4話
由利にお金を盗られた後、私は自分の部屋に行き、お財布の中身と貯金の残高を確認した。
今月はかなり厳しい。
お昼を何度か抜いて、時々出る賄いを昼ご飯に回すしかない。
「・・・・バイト、増やそうかな」
でも、七日間全てにシャノワールのバイトが入っている。
店長が時々休暇を提案して来るけれど全て断っている。
シャノワールの倍とは一八時まで。
そこからもう一つ別のバイトを増やそうかな。
でも見た目が派手だからなかなかバイト先を見つけるのも大変なんだよな。
まず面接でアウトだし、接客とかもなかなか難しい。
シャノワールで受かったのが奇跡に近い。
それでも何とか見つけて、後は在宅ワークとか内職で稼ぐか。
学生として勉強は疎かにできないし、成績を落とすわけにはいかない。
何だか、頭が痛くなってきた。
学校を遠くに選んだので交通費もかかる。
全て自腹だとかなり大変だ。
余計な出費も多いし。
私は下で飲み込んだ溜息を吐いた。
取り敢えず。過ぎたことは仕方がないので私はネットでアルバイトがないかを探した。
時給は出来れば一〇〇〇円以上で検索した。
かなりの数があったがその中で自分にあったものを選んで取り敢えずパソコンで応募してみた。
アルバイトの応募が決まったら後は在宅ワークを検索してみる。
ネット社会と言われているだけあってこちらも数は多い。
こちらも取り敢えず応募してみる。
翌日、返事が来た。
面接に幾つか言ったけれど、覚悟はしていた。
まず、面接に行って面接官と対面するとみんな渋面を作る。
酷い人は私を見た瞬間に「髪を染めて面接来るなんて最近の若い子は常識がなさすぎる。不合格だ。うちに非常識なバイトは必要ない」と言われた。
アルビノだと説明しても分かってはもらえなかった。
面接をしてくれる人も居たけれど基本的には採用後は染めるように言われた。
肌が弱いので染められないと言ったら「ああそうですか」で終わった。
そしてやはり不採用だ。
染めないといけない理由は「不適切だから」、「仕事上相応しくない」、「気持ち悪いから」というものだった。
「これで二〇件目」
机の上に積み重なるのは不採用の通知
心には泥のように見えない何かが積み重なっていった。
口から出るのは溜息ばかり。
これでは今までと同じだ。
自分を変えてまで環境を変えようとした。
でも家では何も変わっていない。
社会の目は何も変わっていない。
『また負けるの?』
もう一人の私が弱い私を嘲笑う。
結局、私が『私』という役を演じているだけなのだ。
心が変わっていないのだから私自身は何も分かってはいない。
高校に入学してきて見て見ぬふりを続けた現実にぶち当たる。
「また一からリサーチか」
くよくよしても仕方がないのでパソコンに向かった。
世の中とは総じて思いう通りにはいかないものだ。
文句を言っても始まらないので私はパソコンに登録しているアルバイトのサイトで目についたものを手当たり次第に応募していく。
下手な鉄砲も数を撃てば当たるというものだ。
そして漸く採用にこじつけたのがカラオケのバイトだった。
もう途中から数えるのを止めたので何件目で採用されたかは覚えていない。
バイトでこれだけ苦労するのだ。
将来の就職を考えると頭が痛い。
景気は回復されたと言っているけれど未だに就職困難な時代だ。
人と違う容姿を持っている私は一番最初に排除されるだろう。
黒髪黒目で人と同じ見た目がそんなに偉いのかと時々叫びたくなる。
シャノワールの時給が一五〇〇円
学校終了後多くて二時間働いた場合一か月を三〇日間として給料は九〇〇〇〇円
カラオケの時給は一〇二三円
こちらは二一時まで働けるので一九時から働いたとして二時間
一か月の給料は六一三八〇円
在宅ワークとしてまずデータ入力は時給一〇〇〇円
こちらは一時間することに決めたので一か月の給料は三〇〇〇〇円
それからもう一つ在宅ワークとしてジグソーパズルを始めた。
ピースの数とかける時間によって値段は変わるが相場は一ピース一円だそうだ。
ジグソーパズルは計算が難しのでそれを除けて考えて、合計一か月で一八一三八〇円稼げる計算だ。
これなら問題はないだろう。
因みにカラオケのアルバイトだが親には内緒にしている。
両親は私に興味がないので前日に食事の準備をして、お風呂掃除も前の夜にすませておく(多分、お風呂を入れるのは父の役目になるだろう。家族をカースト制度で表すのなら一番下は私でその上が父、更に上に母と由利がいる形だ)。
「バイトの子と勉強して帰るからこれから遅くなる」と言っておけば「あっそう」ですむ。
勿論「外食だなんてあんたは呑気ね。自分の悪い脳みそのことだけを考えてればいいんだから」という嫌味付きだがあっさり許可が出るし、私がいつ帰ったかなんて興味もないだろうから何時に帰っても問題はないのだ。
学生としての勉強のことも考えると正直かなりきついが、慣れるまでの辛抱だろうと私は自分に言い聞かせた。
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