第10話 【裏舞台】国王陛下…?

「さて、勇者たちの仕上がり具合を報告せよ。それなりに、にはなっておるのだろうな。放り出した途端に死なれてしまっては、これまでの苦労が水の泡だぞ」


 あの日、里見たちに国王と名乗った老年の男性--クローセン王国第8代国王ロベルト・L・サリヴァンが手元の報告書へ目を落とす。


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 ララ・ササキ『加護持ち』

 種族/性別/年齢 ヒューマン/女/17

 容姿 セミロングのまっすぐな金髪、晴れの日の空のような青眼。身長約80シンク。

 概要 全属性への適性『虹の女神たちの最上加護』を授かっている。魔力量が飛び抜けて多く、計測不能。しかし、現時点ではコントロール面で難あり。その時々で出力が一定でない。

 剣術、弓術、槍術など、武器を持たせるとそれに合った『才能』とも言うべき能力が発揮され、武器を使いこなせている。スタミナに不安が残る。

 性格は、市井の少女と大きく変わらず、戦うことに不向き。困難に直面すると甘さが表れ、冷静さを欠く。また、己の容姿に高い自信を持っている模様で… … … …。


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 クイナ・サトミ『邪眼』

 種族/性別/年齢 ヒューマン/男/17

 容姿 夕陽の色をした赤髪。涼し気な黒目。身長約83シンク。

 概要 勇者召喚の魔法に巻き込まれてやってきた。勇者パーティーの治療師として同行する。

 魔力のコントロールに関して覚えが早く、初級の治療魔法であれば失敗することなく行使できる。

『フィギュアスケート』なる競技をしていた経験あり。身体能力はこちらが求める水準に達している。

 性格は、慎重で真面目。毎朝の図書室での自主勉強、城で働く者たちへ教えを受けに行くなど勉強意欲が高い。やや、孤立主義… … … …。


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 アナベル・ベルマー『風使い』

 種族/性別/年齢 ヒューマン/女/16

 容姿 ウェーブがかかった腰まである金髪。ネオンブルーの目。身長75シンク。

 概要 カジャス・ベルマーの孫娘。異世界からきた『加護持ち』のサポート兼監視の役割を担う。高い評価を求めており、魔の種討伐に積極的になると思われる。光、闇、土、木、風の五属性の適性を持つが、… … … …。



「こうしてみると、欠点の少なさから言って『邪眼』が勇者であった方が都合がよかったやも…。しかし、治療師では『勇者』として見劣りしてしまいますな」


 傍に控える家臣が同じ報告書を見ながら感想を述べる。

 ロベルト王らの望んでいた人物としては、剣士または魔法と剣術両方を使いこなせる魔剣士の適性を持ち、文武両道、容姿端麗な若い男性だった。もし、女性が召喚された場合でも、それはそれで偶像--聖女あるいはアイドル--として演出することも考えられた。

 ところが召喚されたのは、前衛に不向きな少年と前衛の才能だけならある少女。外見は少女は間違いなく美少女であるが、頭の中身は間違いなく少年の方が上。両者とも十代後半。これだけ綺麗に分かれていると、何者かの意地悪すら感じる。『勇者召喚の儀式』は対象を選べるわけではない。ただ「異世界の『勇者』になれる素質を持った者」を大女神が掬い上げてこちらの世界へ送り込むだけなのである。

 つまり、ララも里見も可能性は同じだけ存在していると言える。その可能性が花開くのが遅いか、早いかの違いだ。そして、ロベルト王は『証』を既に現していたララの持つ可能性の方を選んだ。


「果たしていつまで王太后陛下に隠しておけますかな」

「あの女狐なら、今頃は息子の婚約の件に目が向いておる。事は露見するまい」


 であろうとも氷炭ひょうたん相容れない、かの女人が横やりを入れてくる前に事を進めなければ。ロベルトは鋭い目つきで空を睨んだ。

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