④完読】かすみ燃ゆ 1177354054883109160

📖かすみ燃ゆ

作者 坂水さま

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883109160


完読🔖



読みやすい、という感想は褒め言葉には入らないとする一部の意見もあるようですが、読みやすいとはつまりその世界を初めて触れる読み手にとって必要な情報が順序よく適度に開かれ、もしくは余計な疑問を抱かせることなく、スムーズに進める状態が用意されていること。無駄なカロリー消費はなく、あますことなく世界を味わえる。スタートラインがきちんとしている。


当たり前だと言い切るには、あまりにそうではない作品が多い。そこをクリアしていなくても魅力的な良作はもちろんあるのですが、魅力にたどり着く前に読み手がダウンしていてはあまりに惜しい。


読みやすいことはそれだけで読み手を確保しやすい。つまり価値があることなのでまずはそこをしっかり褒めたいスタンス、叶遥斗です(ここまでなんとただの自己紹介)。読みやすかったからこそ、その先の『感想』をしっかり述べたい表明です。作者様の読者への思いやりに、読者もまた応えるべし。押忍。


つうわけで!ノンストレスで読めちゃうこちらの作品をご紹介!


恋したら安是の里の女は光るってよ!

とんだ公開処刑かよ、とおののく私に優しく土地の常識世界観は教えてくださいます。里の男は自分に光る女を娶るってよ!惚れねえ相手に嫁ぐことの無い優しい世界。だがしかし。年頃になっても光らねえ娘とか、複数の女が光って群がる色男とか、ここにはここの難儀もあって。そんなわけで主人公かすみもなんやかんや楽しみですね!という濃厚大人恋愛譚。妖怪なの?人間なの?きっとこの世界観ではそれはもう人なの。鬼とかあやかしとか、色々呼び名があれでもみんな人なのよ。艶っぽく情熱的な悲恋……いや、悲恋、なの?


タグによると『因習 業 禁断の恋 民俗学 山女 妹の力 怪異 悲恋』とあるので悲恋は悲恋なのよね。誰にとっての悲恋かというのが問題ね。かすみの悲恋だともれなく私が悶え苦しみます(笑)んで、妹の力!そんなタグってどういうこと。気になるね。いいね謎。


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  せのきみ、せのきみ、あのこがほしい   

  せのきみ、せのきみ、あのこはわからん

  くろぬまきこか、そうしよう 


  あねさんおりて、いもさんにげる   

  おくだりさまは、おやまへかえる  

  おくるいさまは、いついつでやる  


  一番ひかるのだーあーれ



すごく意味深。姉さんと妹さん、おくだり様とおくるい様。誰やねーん。


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そして黙々と読み進めて

 2-4 忌み名


 「妹姫の名の下に告ぐ。全ての安是男に、死を」


  ――妹姫。妹の力。それは安是にとって忌み名だ。そこでようやく、川慈は自分たちが何と対峙しているかを悟った


ここに来て初めて読み手が置いていかれた!妹姫?本題が始まるのか?何と対峙してるんだ!と期待の高まる展開です。


和風オカルトミステリーな側面もあるよね。10/36🔖つづく


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38/38🔖


そう。そうだった。まだ連載中でした。いや、ここからの感想はネタバレ含んでくからアレだね。10/36くらいでとまって正解だったね。あとは普通に読んで楽しむ。まだまだ謎が濃い。誰が~とか迂闊に感想紡げなぃ。小ネタがなくてどれも重要なファクター感がすごい。完結までどっしり腰を据えて待つね。


ここでの感想はこれで〆にしてあとは個人的に普通に作品のコメント欄に感想行くと思います。本来のあるべき読者として。


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燈吾


とにかくこの作品に登場する誰もがリアルで生きてる感がするなかで、この燈吾という人物像が超絶魅力的。品位、知性、志、強さ、誠実さ、etc.

完全無欠のスパダリが、しかし、かすみは助けを待つ囚われのヒロインではない、自分で戦いむしろ助けようと気丈に挑む。人間の強さ弱さがきちんと描かれた上で、夢のような理想的スパダリ。はいこのバランス。ここだけ二次元ヒーローしてても全然違和感ない。上手い作りです。


シビアなものが出てきても嫌悪感なく読めるのはほんとすごいことです。主人公はけっして綺麗なだけな生き方なんてまるでしていない。いびつに歪んでも尚芯がまっすぐで見てられる。女同士の火花散る一幕が度々あってスパイシーなのもこの作品の見どころでしょうかね。


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完結してけっこう経ってるから、こっからネタバレありでバンバン行くね。終盤のネタバレ感想。


妹姫のその人と会って事態は一気に解けていく感がありまして。


思ってた人物像とまるで違う妹姫との場面。そして川の字の場面。最後に再会した燈吾が何を言っても、哀しく思わなかったのは川の字の場面が燈吾視点で先にあったからですよね。本来なら読者は多少ショックを受けてもう少しかすみ寄りの悲痛な気持ちで味わってもいいんでしょうけど、勘のいい人は燈吾の本心や感情はある程度予想つくように用意されていましたので。個人的にあの構成は上手いなーとただただ感心してしまう。呪いが解けてもスパダリ。より本来の姿で。


いくつもいくつも秘密を抱えて紡がれてきた展開が明かされる度、そっかぁー、あれもかー、と過去の場面がよみがえる。


なんにせよかすみと燈吾はお似合いのカップルで、他の誰かじゃとても手に負えないんで。そんな普通な神経だったらとっくに早死してそうです。


相手が何をのぞむのか、その胸の内を読み利用しろ。事を上手く進めるためには大事なことですね。利用が必ずしも悪用ではなくて。知恵をフル活用しているだけなので。


頭の良さや心の強さに打ちのめされて、浄化されたいです。

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