第5話With a ship and a woman and business 船と女とビジネスと

「立派なガレー船ですな。これほどの物は中々ありませんぞ」


 元船乗りだと言う修道士のダリオが目を輝かせている。こういうの好きそうだもんね、アンタは。


「コイツは昔、いくさのどさくさに紛れてアタシの爺さんがコンスタンティノープルからかっぱらって来たデュロモイって船だ。この船があったからこそ素人の父さんたちが海賊として名を上げることができたんだ。ま、古い船だけどアタシたちにとっちゃ家も同然さ」


「いやあ、話には聞いた事がありますがこうして目にするのは初めてです。なんでもこのデュロモイ船は火を吐く装置を積んでいたとか。それに大きな弩も」


「火を吐く装置は構造が難しすぎてバラしちまったらしい。大弩の方は今も健在だよ。一発で船腹に穴があくほどの威力さ」


 ダリオはそのあとも熱心に色々と聞いていたが俺にはさっぱりわからない。わかったのはこの船は2層式の大型ガレー船で最大100人で漕ぐ事ができるらしい。そうなった時の速さは尋常ではないということと、船の名前が『アクアマリン』と言う名であることだけだ。アクアマリンは海の護符とも言われ、船乗りなら大抵携帯している宝石らしい。


 アクアマリン号の長さは40m程もあり、高さも3階建ての家ぐらいはあるだろう。その威容は尋常ではない。


 海岸の上陸用舟艇に乗り込み、縄梯子を伝ってアクアマリン号に乗り込んだ。船には逞しい水夫たちに混じって女性の姿もちらほら見かけられる。全員が乗り込んだ後、ロザリアは船の乗員を全て甲板に集め、整列させる。一段高いところに俺を立たせ、自らはダリオ、シェラール、ヒュリアと共に一段低いところで船員達に向かい合う。ズラッと並ぶ船員たちは全部で100人はいるだろう。その中で注目を浴びる俺は、緊張で固まっていた。


「みんな、よく聞きな! 海賊稼業は今日で終いだ、これからアタシ達はここに居られる騎士、ジョルジオ様にお仕えする従士となった。彼に忠誠を誓い、従士として恥ずかしくないような生き方をするんだ。文句があるやつはいるか!」


 一同が「オォォォ!」と雄叫びを上げる。彼らも海賊として生きることに疑問を持っていたのか隣同士で抱き合って喜んでいる。中には感極まったのか大声を上げて泣くものすらいたほどだ。


「これからジョルジオ様に従士として誓いを立てる。一人ずつ前に出て忠誠を誓え!」


 まず、ロザリアが前に出て片膝をつく。後でシルヴァーノに聞いた話なのだが右膝をつくのが作法らしい。左膝が立っていればたやすく剣を抜けないからだという。


「我が名はロザリア! これよりジョルジオ様の従士として、その御身の盾となり剣となる事を神に誓います」


「カルメル修道会の修道士、ダリオ。その儀、確かに見届けました」


 ロザリアが両手を差し出す。ダリオに習ったとおりそれを外側から両手で包んでやれば儀式は完了だ。次いでこの船の副長を務めていると言う、顔の長い男が名乗りを上げる。


「我が名はルチアーノ! 神に誓って……」


 今度は航海士のロメオ、そのあとは甲板長のサビーノと続き、マリオだのマルコだのルイージだのどこかで聞いたような名前が延々と続いた。どの男の手もゴツゴツとして力強く、まさに海の男といった感じだ。

 中でも目を引いたのは漕ぎ手を務める連中だ。ガレー船の漕ぎ手は相当な力がいるらしく、どいつもこいつも筋肉の塊だった。彼らはいざ戦いともなれば強靭な戦士に早変わりする。それぞれ手にした武器を俺に自慢しながら忠誠を誓っていった。


 乗り込んでいた女性たちはだれかの妻だったり妹だったりだ。彼女たちも夫や兄に習って忠誠を誓う。


「私の名はソニア、フリオの妻です。夫共々ジョルジオ様のお役に立つよう誠心誠意努めます」


 最後の一人が忠誠を誓う。この可愛らしい子が人妻か。年の頃ならまだ15、6? こんな子を嫁さんにもらったんならそのフリオとか言う男はさぞかし男前なのだろう。


「さて、全員誓いが済んだところで出航だ! 目的地はアッコンの港さ、わかったらとっとと動きな!」


 ロザリアの号令で船員たちが動き出す。皆、自分の持ち場に別れ、あっという間に甲板には誰もいなくなった。


「ジョルジオ様、それではこちらへ」


「あのさ、ロザリアさん。そんな改まった言い方されると非常に居づらいんだけど」


「しかし、貴方は私の主。ぞんざいな口を聞くわけには」


「そういうんじゃなくてさ、元々従士になったのだって海賊のままじゃ都合が悪いからだよね? だったら普段は普通に話してくれないかな? 」


 ロザリアはハァーっとため息をつく。ダリオも額を手で押さえ、フルフルと頭を振っていた。


「まったく、アンタって奴はどこまで変わり者なんだい? 主がドカッと構えないでどうすんだ。ホント頼りになんないね」


「いや、なんかすみません。ホント」


「そうやってすぐ謝る! いいかい? 主ってのは下のもんが生意気なこと言ったらバシっと叩いてやるくらいがちょうどいいんだ。けど、まあ、アンタがそうしたいってんならそうしてやるけどさ。だけどアンタの事はジョルジオ様って呼ばせてもらう。これだけは譲れないからね」


 まあ、様くらいなら。銀行とかでも「坂崎様」って呼ばれてたし。


「奴らにはアタシから話しとくよ。畏まらなくていいってね。ただし、生意気いうようならアタシが容赦しないとも。何しろアンタはアタシ達の主なんだ。慕われるのはいいが舐められるのは許さない。いいね?」


「ああ、それで頼むよ」


「で、さっきも言ったようにここはアンタにとっても家なんだ。家である以上寝床がなきゃいけないだろ? アンタにはアタシが使っていた船長室を明け渡すからそこでくつろいでな。アッコンまではあっという間だが荷物ぐらい置いときたいだろ?」


「いやいや、船長はロザリアさんだろ? そこをもらうわけには行かない。俺たちは適当な部屋でいいから」


「だーかーらー、それじゃあダメなんだよ。誰が見てもアンタが偉いって事がわかるようにしとかないと」


「そうじゃなくて、ほら、船ってのは合理的に作られてんだろ? 船長室だっていざって時に一番指示が出しやすい位置に作られてるはずさ。俺は船に関しちゃど素人どころか何も知らない。そんな奴がそういう部屋にいるってのは間違いだと思うんだ」


「なるほど、それはジョルジオ殿にも一理ありますな」


 ダリオが感心したように口をはさんだ。


「アンタ、なんにも考えてないフリして結構考えてんだね。確かにアンタの言うとおりさ。なら代わりといっちゃあなんだけど、船尾にある父さんの部屋を使ってもらおう。元々アタシがそこを使うつもりだったんだけどね」


「ああ、それでいいよ。あ、それとヒュリアは女の子だし、ロザリアさんの部屋に一緒に寝かせてもらえないかな?」


「ま、それがいいだろうね。アタシの部屋なら男どもがこないし」


 ゾクリと背中に殺気を感じる。間違いなくヒュリアの物だ。だがここで負けちゃあだめだ。頑張れ、俺。それより、とロザリアは俺の耳元に口を当て、囁いた。


「アンタ、覚えてるかい? あの一騎討ちにアンタが勝ったらどうなるかって話」


「え? なんだっけか」


「またまた~とぼけちゃって。このアタシがアンタの女になるって約束しただろ? 」


「え?」


「照れなくていいよ。アタシはこう見えても箱入り娘でね。親方である父さんの娘であるアタシに手を出すような男は誰もいなかったのさ。そんなことすりゃ魚の餌にされちまうからね」


 それって俺が魚の餌にされるってことじゃないですかー。


「ふふ、アンタもウブだねぇ。今夜忍んで行くから綺麗に洗っとくんだよ?」


「あ、そういうの無理! だって、ほらシェラールは俺がいないとまともに話せないしさ、別々だとまずいと思うんだ」


「そんなのこのヒュリアって子も一緒だろ? この子はよくてそっちの兄さんがダメってのはおかしいじゃないか」


「拙者のことならご案じめさるな。言葉の壁など気合でどうにでもなるでござる」


「ね? この調子だよ? 意思疎通とか無理だから。それにヒュリアは器用な子でね、何でもできるから言葉だってきっとすぐに覚えるさ」


「妾とて話すことができぬわけではないのじゃぞ、ジョルジオ様。それに兄者はともかく身の回りの世話をするものとして妾が傍にいたほうが何かと有益であろう。無論あっちの世話も含めてじゃ」


 何この兄妹。子供の頃時代劇見て育ったの?

 

「随分と古めかしい言葉を使うじゃないのさ。ラテン語使えるところを見るとまんざら教養がないわけでもなさそうだねぇ」


 え? あれがラテン語なの? 完全に侍言葉だよね? しかもなんか上からだし。ヒュリアちゃーん、君、もっと可愛らしい話し方してたよね?


「ま、そういうことじゃな。そなたがわざわざ夜這いに及ばずともジョルジオ様の世話は妾がする」


「ちょっと待ちな! さっきから黙って聞いてりゃ好き勝手なこと言いやがって。いいか、ジョルジオ様はね、アタシのような女が好みなんだよ! 何しろ一騎打ちの最中に口説かれたんだからね」


「全く、主殿のゲテモノ好きにも困ったものじゃ。それはあれじゃ、美味い料理ばかりでも飽きるのでたまには不味いものでも食ってみようかと言う、ちょっとしたアソビゴゴロじゃ」


「なーにそれ、小娘、アンタが美味くてアタシが不味い飯だとでも言いたいのかい?」


「それ以外のことを言うてるように聞こえたかの?」


「はん! そんな胸すらも育ちきってないガキのくせに。女ってのはねアタシみたいに立派な胸があってこその女なんだ。そんなまな板みたいな体でジョルジオ様が満足するとでも? ねぇ、ジョルジオ様」


 ぎゅうっと胸を押し付けてくるロザリアさん。ああ、俺の人生でこんな場面があるとは。


「ムネムネうるさいのう。胸しか取り柄がないのであれば仕方がない事じゃがな。言っておくが妾はまだ14じゃ。2年もすればお主よりも豊満に育っておる。妾は体だけでなく裁縫も料理もできる。女の嗜みならお主には負けはせぬ。それにこの身はジョルジオ様に捧げると決めておるのじゃ」


「アタシだってそんくらいの事できるんだよ! 海の女をなめんじゃないよ!」


「まあまあ、女比べでもなんでもしていいから。とにかく俺はシェラールと同室だ。それは譲れない。そして君たちは二人で一緒の部屋ね。これ命令だから」


「では私も同室ということでよろしいかな。ジョルジオ殿?」


「そりゃあ構わないですけど、俺なんかについてきちゃっていいんですか?ダリオ殿」


「修道院で読書してるよりよほど楽しそうですからな。これも神のお導きですよ。はっはっは」


 喧嘩を続けている二人に変わり、副長のルチアーノが俺たちを部屋に案内してくれた。甲板の一層下にあるその部屋には小さいながらも船尾に向けて窓がついており、明るく快適な部屋だった。ルチアーノが若者を使いシェラールとダリオのベッドを運び込む。もっともベッドと言ってもクッションの利いたマットがあるわけでもなく、木枠に藁を詰めてシーツをかぶせただけの物だが。

 元々相当な広さがあったこの部屋はベッドが3台入ってもまだまだ余裕がある。元から備え付けてあったテーブルと椅子を配置し直し、長持ちに荷物を整理する。ついでに暑苦しかった鎧を脱ぎ捨て、青い平服に着替えた。


 俺の鎧はシェラールが油を染み込ませた布で拭き上げて丁寧に長持ちにしまう。剣も同じように手入れをしてくれる。ダリオはダリオで自分の鎧の手入れを始めた。

 俺は暇になったので、ルチアーノが持ってきてくれた水差しからカップに水を注いで一杯飲むと窓から景色を眺めた。窓ももちろんガラスが入っているわけではなく、昔の雨戸のような分厚い木製だ。波が高くなっても入り込まないよう、ピッチリと閉じるようになっている。


 船がかき分けた海面が小さな波となり広がっていく様は天気がいいこともあってとても綺麗だ。そう言えばここは地中海、二十一世紀にいた頃に一度は行ってみたいと思っていた場所だ。それがこんな形で達成されようとは。


『なんだかんだでうまくいったみたいですね。』


 突然現れたシルヴァーノ。もうこのくらいの事では驚かないほど俺には耐性が出来ている。むしろ大事な時に消えやがったこいつに卍固めの一つでもお見舞いしてやりたいくらいだ。


『今頃出てきてもおせーんだよ! 』


『仕方ないじゃないですか。復活するのに時間かかったんですから。』


『そりゃあれだろ? お前が見ず知らずのやつに憑依したりして余計な力使ってるからじゃねーの?』


『まあまあ、過ぎたことは言いっこなしですよ。』


『あのね、俺がどんだけ怖い目にあったかわかってる? 女海賊と一騎討ちさせられるわ、いつの間にか海賊たちの主になってるわ、もうね、マジでいっぱいいっぱいだったんだからな!』


『けど、僕の助けなしでこれほどの成果を出せたんですよ? 素晴らしいことだとは思いませんか?』


『思わないね。彼らに対する責任だけで俺の精神は押しつぶされそうなの。一気に従士が100人近く増えたんだぞ! どれだけの重圧かわかんだろう?』


『それはちょっとした城主なみですね。まあ、船も城みたいなもんですし。いいじゃないですか。』


 アッコンの港についたのはそれから2時間くらいしてからの事だ。歩けば半日以上かかる距離が船だとたったの数時間。文明の利器って素晴らしいね。


 港では検問があったが俺が騎士だとわかると何事もなく通してくれた。本来ならあそこで様々な税が課せられるらしいが騎士の特権というやつで払わなくてもいいらしい。

 俺はダリオとロザリア、それに護衛のシェラールとどうしても付いてくると聞かなかったヒュリアを連れて、ダリオの案内に従いジェノヴァの商館を訪れた。このエルサレム王国とジェノヴァ共和国は以前から同盟関係にあり、港湾税の3分の1はジェノヴァの収入になっているという。当然、商館も立派なもので、街の一等地に建っている。


 ダリオはよほど顔が聞くのか、いくつか説明するだけですんなりと価格交渉に入っている。貿易の中継地であったエルサレムが陥落したことにより、南からの産物は値が上がっているという。背に腹は代えられぬとばかり、買えるだけの胡椒を買い込み商館をあとにした。荷物は商館の手で船まで運び入れてくれるそうだ。


「思ったよりは安く買い入れができました。香辛料と言えばアレキサンドリアを抑えているヴェネチアか陸路の終点コンスタンティノープルですからね。そこを経由することなく直接ジェノヴァに持っていければ高値で買い取ってもらえますよ。最低でも10倍以上の価格でね」


「そんなに儲かるものなんですか?」


「ええ、ヴェネチアやコンスタンティノープルでは当然現地の商人たちが利益を乗せますから。ここから直接ジェノヴァまで持っていけば彼らの儲けている額も我々が儲けられるというわけです」


 現代で言えば問屋を通さずに直接販売するようなものか。中間搾取がない分、手間はかかるけど儲けが大きいと。


「でもそれならみんなジェノヴァに売りに行けばいいのに」


「それがそうもいかんのです。そもそも航海と言うのは常にリスクを抱えています。嵐にあって難破したり海賊に襲われたりね。ヴェネチアは大船団を組むことでそのリスクを軽減していますし、コンスタンティノープルは陸路ですからいくらかリスクが少ないのです。なのでその二つの都市が香辛料に関してはほぼ仕切っているといってもいいほどなのですよ」


「なるほどね。ジェノヴァの商人は大船団を組まないんですか?」


「ジェノヴァ人は誇り高いのですよ。効果的だと分かっていても船団を組むなんてことはせずに、自分の腕で乗り切る。これが我々の美学というやつですな。ましてやみんな自分の操船技術に自信を持っていますから、誰かの下につくなんて耐えられない」


「民族性の違いというやつですか」


「ええ、我々はヴェネチア人のやり方をよしとはしません。彼らは政治から貿易まで一元的に行い、非常に効率的な社会を形成していますが、我々ジェノヴァ人に言わせればロマンがない。船乗りがロマンを捨てたら何が残るというのです」


「ダリオの言うとおりさ。ヴェネチアの奴らは決められた通りにしか動けない。だから操船技術だってアタシらのほうが上。でも奴らはその足りない分を仕組みで埋めてるんだ。大船団を組むのもそのひとつ。そこへ行くとジェノヴァの船乗りは凄腕だね。一隻一隻から誇りを感じるんだ。あれが本物の船乗りってもんだ」


 よくわからないがヴェネチアはシステマチックな考えをしていて未熟な部分は全体でカバーする。ジェノヴァは実力主義で人をあてにしない生き方をしているってことか。同じ海に生きる人々でもこうも違ってくるものなんだ。


 そのあと船旅に必要な食料や雑貨の購入をして、街を練り歩く。すでに外は薄暗くなっておりもう少しで日が落ちる時間だ。


 結局船に戻ったのは日が落ち切ったあとだった。飲料水と購入した香辛料、それに食料の積み込みを確認するとロザリアは出航の合図を出す。何でも港に停泊していると税金はかからなくても港湾使用料がかかるそうだ。だから出航して今夜は沖合で停泊するのだという。


 その日配られた夕食は豪華なものだった。香辛料の効いた肉料理に新鮮な魚と野菜を使ったスープ。パンは白いパンで甘みがあり柔らかい。飲み物としては冷たく冷やしたエール酒がついており、食後にワインも供された。聞けば今日は海賊を廃業した記念すべき日であり、お祝いだという事だ。みな、甲板に集まり肩を組んで酒を飲んでいる。


 食事の済んだあと、俺達は船長室に呼ばれた。船長室に併設された広間には大きな机があり、その上に地図が広げられていた。


「航路としてはやはりキプロス周りでクレタまで出て、その後は風を見ながらブリンディシかターラント。で、ティレニア海にでたらナポリかオスティア、そのあとにジェノヴァってとこかね」


 真剣な面持ちで地図を見つめるロザリア。ロウソクの火がゆらゆらと彼女を照らす。副長と航海士も複雑そうな顔で地図を囲んでいた。ここに居るのは他に修道士のダリオとシェラール、そして俺の服をちょこんと掴んでいるヒュリアだ。議題になっているのは航路。どこを通っていくかなのだが単独で航海する以上、ほかの海賊とかち合うのは避けたい。できるだけ安全なルートを模索しているというわけだ。


「で、ロザリア殿、貴方はどの程度海賊に顔が効くので? 」


「ああ、エーゲ海の連中なら問題はないんだ。奴らはアタシ達の強さを知ってる。問題はイスラムの連中さ。やつらはタチが悪い。言葉も通じなけりゃ容赦もないんだ。イオニア海あたりじゃかち合う危険もあるね」


「で、あればクレタで様子見をしたほうがよいですな」


「それしかないね。まずはクレタで情報集めだ。ガンディアの連中は情報通だからね。よし、まずはクレタ島のガンディア港を目指すよ。ジョルジオ様、それでいいかい? 」


「ああ、君に任せるよ、ロザリア」


 それから3日ほど船旅が続く。キプロスと言う大きな島を横目に見ながら船は進んだ。好天に恵まれ、波も穏やかだったので快適な船旅だった。その間、特にやる事もない俺は、同じく暇そうなシェラールを連れてこの大きな船を探検した。元とはいえ海賊船を一人で歩くのはやはり怖いのだ。


 何しろ船長であるロザリアはなにかと忙しいし、ヒュリアも船の女たちを手伝って繕いものや食事の支度に精を出す。ダリオは船中を回っては、手の空いている部署に入り浸り、彼らの武勇伝や船の技術論を聞きながら自分も神の教えを説いてまわる。神に赦されないと思っていたらしい元海賊たちはその説教を真剣な眼差しで聞いている。


 船を回ってみて何より驚いたのが彼らの勤勉さと清潔さだ。船という限られた空間に生きる彼らはとにかく忙しい。操船に忙しい時以外は常に整理整頓や清掃を行う。散らかっていると船が揺れたときに危ないらしい。特に甲板のロープ類は下手をすると足に巻き付きそのまま海に落とされる。神経質にまで整理整頓をするのはそれが命に関わることだからだ。


 この船は元々漕ぎ手だけでも100人は乗れるようになっている。甲板要員まで含めても100人足らずしかいない今は空いた空間が多く、狭苦しさは感じない。皆、のびのびとしているようだ。ちなみにここでの生活用水は全て海水だ。体を洗うのも、床を洗うのもそれこそトイレで尻を流すのもだ。真水は飲み水と料理、それに一部の素材を洗濯するときだけに使われる。船の上での真水は想像以上に貴重なのだ。


 一度、体格のいい漕ぎ手に混ざって船を漕がせてもらったがこれが結構難しい。櫂自体が重たく漕ぐのに力がいるのは勿論だが、号令に合わせて遅れないよう漕いでいくのはひ弱な俺には相当きつい。引越しのバイトもきつかったがそんなレベルではなかった。シェラールはなかなか筋がいいらしく、すっかり彼らに馴染んで櫂を漕いでいる。

 結局早々に漕ぎ手の頭につまみ出された俺は、あてもなくブラブラするしか無かったのだが、これが精神的に結構きつい。みんなが忙しそうに働いている中、独り暇というのは想像以上に耐えられないものだ。何か俺にも出来ることがないだろうか。そう思ってシェラールを連れてロザリアを訪ねたが、散々怒られる羽目になる。


「アンタは船乗りにでもなったつもりかい? アタシ達はね、生まれた時から船と共に暮らしてんだ。素人のアンタに手伝ってもらうことなんか何一つありゃしないんだよ! アンタは騎士なんだ。騎士なら騎士らしくドカっと構えてなっていつも言ってるだろう? いいかい、アンタはアタシ達の主なんだ。何かあったときには全部アンタの責任なんだよ。アンタはそれを肝に命じておけばそれだけでいいんだ。わかったかい? わかったなら二度とあいつらの邪魔をすんじゃないよ!」


 ギュウギュウになるまでお説教をくらい、フラフラと自室に戻る。


「大将、このあと何かあるか? 何もないなら俺は漕ぎ手の連中を手伝ってやりてぇんだが」


 シェラールがとんでもないことを言い始める。なんという事を! 心の友の君まで失っては俺は孤独死してしまう。とは言え、申し出は至極真っ当な物だったので反対できるはずもなく、表向きはあっさりと許可を出す。


「あんがとよ、何もしねえってのも案外苦痛だったからな。いっちょ働いてきますかね」


 ちっ、このワーカーホリックめ! 過労で倒れろ、いやむしろ過労死しろ! さぁて俺は何をしようかなぁ。ネット? そんなものはもちろんない。ゲーム? 一人用のゲームなどないし、チェスとかはあるかもしれないが相手がいない。読書? そもそも本が一冊もない。仕方なしにベッドに寝転ぶ。あれ? おかしいな、目から水が。


 いつの間にか仲間はずれにされていた俺は、なすすべもなくボケっと過ごす。こんな時にこそ相手をして欲しいシルヴァーノはいくら呼びかけても反応なしだ。今まで激動続きだったので不安を感じる暇すらなかったのだが、こうして一人になってみるとものすごく心細い。もしこのまま帰れなかったらどうしよう。オヤジ、心配するだろうな。

 それにあのアパートの家賃や携帯電話代、ガスに水道に電気料金。バイトも無断欠勤でクビだろう。


 いや、帰れないと考えたほうが現実的か。あの幽霊は当てにならないし、奴の言う神とやらはいるのかどうかすら定かではない。いや、タイムスリップに翻訳能力、これだけの超常現象が起きているんだ。神もしくはそれに近い何かは存在するのだ。その神と直接意思疎通を図る手段がないとなれば帰る手段もなさそうだ。

 はは、と乾いた笑いを零してみるもそれで何かが変わるわけでもない。どうやら真剣にこの時代で生きていく事を考えたほうが良さそうだ。

 まず不安なのが俺の身元だ。騎士アレッシオは俺を養子に迎えてくれたが果たしてあのやりとりが世間で通用するものなのだろうか。それに騎士って一体何をする職業なのか。なんとなく戦う人だというのはわかるのだが、貴族のイメージもある。その生態がまったくもってわからないのだ。

 何しろ身分を示しただけで扱いがごろりと変わる。港でも税金は払わなくて済んだし、その従士であるロザリアたちも無税だ。それに、現地の法により逮捕される事もないらしい。やりようによっては大抵の無茶は通せてしまう。物語の貴族といえば決まって悪役だが、これだけ優遇されていればもはや何が悪いことなのかもわからなくなるのだろう。


 しかし騎士か。剣も使えず馬にも乗ったことのない俺に、騎士など務まるのだろうか。


「ジョルジオ様、いるかい? 」


 ドアの外から響く高い声はロザリアのものだ。先ほど叱られたばかりなのでなんとなく会いたくはなかったが居留守を使うのも大人げない。俺ももう24、世間では立派な大人の年齢だ。


「ああ、入ってくれ」


 出来るだけ動揺を顔に出さないよう注意しながら彼女を迎える。椅子の一つを勧めテーブルをはさんで俺も座る。


「さっきは悪かったね。その、シェラールがいたのも忘れてきついこと言ってさ」


「いや、気にしてないよ。それに船の事は俺は何もわかってないから間違ってる時は言ってもらったほうがいい」


「アンタはホントに変わってる。普通の騎士ならアタシは今頃殺されててもおかしくないよ」


「まさか、間違いを指摘されたぐらいで殺すとか、ありえないでしょ」


「いや、それが普通なんだ。騎士とか貴族なんてのは名誉を傷つけられるのを一番嫌うからね。従士に叱責されたなんて日にゃ間違いなく斬り殺すさ」


「そんなもんかね。ま、俺は騎士の方もなり立てだから。どんな時にどういう態度を取ればいいのかすらわからないんだ。何しろ俺を騎士にしてくれた人はそういう事を教えてくれる前に死んじまったからな」


「そういう事かい。だからアンタは変わってるのか。ま、アタシらにすれば付き合いやすくて結構な事だけどね」


「だから正直言うと何をすればいいのかもわからないんだ。かと言って皆が忙しそうに働いてるのに一人でじっとしてるってのも苦痛でね」


 ロザリアは不思議そうに俺を見つめる。


「こんなこといっちゃなんだけどさ、アンタ、騎士になる前は何をしてたんだい? 農民や漁民でも兵士でもないだろう? 何しろ日に焼けてないし、手も綺麗だ。そんな手をしてるのは貴族の生まれってことだ。違うかい?」


 答えに詰まる。俺の仕事? フリーターってこの時代にはもちろんないよな。商家の下働き? それにしちゃあ物を知らない。ああ、だからこそロザリアは俺を、世間知らずの貴族のお坊ちゃんだと思ったわけか。しかし困った、なんて答えよう。


 その時急にドクンと心臓が高鳴り、体の自由が効かなくなる。シルヴァーノか、てめえ、今までどこに行ってやがった!


「まあ、概ねそんなところですよ。僕は十字軍で新たにできた新興貴族の次男でして。家族は皆、イスラムに殺されてしまったのですが僕だけ知り合いの騎士、アレッシオ・マセラティ殿に引き取られたのです。で、そのあとすぐにエルサレムが陥落。脱出した時にアレッシオ殿が討たれ、亡くなる直前に彼の養子として全てを相続したのです。元々屋敷には様々な人種の召使たちがいましたから、言葉もそのおかげで色々話せるんですよ」


「やっぱりそうかい。やっと合点がいったよ。そうだね、それなら世間知らずなのも仕方がないし、ヒュリア達とも普通に話しができるわけさ」


 うんうん、と一人頷くロザリア。ああ、こうして嘘に嘘を重ねて生きていくのか、俺は。


『嘘じゃありませんよ、方便ってやつです。それとも正直に「てへ、実は未来からきちゃった」とか言えば良かったんですか? 』


『そうじゃねーけど、貴族だなんだって言っちゃって身元特定されたらどーすんだよ。』


『十字軍によって新たに作られた新興貴族はそれこそ山のようにいます。イスラムに殺された貴族もね。だから適当に消滅した新興貴族の家名を名乗っておけば、まずバレることはありませんよ。』


『その家名がわかんねーから困るんだろうが! 』


『まあ、万が一聞かれた時は僕の家名、アルベルティを名乗っておいてください。僕の叔父がまさにイスラムに潰された新興貴族でしたから。細かいこと聞かれても対応できますしね。では僕はこの辺で、あとはうまくやってきださいね。』


『ちょっと待てよ! 途中で放り出されても困るって。』


『僕は彼女みたいな気の強そうな女性が苦手なんですよ。それに消耗した力の回復もまだなんです。しばらく貴方の力にはなれなさそうですから自力で頑張ってくださいね。』


 ふっと体が軽くなり、シルヴァーノが俺から離れ、姿を消した。あいつ、大丈夫なのか?


「しかし、アンタってやっぱり高貴な生まれだったんだね」


 いつの間にか俺の隣の椅子に移動したロザリアは俺の手を取り、頬ずりした。


「ちょっと、なにやってんの!」


「いいじゃないか、アンタの手、すべすべして気持ちいいんだよ」


 高貴な生まれ、か。オヤジは確かに世界を飛び回るエリート商社マンだったし、母さんはシチリアの名家の出身らしい。高貴と言えないこともないが俺自体は安いアパートで暮らす貧乏人だ。


「この艶やかな黒髪、整った目鼻立ち、それに華奢な体つき。全部アタシの好みだよ」


 ロザリアは俺の上に跨るように座り、首に手を回す。そして俺の顔を自らの胸に抱え込むように抱きしめた。


「ね、アタシの胸、柔らかくて気持ちいいだろう? 」


 耳元でそう、囁かれる。俺の鼓動はバクンバクンとマックスまで高められ、ムクリと股間が起動する。彼女の股も熱を帯びているようだ。そして顎を持ち上げられ、そこに彼女の美しい顔が迫る。もう、俺のコスモは爆発寸前だ。


 その時、迫る彼女の顔の後ろに何か影が蠢いた。


「あぶない!」


 俺は彼女を抱きかかえ、椅子ごと横倒しに押し倒す。正確に先程までいた位置を光るものが通過したのが見える。


「まったく、せっかちだねぇ」


 頭を打たないように手を差し入れていたのもあって、まさに状況は俺が彼女に襲いかかっているようにも見える。


「あたしだって初めてなんだからさ、もうちょっと優しくしておくれよ」


 状況がまるで読めていないロザリアは顔を赤らめ、そっぽを向いた。


「そうじゃないんだ。よく見てくれ」


 その刹那、再び影の手が動く。俺はロザリアを抱いたまま、ゴロリと一回転した。やはり先程までの頭の位置に短剣が突き刺さっている。


「あん、そんな強く抱きしめられたらアタシ」


 そうじゃない、そうじゃないんだ。確かに俺の腕は彼女の背中と腰をしっかり抱きしめているけれども。右膝は彼女の股の間に挟まっているけれども。そう言えばこの短剣、どこかで見た記憶が。


「ヒュリア! ヒュリアなんだろ? なんだってこんな事を!」


 俺はドアの向こうに身を隠す影に向かって声をかける。俺の下で悶えていたロザリアも事態の変化に気がついたらしく厳しい表情を浮かべて立ち上がり、床に刺さった短剣を引き抜いた。


「小娘、姿を現しな。上等な真似をしてくれるじゃないか」


 姿を現したヒュリアは目に静かな殺気を湛え、身構える。その手には4本の短剣が握られていた。


「ヒュリア、やめろ! お前がこんな事する理由はなんだ!」


 俺は恐る恐るロザリアをかばうようにヒュリアの前に出る。ヒュリアはしばらく身構えていたが、俺があと数歩でヒュリアに届くところまで進むと、パラパラと短剣を床に落とし、突然泣き出した。


「一体どうしたって言うんだ。誰も怪我をしなかったからいいようなものの、大変なことになるところだったぞ」


「だって、だって、ロザリアが抜けがけして、私の知らないところでジョルジオ様を誘惑してたから。頭の中が真っ白になって、気がついたら短剣を!」


「あはは、なんだ、そんなことか。ロザリアは俺に船のしきたりを教えてくれただけだよ」


「船のしきたりって言うのは抱き合いながら教えるものなのですか? なら私にもジョルジオ様が教えてください。こうすればいいんですね」


 ヒュリアは俺に飛びかかり、そばにあったベットに押し倒す。そのままギュッと抱きついてどうあがいても離れそうになかった。


「小娘、私のジョルジオ様から離れな!」


「いやです。この人は私のもの。あなたになんか渡しません!」


「何言ってるのかわからねぇ、言いたいことがあるならこっちの言葉で話しな!」


 ヒュリアはチッっと舌打ちすると、俺から離れロザリアに向き合った。


「お主のような下品な女には渡さん、と言ったのじゃ」


 なぜかヒュリアはラテン語になると毒舌だ。不思議なくらいに性格が悪くなる。


「アタシが下品だと? ガキが言うじゃないか。どのあたりがどう、下品なのか言ってもらおーじゃねーか」


「その物言いじゃ、それにメスの欲望を隠そうともしないその態度。乱れた衣服ぐらい直したらどうじゃ?」


「けっ、お前だってさっきまで盛りのついた犬みたいに抱きついてたじゃねーか」


「妾が犬ならお主は豚じゃな。嫌だ嫌だ、欲望を抑える術も知らぬメス豚がジョルジオ様の御側近くにいるなんて。妾には耐え切れぬ」


「ほう、アタシは豚かい。なら、ジョルジオ様に美味しく召し上がって頂こうかねぇ。犬は犬らしく部屋の外でみじめに吠えてるといいさ。ねぇ、ジョルジオ様」


「流石に豚には羞恥心というものがないな。ジョルジオ様、知っておられるか? 犬は飼い主にとても尽くすもの。食われる事でしか役にたてぬ豚とは大違いなのじゃ。それに犬はたくさんの子をなせるしの」


「どうやらお前とは話が通じないようだね。犬なら部屋の扉の前で番でもしてな! そこでアタシが美味しく召し上がってもらうのをヨダレを流して聴いてるんだね。わかったらここから出て行け!」


「話が通じぬのは貴様の方じゃ。豚。早く出ていかぬと妾の短剣で屠殺するぞ」


「ほう、このアタシを殺す、だぁ? 犬、お前の方こそその貧弱な体から皮を剥ぎ取ってやるよ」


 ふたりの女は殺気を湛えて見つめ合う。まずい、このままではここが殺人現場に! 万が一相打ちにでもなったら俺が犯人にされかねない。そうなれば袋叩きの上に海に捨てられ魚の餌だ。それだけは嫌だ!


「ちょっと待って! ねえ、二人共落ち着こうよ」


「大丈夫さ、この小娘を始末したら続きと洒落こもう」


「ふ、身の程知らずとはこの事じゃな。貴様が妾に勝てるなど万に一つも無いというに」


「だからさ、それじゃ困るんだよ。どっちが傷ついても俺は悲しいし、ましてや死んだりしたら」


「「死んだりしたら?」」


「いや、その、ね、」


「ジョルジオ様、そういうことははっきり言ってもらわねば困るのじゃ」


「ああ、そうだとも。アンタにとってアタシたちがどんな存在なのかはっきり言っておくれ」


「あ~、もうわかった! 二人共俺の大事な人だ! 死なれたら困るし傷つくのも嫌なんだよ!」


 どうだ、これでいいのか! とばかりに大声で叫ぶ。


「ロザリアよ、妾たちはジョルジオ様の大切な人らしいの」


「そうだねヒュリア、あんな大声で愛をしめされちゃ、喧嘩なんか出来やしないね」


「そうじゃな。ジョルジオ様が大切な者は妾にとっても大切じゃ」


「ああ、そういうこったね。アタシ達はこれからもずっと一緒にいなきゃジョルジオ様が悲しむ」


 二人はなぜかお互いに労わりあい、剣を納めた。あれほど憎み合っていたのに女心とはわからないものだ。


「ただ一つ言っとくよ、ジョルジオ様。アタシはこれ以上『大切な人』とやらが増えるのは認めない。いいね?」


「ロザリアよ、その時には妾が始末を付けるゆえ」


「そうだね、ただ、そういう心構えをしておいてもらわないとね」


「それも船のしきたりかえ?」


「いいや、女のしきたりさ」


 そう言い残して二人は部屋を去っていく。ガチャガチャになった部屋はそのままに、まるで10年来の友達のように手を取り合って。ひとり残された俺は後片付けをして不貞寝した。どーすんだよ、俺の起動しちまったアソコは!

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