間章 〈死神〉に関してⅠ
〈
〈
それが〈
表向きは製薬企業として運営されている
「ろくなとこじゃないよなぁ」
そのとある一室で、〈
次の面談対象のファイルを運んできた補佐官が
返ってくるのは見慣れた苦笑だ。
「庶務課」と
まあ、普通じゃないよな。
〈
だが「不審な点」など、まず見出されることはない。〈
ひたすら面談をくり返し、経過観察する日々ばかりが続く。
それはある意味、
彼らに対するコミュニケーションは、
ゆえに面談官の中には「壁と話しているようだ……」と精神を病み、辞表を提出する者が多いらしい。そこまで重症化せずとも、異動願はしょっちゅう出されていて、わざわざ立候補する
つまり東吾は、はたから見れば〈
「はぁ……仕事仕事」
東吾は気持ちを切り替え、運ばれてきたファイルにざっと目を通した。添付された顔写真は、すっかり目に焼きついたものだった。
〈
七年前に覚醒した少年だった。
戦いを強いられる〈
補佐官がふたたび東吾の許を訪れると、彼は「来ました」とだけ言って、そそくさと奥の部屋へもどりドアを閉めた。
何が来たのかは言われずとも分かる。
東吾は執務席をたち、面談席に腰かけると〈
「どうぞ」
入室を促せば、ノックの一つもなくドアが開かれた。
「……」
無言のまま姿を現したのは、黒ずくめの少年だ。フルフェイスメットまでは装備していないものの、ロングコートに黒手袋、黒ブーツという仕事着である。
「やあ、
東吾は臆することなく、むしろ微笑みながら〈
〈
「うん、リラックスしてね。いつも危険なところにいるから疲れるだろう?」
「多少は。しかし充分に休息をとっているので問題ありません」
機械的な答えだ。
如何にも〈
異常なし。
と言いたいところだが、少年の目の下に滲んだ
「そうかぁ。何か変わったことはあった?」
しかし東吾は、あえてその点に触れなかった。
よくよく観察していれば解ることだが、〈
常人と比較すれば非常に
会話は自然に穏やかに、だ。〈
「新しい任務が始まりました」
「新しい任務かぁ。珍しいね。狩りとは別の仕事ってことかな?」
「はい」
「へぇ。普段とは違う仕事を任されるとなると大変だろうね」
「……ええ」
東吾は同調するように頷きながら、微妙な間があったことに注目した。
そんな些細なことが、〈
よほど大変な仕事なのかもしれない。
「最初は解らないことばかりだものねぇ。人間関係にしても。あの人、何考えてるんだろとかさ」
その時、
東吾は笑いかけ、驚愕を隠した。
反応した……。いまの話題に興味をもったか?
何に対しても〈
にもかかわらず興味を示したということは、それに相当するだけの刺激を受けたと考えるのが自然だろう。ここは思い切って踏みこみ、答えを引き出すべきと東吾は判断した。
「もしかして相賀くん、新しい任務で気になる人がいる?」
多少
それよりも、反応に注視すべきだ。
「……」
しかし〈
瞬き、鼻の膨らみ、唇のひきつり――些細な反応にも目を凝らしてみたが、変化なしだった。肯定も否定もしないのは、おそらく話題に対する興味自体が失われたためだろう。
東吾は落胆した。
彼にとって〈
東吾から言わせれば、〈
だがそれは、しょせん稚気じみた夢なのかもしれない。
ノートに『反応なし』と
「……っ」
しかし、とっさに手をとめた。
〈
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