第22話 



「このままのペースじゃ勝つには時間が圧倒的に足りない」


 残り二週間を切った今、改めて、よしあきはみんなに今の現状を打ち明けた。


「正直、部長に勝ちたいという思いがあったとしても、全員が揃って勝ちに行く目的意識がないと無理だ。」

「で、ですよね……」


 なんとなくここ最近の練習をやって、自分たちの実力というものがどのくらいか分かってきたのだろう。

 それを薄々感じていたからこそ、諦観ともいえる弱音が彼女の口から漏れた。


「みんながもし本気で勝ちにいきたいと思うのなら、練習は増やす」

「俺は無理だぞ!?」

 

 その提案に対して、すぐさま長柄がボイスチャット上で大きな声をあげる。


「ただでさえ、塾とかあるしさ……」


 練習試合はとりあえず週に2日いれてあるだけ。

 後は個人練習という形になっている。

 基本的に中条や逆上は時間の許す限り練習に打ち込んでもらってはいるが、それでもこのままでは追いつかない。


「……一気に上手くなる練習とかないの? ほら、アメ舐めたらレベル上がるみたいなさ?」

「ある訳ないだろ……そんなのあったらとっくにやってる」

「だ、だよねー。ははっ……」


 逆上が上手く場の雰囲気を保とうとするものの、よしあきの返しに答えに窮してしまい、再びお通夜のような感じになる。


「いえ、私が無理を言ったのが悪いんです……。よしあきさんと会って、もしかしたらと舞い上がっちゃったのがいけないんですから……」


 しゅんと肩を竦める中条。

 それからも重苦しい雰囲気はしばし続いていた。

 よしあきが最後に取りまとめ役として、「じゃあ」と結論を言おうと思った時だった――。


「――まだ、早いんじゃないの?」


 そんなレンの声に誰もが、「え?」と感嘆の声を漏らしていた。呆れるようなため息がこぼれると共にレンが口を開く。


「まだ、やる前からそんなんでどうすんのって話でしょ。――それとなよ男!」

「…………」 

「あんたの事よ! な、なが……なんとか!」

「お、俺かよ……!? 長柄だって」

「そんなことはどうでもいいわ」


 どうでもよくねえよ、とボヤいていたがレンは無視して続ける。


「あんたが初心者だってことは分かってる。

 数合わせだってことも分かってる。でもね――」


「あたしらは精いっぱい真剣にやる。だからあんたも時間のある限りは真剣にやって。手抜きするのは違うからね」


 レンが初めて打ち明けたであろう心の内を聞いて、みんなは呆気に取られた表情を浮かべていた。


 その彼女の言葉が、思いが、よしあき達のチームの輪を繋ぎ止めたといっても過言ではなかった。






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