中編
くらいもりをぬけてあおいゆうしゃはマモノと対峙します。
そこにいたのはクモ女のマモノではありませんでした。
ながいあまいろの髪をしたきれいな女のマモノでした。
ひとめみただけではかのじょはマモノにはみえませんでした。
しずかにうたをうたっていました。
あおいゆうしゃの瞳に負けないくらいのきれいな声でした。
おもわずあおいゆうしゃはその声にききほれました。
「そこにいるのはだあれ」
おびえた声がその女からでてきます。
あおいゆうしゃは剣を地面においてはくしゅをしました。
女はすこしのあいだおどろいたようにきょとんとしていましたが
そのあととくいげにしろいスカートをひろげておじぎをしました。
「くも女のマモノをさがしているんです。しらないですか。」
やさしい声でといかけます。
おんなはくびをかしげて首をよこにふる。
「アリーさんならしっているかもしれないわ。」
女はそういうとあおいゆうしゃの手をひいてあるきだします。
しんぞうがどきっとしました。
この子はマモノです、しんぞうを食われるかもしれません。
すこしみがまえたあおいゆうしゃにその子はこう言いました。
「わたしはマモノにそだてられたにんげんです。
おさないころに誘拐されておびえてくらしてきました。
わたしだっていつたべられるかわからないもの。
わたしはいつでもたべられるごはんとしていかされてるの。」
かわいそうなその子の瞳はかなしいいろにそまります。
あおいゆうしゃはあやまりました。
そしてもういちどてをつないで森のおくへとすすんでいきます。
ついたのはおおきなお庭としろい椅子のあるばしょ。
そこにいたのはきんいろの髪をしたマモノでした。
かのじょにあおいゆうしゃはつめよってたずねます。
「くも女のマモノはどこだ」
マモノはにこにことわらっています。
ゆうしゃは片手にした剣を天にかざします。
たいようのひかりがぴかぴかと反射して女マモノにひかりを差します。
すると女マモノはこうさんしたかのようにりょうてをあげました。
「わたしたちはあなたとあらそうつもりはない。
あおいゆうしゃがもつその剣はたいまの剣でわたしのちからではかてない。」
そしてこうつづけて言います。
「くも女のマモノはきっとこどもをころしている。
わたしではどうしようもない。ごめんなさい。」
マモノのかなしげな声にゆうしゃはなにもいうことができませんでした。
マモノはつづけてこういいました。
「わたしはここのマモノたちをたばねるおさだ。
にんげんとせんそうをするのもあまりすきじゃない。
だからあおいゆうしゃ、おまえをにんげんのおさとしてはなしをしたい。」
ゆうしゃは剣を天にかかげたままそのことばをききます。
「この森と村のあいだにまほうでかべをつくりましょう。
マモノは村へいくことができません。
にんげんも山へいくことはできません。
あなたとわたしのちからでつくれば信頼もありましょう。
山のものはマモノがまんげつの日に結界の近くにおとどけします。
それ以外はふれられませんがそれでもいいのです。
わたしたちはにんげんのしんぞうをたべられないでしょうがいいのです。
わたしはだってにんげんとあらそいたくはない。ころしたくない。」
あおいゆうしゃはやさしい声色のきんぱつのマモノを信じました。
そのよくじつ、あおいゆうしゃときんぱつのマモノはいっしょに結界をつくり
にんげんとマモノを完全にはなればなれにさせてくらすことにしました。
むらびとは結界ごしにはなすきんぱつのマモノのことばをきいて
そのことをゆるしました。
いまにもなきそうなこえでやさしくいうきんぱつのマモノをせめられません。
なんどもあたまをさげてあやまるきんぱつのマモノをきらいになれません。
にんげんはきんぱつのマモノを信じました。
そして数年後。あおいゆうしゃにはおよめさんができました。
そう、あのうつくしいうたごえの女です。
かのじょの名前は「マリア」、きょうからゆうしゃのかぞくです。
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