第24話 松本ーその2ー
――――――――――。
一方、牧田と星野が戦っているころ、松本は建設中の廃ビルのような建物に入り敵におびえていた。
というのも実は松本は見てしまったのだ、牧田たちが戦っているほうへ向かっていく二人組を。
しかもその二人組は確実に松本を見た。
見たうえで無視したのだ、おそらく格下で相手にするまでもないと。
(ど、どうしよう。
このままじゃ牧田君も星野さんもやられちゃうよ…。
でも僕じゃどうしようもできない…。)
「松本君、大丈夫ですか?」
ふと、松本の不安を感じ取ったヘクトールが話しかけた。
「だ、大丈夫じゃないよ!
どうしよう。き、き、きっと僕も殺されるんだ!」
松本の震える声がむなしくビルのなかを反響する。
「いいえ、大丈夫です。
私が契約したのは紛れもない君、松本君なんですよ。
もっと自信を持ってください。」
「そ、そんなこと言われても…。」
「いいえ、あなたは賢い人です。
いわゆる”キレる”ひとです。
そして何より私の欲である”賭博欲”と相性のいい強運の持ち主です。
勝てます。
みんなを助けられます。
あなたには逆境を跳ね返す秘められたチカラがあるのです。」
「そんな、別に頭よくなんかないよ。
それに強運だなんて…。
どっちかと言えば僕はダメダメでいつも転んでいるような運のない人間だよ…。」
松本はヘクトールの励ましをことごとく否定する。
「いいえ松本君、君は強運です。
それは契約する前に君を観察してた私が言うのですから間違いありません。
例えばよく転ぶといっていましたけれど、あれは転ぶが正解なのです。
もし転んでいなかったら今頃松本君は死んでいます。
どういう意味かと言いますと、転ばずそのまま歩いていたらトラックに轢かれているし、スリに合っているし、車に轢かれているし、バスに轢かれてるし、とりあえず乗り物に轢き殺されてますね!」
「え?ほんとに?」
知らなかった真実を聞かされ少し明るさを取り戻す松本。
「それに友達とかとやるゲーム。
トランプでも麻雀でも人生ゲームでも、あなたは絶対に負けていませんでした。
あなたには先を見通す力と、それを実現させるだけの運があるのです。
だから大丈夫。
今回のこれもゲームだと思ってください。
敵から逃げて生き残り、敵を倒したら勝ちというゲームです。
どうですか?」
「・・・なるほど。
ゲームかぁ。
それなら勝てる気がするよ!
さっそく作戦を考えないと!」
そう言ったとき、外が一瞬光った。
まるで目の前に雷が落ちたかのような眩しさだった。
「・・・。」
周りを気にせず松本は考えた。
自分の能力とヘクトールの賭博欲。
得るべき能力はなにが最もいいのか。
―――――3分後。
「松本君、本当にこの願いでよかったのかい?
しかも2つも願叶えちゃって、あとで牧田君に怒られますよ?」
「いいんだ!
これは牧田君のゲームじゃない。
僕のゲームだ。
ゲーム?いやギャンブルだな。
それにヘクトールも”いける”って顔してたじゃん!」
考えた結果松本はヘクトールに願いを2つ叶えてもらっていた。
「ふふふっ、ばれていましたか。
でも勘違いしないでほしいのは、”いける”ではなく”楽しそう”ですから。」
「僕もそう思っていたよ。」
「やっぱり我々は似た者同士ですね。
ギャンブルが大好き。」
ガラガラガラ
建物の入り口が激しく崩れた。
「あーあーあー、おいクソガキさっさと出て来い。
俺はあっちの強そうなガキと戦いに行きたいんだ。」
隠れている部屋から松本は顔を出した。
そこにはイカツイ男がいた。
「大丈夫です、松本君なら勝てます。」
「う、うん。」
松本は部屋から出て男の前に姿を現した。
「あーあーそこにいたかガキ。
めんどうだから3秒で死ね。」
そういうと同時に赤髪の天使、隼人は松本に向かって突っ込んだ。
「松本君!今ですよ!」
「は、はい!」
松本はとっさに両腕を前に出し、親指と親指、人差し指と人差し指をくっつけ、両手で三角をつくった。
「開け! ギャンブル―ム!」
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