試し読みマンガ公開記念SS『アー子さんの特別授業Ⅱ』
キンコーンカーンコーン……。
どこかからか、チャイムの音が聞こえた。
俺は自分が机に突っ伏していることに気づき、顔を上げる。
「……またこの不思議時空にきたのか」
二度目なのでもう驚かない。
まあ、誠司さんとの勝負の直後にこれってどうかと思うけども。
テンションがついていかないぞ、マジで。
まわりを見回すと、思った通り、教室だった。
等間隔に机が並び、窓の向こうにはグランドがあって、正面には黒板。
そして教卓のところには――アー子さんがいる。
制服の上から白衣を着たいつもの格好。
ところどころ髪が跳ねているが、実は美人。
そんなアー子さんだが、なんかこっちに背中を向けている。
ついでになぜかプルプルしていた。
いや、なぜかじゃないな。
前回、この不思議時空に召喚された時、アー子さんは俺にヴァレンタインのチョコを渡そうとしてくれた。
結局、それはアー子さんが自ら放り投げてしまい、俺も不思議時空から強制退場させられたのだが……。
「アー子さん」
「いいかい、
かぶせるように声が張り上げられた。
「今日はこの作品にとって、重要なお知らせがあるんだ。読者のみんなもそれにびっくりしてこのSSをクリックしてくれいるはず。なのに私の個人的な事柄にページを割いていいのかい? 否、断じていいはずがない! そう断じてだ!」
アー子さんは力強く両手を振り上げてみせる。
威嚇のつもりかもしれんが、声が震えてて、なんか切ない……。
「……わ、分かった。お知らせの話をしよう。俺も気持ちを切り替える」
「よろしい!」
白衣をバサアッとはためかせ、アー子さんがこっちを向く。
「じゃあ、今回のお知らせを発表するよっ」
よく見たら、アー子さん、ちょっと頬が赤い。
が、それは気づかないフリをして、こっちもテンションを上げていく。
「興味がむくむくと湧いてくるぜ! そのお知らせっていうのはなんなんだ!?」
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれたね! なんと――」
アー子さんは高らかに告げる。
しゅばっと白衣の右手を掲げて。
「この作品の紹介マンガが公開されたよーっ!」
「な、なんだってええええええっ!?」
マジでびっくりした。
思わず机から立ち上がる。
「ほ、本当か!?
「その通りさ。めちゃ可愛い幼馴染ちゃんが数ページに渡って可愛さを大爆発させているよ」
「数ページに渡って!? 1ページ紹介イラストとかじゃないのか!?」
「イラストじゃないよ。マンガさ。しかも数ページに渡ってのね! その完成度とかわゆさに作者も感涙し、月夜に走り出したとか」
「月夜に走り出した!? しょ、職質されないことを願うぜ……!」
しかし作者も感涙するほどのかわゆさ。
そんな唯花、ぜひ見たい。何がなんでも見たい。
これはもう読むしかないぞ。
「やれやれ、三上ちゃん。幼馴染ちゃんのことで頭がいっぱいという顔だね。けど、一つ失念してないかい?」
「失念? 何を?」
アー子さんはにやりと笑う。
「私は紹介マンガと言ったんだよ? この作品を紹介するにあたって、登場人物が幼馴染ちゃんだけでいいのかな?」
「まさか……アー子さんも!?」
「いや私は出ないよ。さすがに無理だよ。自分で言ってて哀しくなるけど、私はそこまで重要人物じゃないよ。そうじゃなくて、もうひとり大事なキーパーソンがいるでしょ? この作品にとってのさ」
俺は眉を寄せる。
この作品にとってのキーパーソン? 唯花以外の……?
…………あ。
「ま、まさか……!?」
「そうさ」
白衣をはためかせ、アー子さんがビシッと俺を指し示す。
「三上ちゃんも出てるよ! がっつりきっちりばっちり出てるよーっ!」
「まじかあああああああっ!」
熱く拳を握って、両手を突き上げる。
気分は世界王座を制したチャンピンだ。
「ついに俺にもスポットライトの当たる日がやってきたぜーっ!」
うむうむ、と嬉しそうに頷き、アー子さんがさらに説明してくれる。
「この紹介マンガは茨乃先生がデザインしてくれた三上ちゃんと幼馴染ちゃんを、べっこうリコ先生がマンガにしてくれたものだよ。両先生、ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「紹介マンガはべっこうリコ先生のツイッター及びスニーカー文庫のツイッター、それからスニーカー文庫の小説紹介ページで読めるよ! みんな、ぜひぜひ読んでね!」
「よし、じゃあ俺、早速アクセスするわ!」
「オッケー、そんじゃあ三上ちゃんはそろそろ現実に帰還しとこうか」
「なんで!?」
「だって、お知らせはもうお伝えたから」
「せめて紹介マンガを読むまでは待ってくれよ!?」
「それは読者のみなさんにお任せしてさ、三上ちゃんは容赦なくゴーホーム」
「本当に容赦ないな!? それにアー子さんとの話がまだ――」
「だからとっとと帰還させるんだよ! 必要な情報を公開したら三上ちゃんは即帰還。さらば!」
「おわ!? ちょ、本当にいきなりぃぃぃぃぃぃっ!」
アー子さんがパチンッ指を鳴らすと、突然、足元に大穴が出現した。
今まさにスマホで検索をかけていた俺は真っ逆さまに落ちていく。
「うわあああ! せめて俺の登場シーンだけでも読ませてくれええええ…………!」
絶叫で懇願しつつ、俺は現実に帰還していく――。
――――――――――――――――――――――――――――――
【お知らせ】
というわけで本作の試し読みマンガが公開されました!
作者感涙、月夜に全力疾走な唯花のかわゆさ全開の素敵なマンガです。
(奏太もいるよ!)
詳しいこと&リンクは近況ノートにて↓
https://kakuyomu.jp/users/titoku/news/1177354054894439444
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます