第13話 二〇一八年マイベスト
三年前くらいまで、密かに、今年一番自分にとって好きな○○をまとめるという事を行っていた。
それをネタ帳に記していたのだが、いつの間にかやらなくなり、でも現在カクヨム上でエッセイをしているのなら、この場で発表をしてもいいんじゃないかと思い、書いている。
ルールしては、二〇一八年中に自分が見聞きしたもので、一番好き、刺さったものを決めていくというものだ。
備忘録的なものだが、よろしければお付き合いください。
・マイベスト小説 川上未映子『ウィステリアと三人の女たち』
ずっと好きな作家さんの作品で、図書館で見つけて手に取ってみた。
川上さんははっきり言って読みにくい。夢と現実、記憶と現在、自分と他者との境界線が、容易く揺らいで溶けてしまう。
物語も、セオリー通りには進まない。
それでも、胸にぐさぐさと、ガラスのように美しい言葉たちが刺さっていく。
きっと、テーマは「女と女」なのだろう。百合好きを自称している人に読んでもらいたい。
・マイベスト漫画 帳六郎『千年狐 ~千宝「捜神記」より』
中国の小説集を元にした、連作短編集漫画。
千年生きた狐が人間を化かそうとしたり、病気にかかった皇帝が道士を騙そうとしたり、力自慢の男が化け物と対決したり……ストーリーは書いた通りなのだが、絵がものすごく上手で、ここぞとばかりにちりばめられるギャグ(?)が面白くて、何度も読み返したくなる。特に第三話は抱腹絶倒。
しかし、気軽にけらけら笑える作品なのかと思いきや、後半からきな臭くなっていく。
そこから迎える一巻のラストは圧巻で、じんと胸が熱くなる。
現在も第二部が連載中なので、これからも追い掛けていきたい。
・マイベスト映画 『犬ヶ島』
ウェス・アンダーソン監督は、『グランド・ブダペスト・ホテル』で「好き~!」となり、『ファンタスティックMr.Fox』で「やっぱ好き~!!」となった監督である。
だから、クレイアニメの映画をまた撮ると聞いて、絶対映画館で見ようと決めていた。自宅から遠い映画館でしかやっていなかったが、足を伸ばした。
かくかくが残った粘土の動きに感動し、その一方で、寿司を握る手の動きがあまりにスムーズなので、あの瞬間だけはクレイアニメだという事を忘れていた。
ストーリーも面白く、「日本」の描き方も興味深かった。「アンダーソン監督、絶対日本好きでしょ、悪い所も含めて好きすぎるでしょ」と思ったものだった。
神が細部に宿る、とよく言われるけれど、それを十二分に体現している作品だ。
物語の舞台として、ごみが積もった縞が出てくるのだが、そこさえも美しいと感じさせられるような美術の気合いの入りようだった。
・マイベストレンタルDVD映画 『血煙の石川五エ門』前編・後編
突然ルパン三世にハマった私が、早速TSUTAYAで借りて見た映画だ。
若き日のルパン一味と、まだ仲間ではなかった五エ門の姿が描かれている。
何が一番いいって、五エ門の殺陣! 刀キャラ好きとしてはたまらなかった。アニメでしか出来ない動きで敵を無慈悲に斬りまくる五エ門がかっこよすぎる。
ストーリーがシンプルな分、そのかっこよさに痺れるのだ。
キャラクターや小道具もまた素敵だ。
冒頭のヤクザが経営している賭博船の中などは「うおおおお!!」という言葉しか出てこなかった。モダンなのに新しい、素敵だ。
・マイベストドラマ TBS『アンナチュラル』
大好きな「逃げ恥」の脚本家さんのドラマなので、楽しみにしながら見たら、想像以上の面白さだった。
石原さとみが演じる主人公と、でこぼこなチームで物言わぬ遺体の謎を解くというミステリーだが、それ以上に人間ドラマの部分に目を惹かれる。
残された人の痛み、苦しみを真正面から描いているため、主題歌の「Lemon」がものすごく胸に染みる。
深い深い悲しみや、逃れられない運命を呪うことなく、しっかり向き合い、未来へ確かな希望を繋いでいく人々の姿に勇気を貰えた。
特に第八話は大号泣してしまった。
火事の現場で、ただ一つ、頭を殴られてロープの後がある遺体の謎を解いていくのだが、そこからさまざまな物語が繋がっていき、もう、駄目だった……。
・マイベストアニメ 『ルパン三世 PART5』
見たことがあるのは「カリオストロの城」ぐらいのルパン歴の私だが、「ニコニコで無料配信されているし、脚本に時雨沢さんが参加しているから、見てみよう」という軽い気持ちで見始めて、見事にはまった。
全部神回、どのシーンも面白い、もう、全部のルパンシリーズが見たい! そんな気持ちになったのだ。
ニコニコだと、ちょっとしたモブキャラにも元ネタがあることをコメントで教えてもらえるので、それがまた興味深くて、さらに知りたいと思う。
まだ達成されていないけれど、今までのテレビシリーズ、映画、テレビスペシャル、出来るならば原作漫画も、絶対見ようと思うくらいに好きになった。
面白いって最強だ。ルパンが窮地に追い込まれるが、華麗に切り抜ける、その様子に釘付けになる。
PART5から登場したキャラクターたちもまた良くて、彼らも素直に応援したくなった。
そして、これまでの二十三話が収束する最終話、もう興奮しかなかった。
これまでのエピソード、また単発短編も回収してくるので、何度「こうなるのか!」と思ったことか。
・マイベスト短編アニメ びじゅチューン!『実家が快楽の園』
三十分以内のアニメから二〇一八年一番を選ぶなら、Eテレの井上涼さんの番組、「びじゅチューン!」から、元ネタがヒエロニムス・ボスの絵画『快楽の園』のアニメーション。
ほのぼのした曲調から、突然のデスメタル調に変化する絶叫ソングだ。地元が快楽の園が故に悩む女性……説明すると難しいので、ぜひ一度見てほしい。
元ネタの方をちょっと知っていたので、予告の時点から楽しみにしていた。
実際の放送を見ると、井上さんの画風とボスの絵の親和性がものすごくて、何故だか感動してしまった。
一瞬だけ映る人々や謎の生物「!?」となりながらも、あっという間に終わってしまう。
もっと見たい! この世界に浸らせてくれ! というアンコール必須の一作だ。
・マイベストテレビ番組 『激レアさんを連れてきた。』二〇一八年七月二三日放送分
激レアさんのテーマは、「余命一年を宣告されたけど、あることを極めるために単身アメリカのストリートで武者修行を行い、3億人の頂点に立った人」。
その人は、ヤザワさんという女性で、彼女は子宮体がんを発病したが、元々得意だったバックギャモンを極めて、闘病中なのに世界チャンピオンになってしまった人なのだ。
物事にのめり込みやすいヤザワさんは、「一年に十個新しいことをする!」と目標を立て、それを守ってきた。その為、子宮体がんで入院中も、「がんになるのって初めてじゃない?」とポジティブに捉えることが出来たのだった。
そして、家族やお医者さんに内緒で渡米、絶対安静の身ながらも、ニューヨークの外で銃撃戦が行われてる状況下、バックギャモン対戦で勝利するなどの武者修行を続け、とうとう女性初の世界チャンピオンになった。
彼女のサクセスストーリーは美しく、失礼ながら笑えるところもあったのだが、「人間、やればできる」を体現している人だと、感動した。
その後、がんを克服し、さらに二回目の世界チャンピオンになったという。その逆境に対する強さは見習いたい。
・マイベストネット動画 ナナホシすず『現在と過去から観るぴろぴとさん!ナナホシすずの映像語り』
大好きなアニメーターのエジエレキさんが、バーチャルユーチューバー活動を始めた。二〇一八年の最初、そのニュースは私を酷く驚かせた。
しかし、それ以上に驚いたのは、ナナホシすずが動画の第二回で紹介した人物だった。
それは、元々はFLASH黄金時代に活躍し、現在も新作を作り続けているぴろぴとさんだった。「sm666の作者」と言えば、ピンとくる人がいるかもしれない。
エジエレキさん自身も、ニコニコ動画で「夜な夜な夜な」などの美しくも奇妙なアニメーションを作ってアップしていたので、「レジェンドがレジェンドを紹介している!」と、どうしよもなく感動したのだった。
内容は、「こういう見方があるのか!」という目から鱗から出るもので、「ぼくのうち」を見たことのある私にも、新しい発見があった。
この紹介から、ぴろぴとさんの情報遮断マインクラフト実況を見るようになった。それもまた面白いので是非。
と、ここまで、長々と語ってきたが、二〇一八年で一番を決めるのなら、以上のラインナップになるだろう。
本当なら、音楽やMVのベストも決めたいところだが、去年にウォークマンの容量がいっぱいになってしまい、余り音楽を聴けなかったので、決められなかった。好きなミュージシャンが、たくさん新曲を出していたので、残念である。
あと、ベストにならなかったけれど、二位くらいに上げたいのも、いくつかある。
『ポプテピピック』とか、『パレードへようこそ』とか、『ボヘミアン・ラプソティ』とか。
今年も、貪欲に、様々なコンテンツに触れていきたい。
そこから、素敵な一作に出会いたいものである。
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