間章 〈死神〉に関してⅡ
本来なら、二度
〈
彼らは人間だ。
異能を
だが、異質であることが人間としての
彼らのそれは
「……そう信じたいだけなのかもしれないけどね」
「ん、何か言いました?」
いつの間にかファイルを手にやって来ていた補佐官に、独り言を聞かれた。いつもの愛想笑いで取り
まあ、それはともかく、あの子だ。〈
一度の面談で
しかも、相手はいずれも女の子ときた。
ちょっと
もちろん彼の悩みは「任務における障害」という点に
「来ましたよ」
「ありがとう」
補佐官が去り、ノートを開くと、東吾はドアの向こうの
「どうぞ」
「……」
やはりノックや挨拶もなくドアは開いた。
「座って」と
「やあ、
「……」
本日のファーストコミュニケーションは、沈黙から始まった。
混乱させてしまっただろうか。
東吾は主語を意識し、慎重に言葉を
「例の任務は、まだ継続中かな?」
「はい」
「そうかぁ。悩み事も、なかなか?」
「ええ。合理的な
「合理的かぁ。そうだろうね。人の心は正か否か、それだけでは判断できない事が多いものねぇ」
「……」
また沈黙。返る眼差しにも変化はない。
その様子を観察しながら、なにかアドバイスの一つでもしてやれればとは思うが、東吾はその考えをすぐに打ち消した。人情として悩みを解決してやりたいのは山々だが、安易に答えを諭せば彼の成長を阻害するおそれがあるからだ。
〈
東吾はたっぷりと三秒を数えてから、次の話題へと移った。
「ところで、最近変わったことはあったかい?」
あえて、返答に
〈
しかし彼には兆候がある。心が育ち始めている。
まだ答えが返ってくる段階にはないだろうが、経過観察は必要だ。
ところが、じっくりと待つつもりでいた東吾に、〈
「ファミリーレストランへ行きました」
「へぇ、ファミレスかぁ。なにか
「チョコミントケーキを……
東吾は内心の驚きを隠すように笑った。
ファミレスに、チョコミントケーキ!
一般人にとっては「ああ、こんな事あったなぁ」程度の、しばらくすれば忘れてしまうような
しかし〈
こんな相手と面談するのは、これで二度目になるか。
「それは残念だったね。一緒に行った相手とケンカ別れしたとかではないんだろう?」
「はい。その逆というか。
「相談か。それはすごい。
やや長い沈黙。
「……解りません。悪くない結果にはなったと思われます」
「なるほどなぁ。でも、悪くない結果だと思えるのは素晴らしいね」
「……」
〈
その揺らめきに、東吾は驚きを
眼前に煌めくのは、やすりで
黒曜石のような美しい
中に、たしかな感情の
以降の会話は、味気ない
東吾の確信は揺らがなかった。
この子は、兄さんと同じだ。
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