第10話 いつの日か
『「さあ、幸一くんおいで・・・」
「えっ」
ルナが僕を呼ぶ。
そうして、僕を力強く抱きしめた。
「幸一くん、本当の気持ち聞かせて・・・
君の本当の気持ちを」
いろいろな事があった。
最初が、うとまれていたと思う三原さんも、今はフランクにしてくれる。
おかげで、ルナと仲良くなれた。
「ねえ、聞かせて」
「今は言えない、でも・・・」
「でも?」
僕は花束を取りだした。
「幸一くん、この花は、ライラック」
「うん、これが気持ち」
ルナは、涙を流して喜んだ。』
こうして、最後のエピローグを書きおえて作品は完結した。
一応は・・・
「パパ、がんばったね。ありがとう。私嬉しいよ」
「ルナの、おかげだよ」
「ううん、パパのおかげだよ。パパ、大好き」
ルナは僕を抱きしめてきた。
頬の柔らかい物が当たったが、気のせいか・・・
「パパ、じゃあ私帰るね」
「どこへ?」
「パパが作ってくれた、私の世界へ」
「世界?」
「うん、青春レモンの中」
忘れかけていた。
ルナはもともと、僕の作品の中の人物だった。
「もう会えないのか?」
「ううん、いつでも会えるよ」
「えっ」
「パパが、青春レモンを読んでくれたら、私はそこにいる」
「そこに?」
「うん。そして、パパが願ってくれれば、私はいつでも来るから」
ルナの姿が、だんだんと薄くなる。
「じゃあ、パパ。またね。大好きだよ」
こうして、ルナは消えた・・・
「いつでも会えるよ」
ルナの、その言葉を信じた。
「この歳で、娘に助けられたか・・・」
ライラックの花言葉は、
「愛情への変化」
それを気付いてくれたのか・・・
「ありがとう、ルナ。またね」
こうして、不思議な数日間が終わった・・・
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