14.死者の森



『死者の森』


 フォレストアーチに住まう人間がそう呼んでいる場所は、村から北へ行ったところにある、ぐるりと囲むように伸びている川によって広大な森から切り離されたかのように存在している。規模こそは広くないものの、周辺の普通の森と比べ、その森は別世界と呼べる程に木々が密集しており、木々から伸びる木の葉は、さながら天井のような密度で生い茂っている。


 このような名称が付けられた理由は、『遥か太古、ここで暮らしていた古代人が、死して森と共に生きるために死者を地面に埋めた』とか、『過去に起こった戦争で負けた残党兵が森で迷い込み、餓死、または自殺をして木々の養分となった』といった物騒な逸話があるが、有力なのは、『そこに住まう狡猾な肉食動物の餌食となり、残された死体は木々の養分となった』とされている。


 円状のように広がるここら一帯のみが、異常な程の成長を遂げている。昔はこの森では、珍しい植物が生えていることもあって、村では重宝していたらしいが、狼といった獰猛な肉食動物による被害が出たことや、亡霊を見たという情報も出たことで、危険な森であると認識を改めた。今では、狩猟を生業としている村人でさえも、滅多に近づくことはない。やんちゃな子供でさえも、この森に入ることを一切、禁じているという。好奇心旺盛な子供にも、『死者の森に行けば死者に食われるぞ』と脅し文句にも似た警告を言っては、決して近づかせようとはしなかった。


「……そんなところへ、村長さんとこのガキんちょは行っとるんか」


 大人の言う警告という“壁”も、村長の息子であるマーカスは、いともたやすく乗り越えて行ってしまう。その好奇心の強さと豪胆さに祐樹は、呆れ半分、感心半分に呟いた。


 『死者の森』へ向かうため、半ば獣道ともいえるような道を、かれこれ30分、エリスと共に歩く祐樹は、エリスから『死者の森』についての説明を受けた。曰く付きのある地名からして、やはり地元民でも近づこうともしない。日本でいう、いわゆる心霊スポットのような物だろう。

   

 まだ階級が巡査だった頃、悪ガキどもが心霊スポットと呼ばれる廃墟に不法侵入して、スプレー缶を使って壁に落書きをしていたところを、パトロールしていた時に補導したのを思い出す。確かにあの時見た廃墟は薄気味悪く、正直パトロールのためとはいえど近づきたくはなかった。


 閑話休題。


 とにもかくにも、祐樹とエリスは、この道なき道といっても過言ではない道を歩いている。エリス曰く、この道はマーカスのみが知っている道であり、彼に教えてもらったエリスと彼以外の人間には絶対わからない道らしい。ただ、舗装もされていない、人の手が一切入っていない道ゆえ、少しでも道を外れれば、森の中を彷徨う事になりかねない。


 故に、危険な目に合わせたくはなかったが、エリスは必然的に付いて行くこととなる。その点だけが祐樹にとって懸念事項ではあるが、最悪、自身が囮になってでも逃がそうと考えていた。今現在、唯一の幸いとしては、その魔物らしき存在とは未だ遭遇していないことだった。


「お、三本目発見や」


 背の高い草を払いのけた先で祐樹が見つけた、周りの木と比べて幹が太い木に巻きつけられたロープ。祐樹からしてみれば低い位置に巻かれているロープは、マーカスが目印にと巻いているらしく、このロープ、結び目を村の方角へ向けて、帰り道もわかりやすくしている。なかなかにしたたかな子供だと、祐樹は感心した。


 ともあれ、これがあれば『死者の森』に誰にも見つからずに向かえる……のだが。


「にっしても、草が鬱蒼としとって進みにくいのぉ」


 大剣を軽く振るい、鎌のようにして切り開きながら進む。獣道とは言ったものの、その道は草に隠れていて先が見えないことが多く。こうやって道を塞ぐように生えた草を刈り取っていかねばならない。これのなんと面倒なことか。


「だからこそ、マーカス君もこの道に目を付けたんだと思います。多分、狩人の人もわからないんじゃないでしょうか?」

「賢い上に目敏い、ときたか。今回はそれが厄介な事んなってるんやけどもなぁ」


 ため息をつきつつ、祐樹は草を払いのけていく。森から村へ向かう正規のルートはないし、仮に狩人に案内を頼もうとしても、即却下されるだろう。


 ……そう言えば、何故一部の村人たちは村長の一人息子が迷子になっているというのに、そこまで慌てなかったのだろうか。確かに祐樹はよそ者で、何故かエリスを邪険にしている風ではあるが、さすがに村長に関係している事態なのに、反応は余所余所しかった。中には「あぁ、そう」と言わんばかりの態度ですぐに仕事に戻った者もいた。その時、怒りがこみ上げてきてギリギリ耐えたが。


 ただ、手がかりにはならなかったとはいえど、きちんと対応してくれた村人の方が多かったのが救いと言えば救いか。


「つ、着きました……」


 難しい顔で考える祐樹の横で、エリスが震える声で前方を指さす。意識を現実に戻し、祐樹は指さした方を見やる。


 そこまで広くはないが、飛び越えるには遠すぎるという程の幅のある川を挟んだ対岸。そこに『死者の森』と呼ばれる、村人に忌み嫌われている場所があった。


 よく見れば、なるほど、背の高い木々の密集具合が祐樹達が立っている周囲の森と比べて高いことがわかる。今は昼なのに、向こうの森の奥は来る者全てを飲み込まんとする暗闇が広がり、よく見えない。『死者の森』と呼ぶに相応しい不気味さが、対岸にいるはずの祐樹達からも感じられた。


「で、対岸に渡るには……あれか」


 見回すと、それはすぐに見つけた。対岸に向けて渡された、一本の丸太。所々苔むしており、腐敗している箇所が目立つような、橋というのには心もとない気もする、そんな丸太だ。けれども、見たところ道はここだけのようだし、他の橋を探して歩き回るのも時間のロスになる。今は一刻の猶予もない。


「ともかく、行くか」

「は、はい……」


 声をかけると、エリスが相変わらず震える声で応えた。


「……どしたん? さっきから何か様子が……」

「い、いいえ! 何でもないです、はい!!」


 ギクリ、という擬音が聞こえてきそうな程、肩が跳ね上がったエリスに、祐樹は訝し気な目で見るも、特に気にすることなく丸太に足をかけ、上る。遅れてエリスも祐樹に続き、二人で並んで丸太の上を慎重に歩く。


「おぉう、結構怖いのぉ」


 丸太から川まで、そこまで高くはないにしても、川に落ちてずぶ濡れという展開だけは御免である。丸太も見た目よりも頑丈なようで、祐樹の体重で真ん中からボキリッ! というような間抜けな事は起こらず、祐樹は無事に渡り終える。


 後ろをゆっくりと付いて歩いていたエリスも、丸太の端まで来ることができた。丸太から飛び降りようと、足に力を入れる。


 途端、片足が滑り、エリスの体のバランスが急速に崩れた。


「ひゃっ」


 エリスの口から小さな悲鳴が漏れ出る。思わず両手が伸び、虚空を掴むも空しく、そのままバランスを崩した体は背中から川の方へと倒れ込んでいき……、


「危ねっ!」


 かけたところを、祐樹が咄嗟に手を伸ばし、エリスの右手を掴んだ。落下を阻止したことで右腕に負担がかかり、軋むような痛みが走るも、ギリギリ川へ落ちずには済んだ。


「っと」


 祐樹が軽く手を引くと、エリスの軽い体もそれに伴って引っ張られ、地面に膝を着いた。突然のことで、エリスは心臓が激しく跳ねまわり、落ち着かせようと躍起になる。


「大丈夫か?」

「あ……ありがとう、ございます」


 荒くなった息を整え、祐樹にお礼を言うエリス。冬は過ぎたとはいえど、まだ川の水は冷たい。もし落ちていたら、寒さに身を震わせてマーカスの捜索どころの騒ぎじゃなくなっていたかもしれない。


「気ぃ付けや? こういう場所は足元ちゃんと見ないと、事故ってまうで?」

「う……す、すみません」


 迷惑をかけたことに、エリスは気落ちする。道案内のために祐樹を先導するはずの立場なのに、こうやって足を引っ張ってしまっている。なのに、自分のドジのせいで、こうやって彼に手を引かれている結果になるなんて……。


(……あれ? 手?)


 ふと、自分の状況を改めて見てみる。


 自分は今、手を握られている。


 誰に? 目の前にいる大きな男性に。


 祖父以外の男性とは、手を握ったことなどない。相手は自分より遥かに大人ではあるが、身内以外の男性に対する免疫のないエリスは、


「ご、ごめんなさい!」

「おっと」


 謝りながら、咄嗟に手を引いてしまう。


 家を出た直後に、頭を撫でられた時はここまで慌てることはなかったのに。


 それはひとえに、幼い頃からハンスに頭を撫でられたことによる“慣れ”というのがあった。だが、エリスにとっては、手をつなぐという行為は今まで本の中でしか見たことがない出来事でしかなかった。


 故に、手と手を繋ぐという行為を無意識にしてしまったエリスは、内心狼狽える羽目になっていた。


 そして同時に、後悔してしまう。祐樹は助けてくれたのに、まるで振り払うように手を引いてしまった。


 怒ってしまっただろうか? あるいは、傷つけてしまっただろうか? 祐樹の反応を、恐る恐るエリスは見る。


「はは、謝ることなんてあらへんやん。おかしな子やなぁ」


 笑っていた。全然気分を害している様子もなく、突然払いのけるかのように手を引いてしまったエリスを、おもしろそうに祐樹は笑っていた。


 その反応に、エリスは一瞬呆けるものの、祐樹が怒っていないことに安心する。


 同時に、祐樹の大らかさに、どこか心地よさを感じ始めていることに、エリスは気付かない。


 そんなエリスの心境など露知らず、祐樹はエリスから目を離して前の森を改めて見る。渡る前と比べて、目の前に広がる森から漂う不気味さが増している気がする。祐樹とエリスを見下ろすように立ち並ぶ木々が、新たな獲物が来たことを喜んでいるかのように、枝を揺らして木の葉を擦らせる音を鳴らす。


「さぁて、鬼が出るか蛇が出るか……」


 右手の大剣を握り、不慣れな武器とはいえどいつでも臨戦態勢に入れるように身構えておく。そして、目の前にある唯一、木が生えていない箇所。暗闇が口を開けて待っているかのようになっているそこが、この森の入り口のようだった。


「行くで」

「は、はい!」


 祐樹の一声に、気を取り直したエリスが杖を引き抜きながら応える。それを合図に、二人は森へ一歩足を踏み入れていった。






 森の中は、確かに村周辺の森と比べると暗く、足元に注意して歩かなければいけなかった。と言っても、外から見た時ほどの暗闇ではなく、葉の天井から降り注ぐ木漏れ日が証明代わりとなって、所々を明るく照らしているため、目を凝らせば何ということはない。ただ、暗さに伴って薄気味悪さは倍増され、頭上から聞こえる鳥の鳴き声すら、その雰囲気に拍車をかける。さらには、ここが危険か場所であることを示唆するかのように、かなり遠くではあるが、獣の遠吠えが聞こえてきた。


「ほんま、暗いな……しっかり付いてきぃや?」

「だ、大丈夫です……私も、マーカス君に連れられてここには来たことだってありますし」

「そら、心強いな」


 話ながら草むらを掻き分け、祐樹は大剣を肩に担ぐような形で森の中を突き進む。互いに暗闇に飲み込まれないようにと、会話を途切れさせずにいるものの、祐樹に恐れは無く、周辺から飛び掛かってくる存在があればすぐさま振り払えるように、常に視線を周囲に巡らせつつ歩む。


「そう奥までは進んでないとええんやけど……こうも暗いと、足元にも気を付けて歩かなあかんな」

「そ、そうです、ね……」


 一方、祐樹の後ろを歩くエリスはというと。


「……なぁ?」

「は、はい?」

「さっきからコートの裾持っとるけど、どないしたんや?」


 おっかなびっくりといった風に、祐樹のコートの裾を掴んで後ろを歩くエリス。少し振り向き、半ば呆れ気味に問う祐樹に、エリスは狼狽えた。


「え、えっと、はぐれないようにしようと思いまして、それでその……!」


 しどろもどろで答えるエリス。確かに、はぐれないようにするにはいいかもしれない。言っていることは間違ってはいない。間違ってはいないのだが。


 どうも表情を見る限り、あまり顔色がよくないし、先ほどから視線は周囲の暗闇に向けられていて落ち着きがないし、コートの裾から震えが伝わってくるし、はぐれないためというより、何と言うか。


「……なぁ、ひょっとして」


 祐樹が言いかけた途端、鳥が喚きながら枝から飛び立ち、葉がいくつも舞い落ちる。


「ひぃっ!?」


 小さな悲鳴を上げ、先ほどよりも祐樹にくっつく形でコートにしがみつくエリス。顔色が悪いどころか、よく見れば半泣きだった。


「そ、その……こ、怖くないです、よ? ただ、ちょっと驚いちゃっただけで……」


 怖くないと言いつつも、フルフルと震えながら祐樹のコートに皺が付くほど握りしめつつも周囲に視線を巡らせるエリスの姿は、どう見ても怯えている小動物のそれだった。彼女の性格からして、皺にしてしまったことは後から謝罪はするだろうけれど、今は恐怖からそれどころじゃないようで。


「……あー、まー……」


 ポリポリ、後頭部を掻く祐樹。ここまで来たら、「怖いんだったら戻るか?」とも言えない。


「……はぐれんように持っときや」

「は……はいぃ……」


 結果、コートの皺は気にしないのでそのままで行くことになった。愛着はあるが古いコートなので、今更皺の一つや二つ、気にならない。


(しっかし、これじゃどこへ行けばいいのかわからんなぁ)


 この森、面積こそは広くはないようだが、視界の悪さと木々の密集具合も相まって、方向感覚が狂いそうになる。今歩いている道は、人の手入れがされていない、ここへ来るまでと同様の獣道。少しでも道から逸れたら、元の道に戻るのは困難になるだろう。


 本当に、こんな場所に子供一人が来れるのか? だんだん、祐樹は疑問に思えてきて、同時に本当にここにいるのかどうかという不安も湧いてくる。


 だが、彼がここに来ているかもしれないというエリスの言うことを疑うつもりはない。本人も不安気ではあったが、信じると決めたのは祐樹だ。それに、村人の証言は当てにならない。ならば、このまま進むしかない。


「大声……で、叫んで呼びかけたいところやねんけども……」


 マーカスの名を大声で呼びかけようとするも、魔物という存在もある。生態はよくわからないが、聞くとかなり危険な存在であることらしく、下手に大声を上げて魔物に感付かれて、危機に陥るわけにもいかない。


「……地道に歩いて探すっきゃないのぉ」


 エリスをコートにくっつけたまま、この暗い森の中を歩き回って探すしかない。先が思いやられる気持ちになり、祐樹は頭を掻いた。


「ふぅ……気が滅入ってもしゃあないな。ここは一本……あ、ちょっとすまんな」


 祐樹は断りを入れてからエリスに背中を向け、懐からタバコと青色のライターを取り出す。この世界、タバコは存在しているかどうかは疑問だが、彼の好きな銘柄は100%存在していない。つまり、タバコ一本すら貴重な物。それでも、気持ちを落ち着かせるためにも、ここで一本、吸っておくのも悪くはないはず。祐樹自身もニコチン中毒という程タバコ好きというわけではないし、今後頻繁に吸わなければ問題ない。エリスに煙が行かないように風下に立っているし、携帯灰皿を持っておけば、灰も地面に落ちないし大丈夫だろう。


 そう言い聞かせ、祐樹はタバコを咥えてから携帯灰皿を取り出し、ライターの着火スイッチを押す。摩擦音が鳴り、火花が散る……のだが、本来出るはずの小さな火がなかなか出ず、空しく火花が散って消えるだけだった。


「……? 今の音は?」


 ライターの音が気になったのか、エリスが音の出処である祐樹の手元を見た。


「ん? ライターやけど?」

「らいたー?」


 何度も着火スイッチを押しながら、祐樹が応える。


「あぁクッソ、やっぱ100円物のライターはあかんなぁ」


 少し苛立たしそうに呟きながら何度か着火スイッチを押すも、相変わらず火花が散る程度で火が点かない。その様子をしばらく興味深そうにエリスは見つめている。


 やがて、数回目の摩擦音が鳴った瞬間、ライターの先端に火が灯った。


 祐樹はホッとし、タバコの先端を火に近づけようとした。


「……あ」


 その時、ふと風が吹いた。強くはない、けれども、草木を騒めかせる程の風。その風が、まるで危険因子を排除するかのように、せっかく何度か挑戦して出した火を、蝋燭の如く吹き消した。



『―――――――っ』



「……え?」


 風が吹いて火が消えたことよりも、気になることが祐樹の耳に届く。


 風に乗ってくるかのようにふと、祐樹の聴覚が何かを捉え、思わず声が出た。


「どうかしました?」


 どこか呆然としている祐樹に、エリスが声をかける。が、祐樹が左手で「静かに」と制し、右手を筒のようにし、右耳に当てた。


「…………」


 目を閉じて視覚を一時的に消し、口も閉じて意識を集中させ、全神経を右耳に注ぐ。少しの音も逃さないとばかりに、体も少し右に傾けた。


 耳を澄まして聞こえてくるのは、鳥の囀り。虫の声。草木の音に、獣の声。



『―――――――っ』



 そして、もう一つ。森の中では聞こえるはずのない、この場にそぐわない音。

 否、これは音ではない。決して獣や植物では出すことのできない、声変わりのしていない年相応の高さ。


 すなわち、人の声。それも、幼い少年の物。


 風に乗って微かに聞こえる声を、祐樹の耳は拾い上げた。



『―――――――っ!』



 声の内容は、わからない。しかし、一つハッキリわかったことがある。


「……走るで!!」

「え、えぇ!?」


 それは、声の様子から、切羽詰まった状況にあるということ。


 祐樹はエリスに一言そう言って、声のする方へ走り出す。先ほどまで歩いていた獣道を逸れ、もう一つの、それもさらに狭く、左右の草と草が触れ合う程の幅しかない、実質の道なき道。足元を取られそうになりつつも、祐樹は走る。その後を急ぐエリスも、若干遅れながらも、何とか祐樹に追いすがる。内心では突然走り出した祐樹の意図がわからず、混乱している状態ではあったが。


 しばらく走っていると、少し開けた場所へ出た。他と比べると背が低く、動きに支障が出ない程度の草が生えた、小さな公園程度の広さのある円形の広場。


 そこの奥まった場所に聳え立つ一本の木。その木を背に、黄色い帽子を目深に被った少年が一人、座り込んでいる。


 そして、


「グルルル……」


 三匹の狼が、獰猛な牙が生え揃った口から涎を垂らしながら、哀れな獲物……少年を取り囲んでいた。

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