第2話 処女作

押見ルナ


僕は初めて書き始めた小説、「青春レモン」のヒロインだ。

肉食女子と草食男子の恋物語だったが、男子が成長しすぎ、

本来の目的から、それてしまったために止めた・・・


「パパ、本がたくさんあるんだね」

ルナは、僕の部屋の本棚を眺める。


「でも、小説や漫画よりも、雑学本が多いね。どうして?」

「人の作品を読むのなら、自分のを書く」

「さすが、パパは立派だね。でも、生かされてないね」

「はっきりいうね」

「あら、パパが決めた設定じゃない」

「設定?」

確かに、そう設定した覚えがある。


「ねえ、私の事、言える?」

「設定か?」

「うん」

ルナは微笑む。


「1月5日生まれのA型。

160センチ、47キロ。上から85、59、87」

「正解。さすが私のパパだね」

「褒めてるのか?」

「うん」

小悪魔的な笑みを浮かべる。


「ねえ、この作品の他の子たちも言える?」

「まあな」

僕は、一通りあげてみた。


「さすがだね。100点満点だよ。君はすごい」

そういや、2人称は「君」に設定したな。


バカな設定をたものだ。


「パパが書いたのは小説だから、キャラの絵がない。

でも、私の姿は、パパが頭の中で、創造していた姿よ」

「えっ?」

「訊かれる前に、答えちゃった」


ポニーテールに、赤いリボン。

二重瞼に、小さめの鼻と口。

緑のブレザーに、ミニスカート、黒のニーソ。


確かに思い描いていた姿がそこにいた。


「ねえ、パパ」

「何?」

「お願いがあるんだけど」

「何だ?」

「娘のお願い、聞いてくれるよね?」

「いつから、娘になった?」

ルナは、ムッとする。


「だって、私を生み出したのはパパよ。

だから、私は君の娘。」

小説や漫画の登場人物は、作者の子供も同然だが、その通りだ。


「で、なんだ?欲しい物でもあるのか?」

「ちがうよ」

「じゃあ、何だ?」

ルナは迷うことなく答えた。


「青春レモン、完結させて」


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