるのか、タイトルはオールひらがなとなった。
十月号 モンスターへ乾杯!→モンスター ……名詞(英語)
へ ……助詞
乾杯 ……名詞(動作)
! ……記号
最初のタイトル候補は、「モンスター、上陸」だった。ゴジラのような怪獣物や、海外からのすごいスポーツ選手とかを想像していた。
しかし、ちょっとイメージを付けすぎているのかもと思い、もう一度考え直すことに。
モンスターがハロウィンが由来なので、そこからイメージを広げて、パーティーでの乾杯が思い付いた。
「モンスター」がマイナスイメージの言葉なので、「乾杯」でバランスを取った。念を押すように、「!」もつけてより楽しげに。
十一月号 図書館暮らし。→図書館 ……名詞(場所)
暮らし ……名詞
。 ……記号
ずっと頭の中にこのタイトルだけがあったけれど、まだ内容を考えていなかったので、同題異話で使うことにした。多分、私の「図書館で暮らしたい!」という日々の妄想から芽生えたのだろう。
場所名を入れれば、舞台が決まってしまうのではという懸念があったので、これまでは使わなかったが、「シチュエーション指定系が一つくらいあってもいいのでは」と思い、このタイトルを採用した。
「。」は、ネタ帳でまとめる時に登場した。特に意味を求めていたわけじゃないが、ちょっと個性的になったと思う。
十二月 星流夜→星 ……名詞(天体)
流 ……名詞(動作)
夜 ……名詞(時間帯)
倉橋ヨエコさんの曲に「金魚想う」というタイトルがあるのだが、このタイトルは助詞を使っていないから、「金魚が想う」でも「金魚を想う」でも「金魚と想う」でも当てはまるのだと思い、感動したことがあった。
私も助詞を使わないタイトルを作ろう! という思いから誕生したのが、「星流夜」だった。「星が流れる夜」でも「星を流した夜」とでも読めるようにと。
そのため、「流星夜」にはならなかった。
クリスマスのイメージもあったので、「聖夜」に近い響きも使いたかったというのもある。
一月号 貧乏くじ男、東奔西走→貧乏くじ ……名詞(慣用句)
男 ……名詞(性別)
、 ……記号
東奔西走 ……名詞(四字熟語)
最初のタイトル候補は、「ニュー・イヤー・クライシス」。思い付いた瞬間は「イケる!」と思ったが、後々、「いや、ダサくね?」と思い、変更することに。
まあ、ここまで言えば分かってもらえると思うが、私はカタカナタイトルを作ることがとんでもなく下手だ。憧れがあるのだけれど、どうしてもダサくなる。
一月、正月と言えばという単語が、中々思いつかずにこちらも苦労した。「貧乏くじ」から、悩んだが「男」を付けて、まだ使っていない四字熟語と組み合わせた。
二月号 それでもこの冷えた手が→それでも ……接続詞(否定)
この ……指示
冷えた ……形容詞(温度)
手 ……名詞(身体)
が ……助詞(主語)
二月はバレンタインという大イベントがあるので、恋愛に関する言葉が出てしまう。そこから離れて、二月の寒さに言及することになった。
接続詞スタートのタイトルは、とにかくかっこよくて、絶対に使いたいと思っていた。あと、「春はまだ青いか」の参加作を読んだ時に、「タイトルを作中に入れている人が多いなー」と思ったので、文中に入れても違和感のないタイトルを目指した。
ここで、とっておきとばかりに、体の部位の単語「手」と、主語を示す助詞の「が」を使った。
三月号 「また会いに来たよ」→「」 ……記号(会話文)
また ……副詞
会い ……名詞(動作)
に ……助詞
来た ……動詞(過去形)
よ ……文末
台詞が元になっているタイトルも好きなので、それを目指すことに。台詞だと分かるようにと、「」を付けた。
このセリフが発した人物の性別が、何でも違和感のないようにと、シンプルだけどちょっとだけ個性のある言葉遣いにした。
三月はどうしても別れの季節になってしまうが、再会の物語があっても良いではないかと思った。
同題異話の最終回なので、再び皆さんと会えますようにという願いを込めたタイトルでもあり、四月号の「まだ」と呼応した「また」でもある。
こうして振り返ってみると、少々自分の詰めの甘さが見つかって、悔しい。動作の名詞、いっぱい出てくるじゃないの。
あと、これを使いたかったなーと思う言葉はいくつかある。聴覚に関する言葉とか、数字とか。
だが、どう考えてももう何も思いつかない。
本当に十二個もタイトルを考えて、私は満身創痍だったのだ。また、ネタを寝かして、同題異話を私が開催するまで、数年はかかるのだろう。
最後に、NG集的なノリで、没ネタを公開しよう。
・水平線へ……シンプルオブベストだが、シンプル過ぎた。
・枯葉魚……意味が分からない。
・○○○美しい夜……ネタ帳を見るまで忘れていた。多分、十二月の候補。
・きっと恋人同士になれない二人……恋愛に特化しすぎた。あと、長くてくどい。
・How do you do,Mr.Monsuer?……何をとち狂った。
・時さえも凍らせて……異能力バトルっぽい。
・聖銀河……スケールデカすぎ。
以上である。
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