15話

 熱は三日で引いた。

 「やっぱり大したことなかったじゃない。大げさなのよ」と母に言われたがいちいち反応していたらきりがないので無視することにした。


◇◇◇

「柚利愛じゃん!もう大丈夫なの?」

学校に行くと緋紅とみどりが来た。

「おはよう、二人とも。ええ、もうすっかり良くなったわ」

「そうなんだ。良いよね、柚利愛は三日も学校を休めて。

私も休めば良かったかな。そうしたら、柚利愛と同じだね」

そんなわけないでしょ!

「私は体調を崩して休んだわけであって、ずる休みをしたわけじゃない」

「そうだよ。緋紅。何言ってんの」

「だってぇ。学校とかだるいし。休めるなら休みたいじゃん」

「あんたは能天気で良いね」

 全くだ。

 「悪いんだけどさ、三日分のノートを写させてほしいんだけど」

 「私は取ってないから無理」

 即答したのは緋紅だった。

 うん。そこは期待してないから。

 わざわざ自己申告しなくても分かってるよ。

 「いいよ。コピーする?」

 「うん。職員室でコピーする。ありがとう、みどり」

 「どういたしまして」

 「えぇ!?人のノートをコピーするのはどうかと思うよ」

 「だって、三日分も書き写すには時間がかかるから、それまで借りてる訳に行かないでしょ。

 コピーして自分のノートにちゃんと書き写すから何も問題ないじゃん」

 「いや、私だったら自分のノート、コピーさせるのは嫌かなって思って」

 は?

 「別に緋紅のノートをコピーするわけじゃないけど」

 まぁ、それ以前の問題だけど。

 「いや、そうだけど。常識的に」

 「勝手にコピーするわけじゃないから常識的に問題ないよ」

 それに緋紅に常識を問われたくはない。

 「でもさぁ」

 「もういいじゃん。私が良いって言ってるんだから。

 緋紅がどうこう言うことじゃないよね」

 「そうだけど」

 「じゃあ、この話はここで終わり」

 みどりが無理やり終わらせたけど、緋紅はまだ不満そうだ。

 でもこれ以上の問答は時間の無駄だし、疲れるので知らないふりをする。

 授業は、テストが近いのでテスト範囲についての話が主になった。

 「神山さん、テスト前にサボリなんて随分余裕なのね。

 そんなんで今回も首席を維持できるのかしら?」

 委員長の勝ち誇った顔に私は嫌気がさす。

 「三日のハンデがないと私に勝てないと豪語する人は大変ね」

 「何ですって!?」

 私はニッコリと口元に笑みを浮かべた。

 そんな私に男女問わずに周囲に居たクラスメイトがなぜか頬を赤らめ、委員長は握りしめた拳を震わせ、奥歯を噛み締めて私を悔しそうに睨みつけた。

 少し言い過ぎただろうか?

 ちょっと不安になるけど、言ってしまったものは仕方がない。

 「みどり、ノートありがとう」

 「もう、コピー取ったの?」

 「うん」

 「これからバイト?」

 「まだ時間があるから図書室でノートを写しておく。

 ここじゃあ、色々とうるさいから」

 「そうね。その方が良いかも」

 私は手早く荷物をまとめて教室を出た。

 だから気づかなかった。

 私が出た後、教室では・・・・・。

 「やっべぇ。神山さん、マジ女神」

 「同い年とは思えないよな、あの色気」

 「男で遊びまくってんじゃないの、あの見た目だし」

 「いいよねぇ、アルビノって。美人が多いってネットでも書いてるし」

 「嫉妬か?女ってのは怖いねぇ」

 「はぁ!?嫉妬じゃなねぇし」

 「本当の意味で選ばれた人間だよな」

 「俺もアルビノに生まれたらモテたかな」

 「俺も俺も」

 「一度でいいからなってみたいわよね」

 「バッカじゃないの!自分は人と違いますって自慢してるだけでしょ。

 あんな不気味な姿晒して、クラスの恥だわ」

 勝手にぎゃあぎゃあ騒ぐクラスメイトを睨みつけて、委員長は逃げるように教室を出て行った。

 「こっわ。あれこそマジで嫉妬だよな」

 「委員長、休み時間も返上して勉強してるのに神山さんに勝てないもんね」

 「バイトもしてるんだろ。それなのに首席って」

 「ああいうのが勝ち組になっていくんだろうな」

 「本当に、羨ましいぜ」

 「神山さんには悩みとかなさそうだよな」

 「見た目だけで得してるもんな」

 これぞまさに知らぬが仏

 何も知らないクラスメイトが好き勝手言っていることを幸い、図書室に向かっていた私の耳には当然のことだが入ることはなかった。

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