一歩分の歩幅で

修介

序章 『絵本 あおいゆうしゃのおはなし』

前編

これは昔々のお話。

きみのおばあちゃんもおじいちゃんもうまれていないくらい昔。


あるところに小さな村がありました。

小さな村にはにんげんが住んでいました。

おとしよりからこどもまで、いろんなひとが住んでいます。

そこは小さな村ですから、みんな肩をよせあって助け合ってくらしています。

農家のおじさんもお魚やさんのお姉さんも、八百屋のおばあちゃんも。

たくさんのお仕事をもったひとがいます。

きみが思いついたお仕事もありますよ。


村のはしっこにはちいさなおうちがありました。

その赤い屋根のおうちには「あおいゆうしゃ」がすんでいました。

あおぞらのような青い青い目をもっていたのでそう呼ばれていました。

村のひとはみんな「あおいゆうしゃ」が大好きです。

その青い瞳は綺麗だったし、なによりゆうしゃは村のひとに優しかったのです。

そして村のひとにとって同時にヒーローでもあったのです。


村のよこには大きなうっそうとした森があります。

こどもたちは小学校でそこが入ってはいけない場所だと教えられます。

大人になってもその森には入るにんげんはいません。

森にはおそろしいおそろしいマモノがたくさんいたからです。

マモノはにんげんのしんぞうがだいすきです。


ある日、村のこどもがひとり森へはいってしまいました。

よなかにひとりでいたずらごころで入ったその子はその日帰ってきませんでした。

いちにちたっても、ふつかたっても、かえってきませんでした。

村人たちはすぐさまその子のおとうさんとむらの青年をひとりつかせ

森のなかへと探しにはいっていきます。

それからまたいちにちがたちました。

青年がおとうさんを肩にかついでかえってきました。

その顔はまっさおでなにかにおびえるようでした。

おとうさんはむねに大きな傷をつくりつめたくなっていました。

青年はさけびました。


「森にいるおおきなくも女のマモノがかれをころした!」


ざわめく村人をおしのけてやってきたのは、あおいゆうしゃでした。

かれはつめたくなった父親に手をあわせると

かれをうめるためのお墓をほろうと村人たちによびかけました。

ちいさくはありましたが想いのつまったりっぱなお墓ができました。

おはなしを全部きいたあおいゆうしゃは一度だけおおきくうなずいて、

こうせんげんしました。


「ぼくがマモノを退治してこどもをとりもどします。」


村人たちはいっせいになってかれをとめました。

このままではあおいゆうしゃまで死んでしまいます。

マモノに切り裂かれてしんでしまったゆうしゃの姿を想像して

村人たちはひっしにおねがいしました。


「だいじょうぶ。

 ぼくにはこの剣がついていますから。」


そういってあかいろの鞘にはいった剣を天にかかげました。

あおいゆうしゃがいつもはだみ離さずもっているものです。

たいようのひかりをうけてきらきらとかがやく剣はとてもきれいでした。

村人たちはさいごのきぼうをあおいゆうしゃにたくしました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る