緊急救助依頼

「さて、今日の訓練も終わったな」

 ヴァレンティア王国の騎士、須王すおう龍野りゅうやは、庭園にて流した汗を拭きながら騎士の制服に着替えていた。

「ん?」

 と、こちらに歩を進める人影を見つめる。


「龍野君、お疲れ様」


 そこには、ヴァレンティア王国第一王女にして龍野の恋人、ヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティアがいた。

 その両手には、アイスティー入りのグラスを乗せたトレイがある。

「疲れたでしょ? これでも飲んで、リラックスなさいな」

「ああ」

 龍野はグラスを手に取ると、一気に飲み干した。

「あらあら。一気飲みは体に悪いわよ?」

「ぷはぁっ。喉がカラカラだったんでな」

 グラスをトレイに戻す龍野。それを見届けたヴァイスは、近くを通りがかったメイドにトレイを下げさせた。

「それじゃあ、部屋に行きましょうか」

「あいよ」


 数分後。

 部屋に到着した龍野とヴァイスは、ベッドに腰かける。

「龍野君、お願い」

「ん」

 龍野がヴァイスの両頬に手を添え、口づけをする。

 と、その時。


「マスタァアアアアアアアアアアアッ!」


 電撃がはしった様な音と女性の呼び声が、同時に響いた。

 そして生成されたホール状の異空間から、浅黒い肌のグラマラスな女性が飛び出した。

「えっ、お前……!」

「まさか、貴女は……ディノさんこと、ディートリンデ・ヴォーヴェライト!?」

「そうだよ! ねえマスター、助けて!」

 “ディノ”と呼ばれた女性は、必死の表情で龍野に訴えかける。

「落ち着け! どうしたんだ!?」

 龍野がなだめると、ディノは深呼吸を始める。

 それからゆっくりと、龍野に告げた。

「アルマ帝国が……存亡の危機に瀕しているの!」

「アルマ帝国が!? クソッ……どうなってやがる!?」

 アルマ帝国。

 地球から遠く離れた地にあるその国は、龍野、ヴァイスの旧知の国であり、ディノが存在する意義そのものの国でもある。

「何が出来るのかしら?」

 ヴァイスが冷静に、ディノへ質問する。

「オレについて来て!」

 だがディノは質問に答えず、龍野とヴァイスの腕を掴む。

「えっ?」

「きゃっ!?」

 そしてそのまま強引に、2人を異空間へと引きずり込んだ――。

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騎士と姫、切り離せぬ縁(えにし) 有原ハリアー @BlackKnight

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