第23話 援軍


「あーあー、姉さんいい年してこんなガキどもにボコられてるとかウケるんですけど!」


「・・・・。」


自分の仲間をバカにしている感じの悪い天使と、終始無言気味の天使が援軍としてやってきたのだった。


(絶望的だ…。)


唯一の攻撃役、星野が倒されもう一人の松本は戦闘経験皆無。


つまり牧田ひとりで新たな天使共2人を相手にしないといけない。


しかも牧田の能力は攻撃タイプではない。


どちらかというとサポート役に適した能力だ。


そしてなにより敵の能力がよくわかっていない。


おそらく一人は電気系…、もう一人は謎のままだ。


逃げるのがベストだが星野を見捨てて帰るわけにも行けない。


・・・最悪の状況だ。


「おい!そこのガキ!

うちの姉さんボコった奴はだれだ?

おまえか?この女か?

それとも、その辺にいたもう一人のガキか?」


大柄の男は牧田に話しかけてきた。


真っ赤に染まった短髪の髪をワックスでこれでもかというくらい逆立てている。


服装はなぜか武闘着。黒帯を腰に巻いた、いかにも肉弾戦が得意そうな男だ。


偏見だがおそらくそんなに頭はよくなさそうだ。


一方、無言で隣にたたずむもう一人の男。


大柄の男とは対照的にかなり小柄だ。


身長は140センチくらいで細身の体をしている。


全身を黒のマントで覆い黒のフードをかぶっている。


そして白の仮面をかぶっているため表情は見えない。


ハロウィンのパンプキンみたいな表情の笑みを浮かべる仮面はただただ不気味であった。


「おい!聞いてんのかガキ!」


さすがに相手がいら立ってきたようなので答える。


「その女を倒したのは俺だ。」


星野に敵意を向けられると困るので牧田一人で倒したことにした。


「ふーん。そうかそうか。

じゃあここでお前も死ね。」


(まずいっ!!)


作戦も何も考えていない牧田。


そんな牧田に大柄の武闘着男が攻撃しようとしてきた。


ガッ!!


その刹那、大柄の男の腕を横の全身黒マントがつかみ引き留めた。


「あぁ?なんだよ。」


「・・・・待て。

もう一人いる。

隼人 (はやと)そっち行け。」


「あーあーあー。

しょうがねーな、兄さんには逆らえねえぜ。」


そういって”隼人”という名の大柄の男は建物のほうへと走っていった。


(しまった!! 松本を巻き込むわけにはいかないのに…。

くそっ!!)


自分の無力さと松本を連れてきてしまった後悔にイラつく牧田。


しかしあくまでも冷静さを欠いてしまったら元も子もない。


牧田の鼻を砂ぼこりの乾いた匂いがかすめる。


それのおかげかはわからないが、牧田はイライラを収め冷静さを取り戻した。


彼自身、自分の武器は冷静さとそれに応じた場の分析能力だと理解している。


「・・・どういうつもりだ?

2対1で攻撃したほうが効率も勝率もいいはずだ?

どうしてわざわざ1対1にする必要がある…?」


牧田は疑問を投げかけた。


「・・・君に興味ある。

姉を倒す力と知能。

・・・おもしろい。

それだけ。」


「は?

それなら別に2人でかかってきてもいいだろ。」


「・・・・弟嫌い。

うるさい。

それだけ。」


「・・・・。」


ちょっぴり隼人がかわいそうに思えたが今はそれどころではない。


(敵はひとりになった。

氷天使は倒れている。

他に援軍は来なさそうだ。

つまり俺がとるべき行動は・・・。)


「リリット!!」


全体の周りの物質の運動をゼロにし、無敵状態(仮)を作り出した。


そのまま牧田は全力で逃げ出した。


「こっちまで来てみろ根暗マント!!

お前じゃ俺を倒せねえよ!!」


精いっぱいの煽りをかけて逃走する牧田を、黒マント男はただ茫然と見つめその場に立っていた。

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