十五章 奈落より出でし牙
〈
フルフェイスタイプでなく、目許までを
ディスプレイの右上端には、リアルタイムで気温、気圧、湿度、風向き、風速が
彼は今、火山を
だが〈
しかし今回のターゲットは〈
長期戦は
そして攻撃力に特化した能力の特性上、たった
現に、
とはいえ、粉塵によってターゲットの位置を正確に把握できなかった以上、先の
体勢復帰を
数百メートル
それでもまだ役割を
〈
「……」
それはほどなくして見つかった。
戦場から百メートル以上離れた
回転ブランコの落とす影の中だ。
鈍重な足運びで前進し、二本の触手を波打たせた巨大な
〈
触手は環状。環を
相手が何者であるにせよ、やるべき事は決まっている。
〈
異変に気付いたのは、その最中。
視覚倍率の調整に集中していたときだった。
「
ここにまで及んでいない?
仙緒グランドパークの敷地内は今、大部分が黒い霧に覆われている。
〈
だが、違った。
奴の目は、他の〈
戦場をフォーカスしていた
だとすれば、発生源として考えられるのは一つだ。
もう一体の〈
〈
二体目の〈
「いや……」
彼はすぐに、その
〈
パーク内で
「つまり」
二体目の〈
〈
それとほぼ同時だった。
「……!」
三つの頭が、
六つの
彼の周囲にまで、濃霧が及んでいた。
首筋が
とっさに粒子を放出。
その時、彼の粒子は、背後の異物を
「……ッ!」
ふり返れば、闇があった。
〈
――
「ズブブブブ……!」
蟷螂の鎌が
眷属は着地時のエネルギーをすぐさま跳躍力に
人ならざる
「……ぬっ!」
戦闘機械として生きてきた〈
しかし彼の
「ガルゥア!」
凄まじい連撃が
〈
だがここで打ち合いを
しかし反撃の糸口を
〈
そう思われた時だった。
「ズブブブブ……!」
視界のすみを黒い異形が
さらに反対側からも、
「ズブブブブ……!」
背後から、頭上から。
いたるところで羽音が
空白を
数十体もの鎌の
「ガアアオゥ!」
蟷螂の
〈
彼女は
「「「ズブブブブ……!」」」
〈
「ゲエエエエェエエエェエッ!」
〈
鉤の触手を打ち振り、
次々と黒が
それでもなお蟷螂たちは、その鎌で触手にとりつき顎をひらく。数でとり
〈
「ゴォアアアァアアアアァアアアオォォン!」
しかし、そう
〈
「……ッ」
〈
だが、ここで能力を使用すべきではない。
〈
弱点を狙うに、残された
「ズブブブブ……!」
今、
「……」
〈
刃を
有象無象を薙ぎ払い、
〈
「ゲラァ!」
つづけて
〈
額すれすれの位置を牙がかすめた。
眼下に、その身を受けとめる
翼に衝突し姿勢を
警棒を抜き、大鎌を
頭上に
とたんに蟷螂の姿勢が
漆黒の毛皮へ大鎌の刃を突き立てる!
ところがその時、〈
下から
〈
たちまち
大鎌は手離し。
背後で
〈
手をかざし、粒子を編む。生ずるは
「ゲェアッ!」
しかし触手の後ろから、尾の一本が
メットの奥。
接触。
異形の尾に
「……」
そして〈
バサリと音をたてロングコートが
その
突如、〈
「ギィィリャアアアァアアアアァアアッ!」
異形の
天へ向けられたまま槌が
〈
〈
「アアア……ググ、ク、ソガァ……!」
人語のような
「グラァ……?」
しかし臨界に達した殺気は、突如、沈黙した。
波紋を打つように体毛が震え、やがてギャラギャラと笑うように鳴きはじめた。三本の尾が縦横にふり乱され、漆黒の渦を描いた。
「ゾォガ、ゾッガ、オバエェ、オバエガァ……ギ、ギギャ、ザバアビロッ! ゲゲ、ゲッ、ゲェエエエリャアアアァアアアッ!」
耳を
直後、〈
三本の尾で黒ずんだ霧を巻きあげながら、〈
「……逃がすか!」
〈
ここで。ここで逃がすわけにはいかない。
たとえその
生き残った蟷螂とともに〈
ところがすぐに足をとめた。
見る見るうちに〈
「まずい」
だが、
〈
遠方から、
そして、気付かされた。
〈
「逃げろ、〈
しかし、傷ついた彼女が逃げられるはずもなく。
〈
たゆたう漆黒は、たちまち牙を、
奈落より出でし牙のごとく。
「ゴバ、ァ……ッ!」
次の瞬間、顎は閉ざされた。
〈
「ズブ、ズブブ……」
〈
それでも〈
雄たちを労わるように醜い断面ののぞく手を伸ばした。
唇が震え、まなじりから涙。
滴が風に
「……」
かくして、戦場に残された影は二つとなった。
虫けらを
その
初めて遭遇した〈
その三つ首と
〈
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