5. 若葉の下の奇妙な再会

 大型連休が開け、晴れた日は夏を思わせる暑さの気温まで上がる。綺麗な新緑に染まったイチョウ並木の影の落ちるクラブハウスで和也達は昼食をとっていた。不審者による部活動時間短縮のせいで、なかなかマップ作りが進まない。そこで昼休みの時間も部活動に当てようと今日も部室には部員達が集まっていた。

 部長と柴田が弁当を食べながら資料のチェックしている。今日は一年生は校外学習でいない中、他の女子部員が次に調べる神社のことを賑やかに話している。

 チェックが終わったのか資料を片付け、二人がホワイトボードに今後の部活の予定を書き込む。それを部員達に説明した後、残っていた弁当のご飯を掻き込みながら「……そういえば、沖田君。また不審者による被害者が出たんだってね」 和也に訊いてきた。

 和也が水筒の茶を飲みながら「ああ」と眉を潜める。

「今度は関山市の西地区公民館で、らしいぜ」

「やだ!!」

 近くに住んでいる女子部員達から悲鳴が上がる。

「また、女の子?」

「高校一年生の女子生徒らしい」

 二日前の夜九時頃、公民館の駐車場に少女が倒れていたのを、町内会に出て帰ろうしていた主婦が見つけたのだ。

『こっちが手を出せないのをいいことに調子に乗って~!!』

 昨日の朝、登校中に会ったシオンは意味不明なことを言いながら和也に事件の話をすると関山市に向かって走っていった。

「……まあ、一番初めに被害に会った高校三年生の女子は無事に回復して退院したっていうけど」

 景子が被害者の少女達の容態を気にしていたのを思い出し、これもシオンから聞いた情報を話す。

「良かったね。景子ちゃん」

 明らかにほっとした顔になった景子を見て柴田が微笑んだ。

 ……景子ちゃん……?

 今まで苗字で景子のことを呼んでいたはずなのに、柴田の馴れ馴れしい口調に和也の手が止まる。

 ……いつの間にそんなに仲良くなったんだ?

「朝倉さんと柴田くん、もしかして付き合ってるの?」

 どうやら同じことを考えたらしい女子達が景子に詰め寄る。

「……えっと……それは丈君が……」

 ……丈君……?

 和也が都のことや事件のことでごたごたしているうちに、いつの間にか二人の仲が深まったらしい。

 ……なんだよ……それ……。

 憮然と空になった弁当を片付け、茶をラッパ飲みする和也に、質問攻めに困ったのか景子が「和也も野木さんと付き合いだしたんだよ」矛先を振った。

「へ?」

 ふき出しそうになったお茶を慌てて飲み込む。「そういえば噂になってるね」柴田が言い出す。

「本当か!? 沖田!!」

 何故か部長が慌てて、箸を放り出し、和也に詰め寄った。

「いえ、そんなことありません! っていうか、どうしてそんな話になっているんだ!?」

 必死に首を振る和也に更に追い打ちを掛けるように女子達から声が上がる。

「結構、噂になっているよ。うちのクラスの沖田君のファンの子ががっかりしてたし」

「なんせ学校一のイケメンと美少女のカップルだから、目立つんだよね~。この前の日曜日、駅前を二人で歩いてなかった?」

「最近、都ちゃん目当てで入った男子、部活に来ないでしょ。アレ、どうあがいても沖田くんには叶わないから諦めたって話だよ」

 次々と指摘する声と、ますます顔色を変えて詰め寄ってくる部長に、和也は必死で否定した。

「いや、だから、付き合ってないって!! 先輩としてちょっと相談を受けているだけで!!」

 あの夜以来、確かに和也は休みに度々、都と出掛けている。都がようやく見つけた仲間である和也に頻繁に会いたがるのだ。和也の方も都をなんとか魔術師の仲間に入れて、安心させてやりたいという思いから、頼まれるままに会って、自分達のことや破防班、今回の事件のことを話していた。

 ……それが……。

 和也の本命はあくまで景子なのに、これではますます景子が遠のいてしまう。焦る和也に女子の一人が「もしかして、その相談って都ちゃんが中学校でイジメられていた こと?」と言い出した。

「都ちゃん、イジメられてたの?」

「うん、私の妹が友達に聞いた話なんだけどね」

 都は中学三年生のとき、クラスの女子から徹底して無視され、孤立していたという。

「都ちゃんになにか問題があったんじゃなくて、都ちゃんをそうしたクラスの女子にヒドイ子がいたみたい。女子に一人、綺麗で先生受けがすごく良いことに、毎年クラスの子を一人、クラス中の女子に無視させて楽しむ子がいたって話だよ」

 その犠牲者が都だったというのだ。

「可哀相な話だな……」

 ようやく落ち着いた部長が改めて和也に訊く。

「それで野木から相談を受けたのか?」

「えっ? あ、はい、そうです。野木、そのせいで今のクラスでも女子とあまりうまく話せないみたいで、どうしたらいいのかって……」

 取り敢えず、そういうことにすると皆が納得してくれた。

 ……野木が力に目覚めたのって、そのイジメのせいかもしれないな。

 苦しい心が何かにすがりつくように力を目覚めさせることがある。

 やはり、このままにしておくのはマズイな。一度彼女のことを班長に相談してみよう。

 人に言えないことを抱え込んでいると、どうしても他人と交わり辛くなる。今度の休みに皐月家に行くことに決め、和也は時計を見て「そろそろ午後の授業が始まるぞ」 周りに声を掛けて部室を出た。

 渡り廊下を渡り、二年生の教室がある北校舎に向かう。後ろから軽い足音がして「和也~」景子が追い掛けてくる。

「良かったね。和也」

 景子は前に回り込み、にっこりと笑んだ。

「えっ? 何が?」

「和也って、小学生の終わりの頃からかな? 妙に人を避けるようになって……私、 心配してたんだ」

 きょとんとする和也に、景子は背中を励ますように叩く。

「都ちゃんがそういう大事なことを和也に相談しているのって、きっと和也のことが好きだからじゃないかな?」

 頑張れ! 明るい笑顔を和也に向けると景子は追いついてきた柴田と一緒に階段を登っていった。

 ……今のって……もしかして景子はもうオレのことを意識すらしてないってことか……?

「…………なんだ……ははは……」

 心が思いっきりぽきりと折れる音が聞こえた……気がする。和也はがっくりと肩を落とすと深い溜息をついた。

 

 

 日曜日。今日も朝から青い空から燦々と眩しい光が降り注いでいる。いつものように箒とチリトリ、金鋏とゴミ袋を持って、土童神社にやってきた瑞穂は、拝殿に二礼二拍一礼すると箒で境内を掃き始めた。遅れてやってきた祖父が同じように拝殿に御参りし、玉砂利の間に生えた草をむしりを始める。黙々と動いている二人を薫風が優しく撫でていった。

 柴田が言ったように、瑞穂は祖父母と休日の度にこうして土童神社の掃除をしている。この神社の神様、子犬ほどの大きさの蝉の幼虫である麿様は瑞穂の守り神でもあるのだ。

 箒で玉砂利を均しながら、瑞穂の口から楽しげな歌声がこぼれる。

 上手くいったな~。

 我ながら上手にいった思惑に笑みをもらす。

 ここ土童神社は決まった宮司が無く、町内会が管理している神社だ。昨今は予算も減少気味で半分打ち捨てられたようになっていた。そんな神社と、偉そうにはしているが寂しがり屋の麿様の為に、少しでも人が訪れるようにしてあげたい。瑞穂は柴田に郷土史資料研究部に誘われたとき、なんとかして皆に土童神社の話をして関心を持って貰おうと部室を訪れたのだ。

 狙いどおりだったな~。

 郷土史資料研究部はまさに歴史オタクの溜まり場だった。そして皆、瑞穂が関わっていることから神社に興味を持ってくれた。商工会との神社マップ。あれが完成すれば沢山の人がこの神社に目を向けてくれるかもしれない。そうすれば町内会も神社のことをもっと大事にするだろう。訪れる人々に喜ぶ麿様を想像して瑞穂がくすりと笑ったとき

「あ~!! 気にくわん!!」

 拝殿から小さな男の子の怒り声が聞こえてきた。

「麿様!?」

 瑞穂が慌てて振り返ると拝殿の前の置かれた小さな賽銭箱の横に子犬ほどの大きさの蝉の幼虫が鎮座し、ぶんぶんと鎌のような前足を振っている。

「どうかなさいましたか?」

 瑞穂が駆け寄ると麿様はイライラと目の間の短い触覚を震わせた。

「気にくわぬのじゃ!」

「それは、もしかして、私が最近よく部の先輩達を連れて来ることですか?」

 恐る恐る訊くと「違う」と麿様はもどかしげにワシワシと左右についた四本の足を動かす。

「麿様、まま、お茶でも召し上がって落ち着いて下さいませ」

 手を洗ってきた祖父が祖母が用意して渡したミニマグから、お茶をコップに注いで麿様の前に置いた。麿様が憮然とした顔でストローのような口をお茶に入れ、啜り上げて目を細める。

「じじ、新茶だな?」

「はい。そろそろ新茶の時期ですので、昨日、お茶屋で買って参りました」

「うむ。良い心掛けでおじゃる」

 祖父の心使いが気に入ったのか麿様は落ち着いた様子で、ゆっくりとお茶を啜り上げた。

「どうかなさいましたかな?」

 空になったコップにおかわりを注いで祖父が尋ねる。

「うむ。このところ麿の地を汚らわしい者が闊歩しておるのじゃ」

 麿様がまたピクピクと触覚を震わせる。

「それって、もしかして班長達が探している魔族でしょうか?」

 瑞穂は麿様の隣に座り、丸い背中に手を乗せた。麿様が荒ぶらないように願いながら、身の底から湧き出る冥界の浄化と癒しの力を注ぐ。麿様は気持ちよさそうにまた目を細めた。

「それは解らぬが、穢れた土の力を持った奴じゃ」

「……土の力……」

 自分と同じ力を持つモノだけに余計に気に触るらしい。麿様はお茶を飲み干すと「牛の大将は何をしておるのじゃ!」前足を振り上げた。

「先日、優香ちゃんに会って聞きましたけど……相手が高位の魔族で簡単に手が出せない ので困っているそうです」

 最初の事件から一ヶ月が過ぎている。既に破防班では魔族の居場所や正体にほぼ当たりをつけているが、これが予想以上に高位貴族であるらしく、うかつに手を出せなくなっていた。それを良いことに相手は更に犠牲者を重ねている……というのが現状らしい。

「班長すらも相手に出来ない者らしくて……」

 余程、皆困っているのだろう。同じように困りきった顔をしていた優香を思い出し、顔をしかめる瑞穂に麿様は「仕方が無いのぉ……」 一息つき、彼女の体をよじ登った。

「牛の大将に喝を入れるでおじゃる」

 いつものように瑞穂の頭に鎮座し前足を振り上げる。

「はい」

 瑞穂は立ち上がった。

「おじいちゃん、私、麿様を皐月さん家に連れていく」

「ああ、掃除は儂がきちんとやっておくよ。気をつけて行っておいで」

 祖父の声に送られて瑞穂は鳥居を潜り、隣町の山根市に向かって歩き出した。

 

 

 日曜日。朝から眩しい光が降り注ぐ中、和也は皐月家を目指して歩いていた。 昨夜、シオンに電話して聞いたところ、今日の捜査は午後からの予定らしい。

『もう、こんな事件、ボク初めてだよ』

 普通ならこんな世界に興味もなさそうな高位魔族の事件。下手に手を出すと街一つ、 指一本で消し去ることが出来るほど力を持つ相手に破防班は手をこまねいている。その為、皆でなんとか犯人捕縛の方法を探るので、午前中は全員家にいると言っていた。

 そんな中、別の厄介事を持ち込むのは迷惑だろうけど……。

 都のイジメの話を聞いては、もうこれ以上は放っておけない。都は今のクラスでも、浮いた存在になっている。人が良く、趣味が合えば細かい事は気にしない部員達とは違い、彼女のもはや作り物めいた美に、それまで夢中だった男子の中にも敬遠する者が現れ始めていた。

「あの綺麗さが力の副作用ってこともあるかもしれないしな」

 もし、そうなら玄庵に頼んで力を封印して貰うという手もある。呟きながら、ブロック塀の角を渡ると右の角から人影が出て来た。

「富田」

「あっ、沖田先輩、こんにちは」

 にこやかに挨拶をする彼女に和也は……目を剥いた。

 瑞穂の頭にあの日、あの桜を見に堤防に行った日と同じ子犬ほどの大きさの蝉の幼虫が乗っている。とても、この世のモノとは思えないモノに和也は思わず息を飲んで、二、三歩後ずさった。

「どうしましたか? 先輩」

 瑞穂がそんな和也を見て、小首を傾げる。

 ………フィギュア……か?

 こんなものを乗せているにしては、余りに自然な瑞穂の様子にそう考え直す。どう見ても女子高校生が持つには相応しくないが、まさかこんな大きな蝉の幼虫がいるはずもない。 和也は気を落ち着ける為、大きく息を吐いた。

 

 

 アレ? 和也と出会い、偶然、同じ方角に歩き出して瑞穂がチラリと上を見上げた。 前髪の向こうに麿様の爪のついた茶色の前足が見える。

 ……どうしたんだろう、麿様。

 麿様は普通の人には見えない。だから、こうして連れて歩いても構わないが、麿様はたとえ瑞穂が知り合いや友達といても自分がしゃべりたいときは構わず話し掛けてくるのだ。それに返事を返さないと機嫌を悪くするので、麿様と一緒にいるとき友人達と合ったときは、瑞穂はかなり苦労していた。

 それなのに……。

 先程まで……和也と出会うまでは楽しげに緑に染まった家々の庭の木々を指して

『見よ! 麿のおかげぞ!』

 散々自慢していた麿様が何故か黙ってしまっている。それだけでなく、身動きもピタリと止めていた。

 ……おかしいな……。

 勿論、他人といる以上、話し掛けられない方が楽なのは違いないのだが、何か楽しげな雰囲気が麿様から伝わってくる。瑞穂は内心小さく唸ると首を傾げた。

 

 

 どうやら、瑞穂の方の行き先も同じ方向のようだ。一緒に歩きながらも和也の目はどうしても彼女の頭に目がいってしまう。それにしても精巧なフィギュアだ。つるりとした頭と細い触角、長い針のような口、瑞穂の頭に掛けた足、一本一本には小さなトゲまで生えていて、まさに小学生時代、和也も夏休みに夢中になって集めたアレの抜け殻そっくりだった。

「……なあ、富田。もしかして今そういう精巧な昆虫のフィギュアが女子の間で流行っているのか?」

 以前、女子の間に気味が悪いナメコのマスコットが流行ったことがあって聞いてみる。瑞穂が「えっ!?」と驚いた顔で和也を見る。

「……フィギュアってなんですか?」

「いや、別に……」

 伺うような彼女の視線から何かマズイことを訊いた気がして、和也は目をそらした。

 『……フィギュアってなんですか?』って、これフィギュアだよな? ぬいぐるみならもっと可愛いだろうし……。

 もごもごと口の中で呟く。

「……あの……沖田先輩、もしかして見えるのですか?」

「……見えるって何が?」

「いえ、なんでもないです」

 今度は瑞穂がギクリとして黙り込む。二人の間を妙に気まずい空気が流れ始めた。

 ……見えるってまさか……。

 和也がチラリチラリと見ていると、ピクリ、目の間の細い触覚が動く。思わず立ち止まり、目をこすって再度後ろからそれを見る。

 ……動くわけないよな……。

 疲れているのかも知れない。和也は小さく息を吐いて彼女を追い掛けた。

 

 

 麿様、何かすごく楽しそうだな~。

 足は動いていないものの、笑いを堪えているのか瑞穂の頭にくっついている腹が小さく震えている。

 ……どうしたんだろう?

 再度首を傾げる。二人の前に皐月家の板塀が見えてきた。

 

 

 目的地に着き、ほっと息を吐いて和也は

「じゃあ、オレ、この家に用があるから」

 瑞穂に告げて小さな門の格子戸に手を掛けた。

「……あの……私もなんですけど」

 このまま別れて道を進んで行くと思った瑞穂も和也の後ろで足を止める。

「え?」

「私、この家の優香ちゃんに用事あって……」

 優香の名前を瑞穂が出す。

「……そうなのか、オレは紫苑の友人なんだ」

 和也もシオンの名前を挙げる。

 ははははは……。何故か二人で互いの顔を伺いながらわざとらしい乾いた笑い声を上げる。

 なんか変だ……。

 なんか変よね……。

 二人は互いに互いを探るように見ながら門を潜った。

 


「こんにちは~」

 玄関で二人同時に声を掛けると「はい、は~い。待ってたよ~」 奥から軽い少年の声が聞こえてきた。ペタペタと裸足の足音が板の間を歩いてきて、廊下の角から赤い触角が 見えたところで和也は靴を玄関に脱ぎ捨て、ダッシュした。

「馬鹿!! シオン!!」

 生来の姿、巨大ザリガニ姿のシオンがストライプの長袖シャツと綿のボトムスを履いて そこにいる。和也は玄関にいる瑞穂に見えないように彼の身体を押し戻し、 廊下の影に隠すと口早に喚いた。

「どうして、その格好でいるんだよ!!」

「へっ!? 和くん、何言ってるの!?」

「一般人には正体を見せたらいけないんだろ!!」

 わけが解らないという顔できょとんと赤紫色の瞳を見張り、ユラユラと触覚を揺らすシオンを怒鳴りつける。ところが……。

「そうよ! シオン! なんでその姿でいるのよ!!」

 自分より少し低い位置で少女の悲鳴のような声が響く。視線を下に向けると、そこにはシオンのシャツの腹を握って叫んでいる瑞穂がいた。

「瑞ちゃんまで、何言ってるんだよ~!!」

 シオンがおろおろと大きなハサミを振る。騒動を察したのか今度は奥から

「どうした? シオン。和也くんを居間に通して」

 穏やかな青年の声がしてエプロンを着けた赤い肌のトカゲ男がやってきた。

「アッシュさん!!」

「アッシュさんまで!!」

 生来の姿で現れた副長に思わず二人が抗議の声を上げ、アッシュが驚いたように赤金色の瞳を見開く。瑞穂の頭の上で麿様が一人おかしそうに腹を震わした。

「どうしたんだい? 二人共」

 シオンよりは遥かに慎重な性格の副長が二人の抗議にも関わらず、人型を取らず生来の姿のまま、きょとんと自分達を見ている。

「……富田……もしかしてお前って……」

「……沖田先輩って……」

 ようやく二人がそれに気付き、お互いを見つめたとき

「麿様がいらしているのか?」

 重い足音がして、今度は黒い牡牛頭のモウンが姿を現した。

「班長!!」

 二人の声がピッタリとハモる。

「ってことは、やっぱり?」

「そういうことなんですか~」

 二人が事実をようやく認め合う。

「いや、実に愉快な余興であったでおじゃる」

 幼い男の子の楽しげな笑い声が響き、麿様がひょいとモウンの大きな肩に飛び移った。

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