第19話 タイトルについて本気出して考えてみた
二〇一九年三月一日から、最後の同題異話が始まった。
二〇一八年の四月一日から数えて、全十二回、色んなタイトルを出して、たくさんの参加作品に恵まれて、本当に幸せな企画だったと思う。
これからの「ペンギン自由帳」は、「同題異話強化編」という事で、タイトルに関する話を、三回に分けてお届けしよう。
第一回は、「タイトルフェチはかく語りき」の続きというか、私ってどんなタイトルが好きなんだろうと考えたことについて。
ちょっと前に、ツイッターのTL上で、いわゆるなろう系のような、長いタイトルについての話がちょくちょく出てきていた。
「一目で内容分かるようにするなら、長いタイトルもやむなし」のような意見も見受けられる中で、しかし私が好きなタイトルはそういうのじゃあないんだよなあと傍観していた。口を出したら止まらなくなるので。
では、私が好きなタイトルって、どのようなものなんだろうか? と自問自答して、ぼんやりとだが、答えらしきものは見えてきた。
私は、「一見意味の分からないタイトルだが、読んでみるとすごくぴったりだと分かるタイトル」が好きである。
例えば、伊坂幸太郎さんの『オーデュボンの祈り』。
大概の人はタイトルを見た時に、「オーデュボンって何だろう?」と思うだろう。あらすじを読んだだけでは分からない。
しかし、読み進めていくと、「オーデュポン」とはアメリカの鳥類研究者の名前であり、物語上に直接登場するわけではないが、非常に深い繋がりのある人物だと発覚する。
この、名前の由来が分かった! 瞬間というのが、とんでもなく気持ちいい。配線と配線を繋げて、電球が光ったような心地になる。
だから、私は同題異話・四月号「春はまだ青いか」の自作では、直接本文の中にタイトルの言葉を出さなかった。
読んでもらえれば、このタイトルの理由をなんとなくでも察してもらいたい、そんな気持ちを込めてあのようなお話になった。
タイトルとは作品の顔であり、作者が一番に伝えたい部分ではないのかと思う。
それで言ったら、『あるいは牡蠣でいっぱいの海』や『そして誰もいなくなった』という接続詞スタートのタイトルはすごくかっこいい。
「本文ありきのタイトル」で、「この本文があったからこのタイトルになった」という事を倒置法的に伝えている。
同題異話・二月号の「それでもこの冷えた手が」は、接続詞から始まるので、こうなるまでが本文で語られるという形の話になった。
他にも、響きというかイントネーションが抜群に良いタイトルも、無条件に惹かれる。
それも、ただすらすらと言いやすい言葉よりも、ちょっととっかかりがある方がより好ましい。
倉橋ヨエコさんの「夜な夜な夜な」という曲は、初めて見た時の字面、響き、そしてとっかかり、全てが私にとってパーフェクトなタイトルだった。
普通に使われている「夜な夜な」という言葉に、もう一つ「夜な」と付けただけなのに、不気味でぞわぞわとする一方で、なぜか口に馴染むタイトルになったと思う。
この、とっかかりがあるタイトルも作ってみたいと思って、同題異話・八月号「火花を刹那散らせ」というタイトルが決まった。
「刹那」の位置は最後まで悩んだが、絶対に「刹那火花を散らせ」にしたくは無かった。こうすれば馴染み深い単語の並びになるけれど、それは同時に個性がないことだと思ったからだった。
また、奇妙な言葉の組み合わせのタイトルも、大好きだ。
乙一さんの『夏と花火と私の死体』は、いつ見てもぎょっとするタイトルだ。「夏と花火」と同じく、当たり前のように並ぶ「私の死体」には、どうしても目を惹かれてしまう。
プラスとマイナスのように、正反対の意味を持つ言葉の連なりは、最強だと思う。
同題異話では、五月号の「薔薇香る憂鬱」や十月号の「モンスターへ乾杯!」ののように、全く印象異なるの言葉の並びはとても目新しいのではないかと考えた。
総まとめとして、私は本文を見ないと由来が分からない、字面と響きにとっかかりがあるけれど整っているタイトルが好きなんだと断言できる。
これから、自分でタイトルを作る時は、そのような点に気を付けていきたい。
さて次回は、頑張って考えたのだから、十二か月分の同題異話のタイトル全解説を行いたいと思う。
ちょいちょい今回でも同題異話については語っていたが、次回もお付き合いいただけたら幸いである。
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