第18話 六感
「そう、賭博欲。
いわゆるギャンブルってやつですよ。
みんな大好きでしょ?」
ヘクトールが自信満々に当たり前の情報を話した。
「そんなのわかってるよ!
そんなんが何の役に立つんだって聞きたいの!
そもそも、こんな優等生がちょっとイキってアクセサリー着けた陰キャ見たいな松本がギャンブル?賭博欲?
悪魔が契約するのって、そういう欲を持っていそうなやつを選ぶんじゃなかったのかよ?
お前見る目ないんじゃねーの?」
残ってたイライラをぶつけるかのように牧田はヘクトールに疑問をぶつけた。
「確かに、松本君はそういう感じに見えなくもない。
がしかし。そういう見た目がどうとか、こういう行動してるから性格こんなんだろうな、とかはギャンブルの世界じゃ全く役に立たない。
大事なのは”第六感”ですよ?
私、”賭博欲の悪魔”ヘクトールは松本君こそ契約すべき人間だと”第六感”で感じました。」
「はぁぁぁぁあああ?
論理もクソもないただの直感?
もしこいつに素質がなかったらどうするんだよ?」
「ギャンブルは楽しむものです。
破滅もまた面白いじゃありませんか。」
「お前はそれでいいけど、俺は命狙われてるんだぞ!?
少しでも強そうなやつと手を組みたいんだよ!
なのに、」
「牧田ぁ、まあ待てよぉ。」
二人のやり取りにルシウスが割って入った。
「確かに、牧田の言い分はよぉーく分かる。
昔の俺様にそっくりだぁ。
俺様も確かな根拠もがない”第六感”なんてものはクソだと思ってたぁ。
だがなぁ、侮れないぞぉ?
なんてったって学園首席の俺様を首席から引きずり落した唯一の存在だぁ。
こいつの第六感は、なかなかに脅威になると思うぞぉ?」
(そういえばそんなこと言ってたな。)
ルシウスの言葉が牧田を冷静にさせた。
「ま、まあいいだろう。
その代わり邪魔だと思ったら見捨てるからな。」
「牧田君ありがとう。
松本君は僕が責任をもって立派なギャンブラーにしてみせるよ!」
「こっ、こちらこそよろしくお願いしますヘクトール。」
(立派なギャンブラーって、それでいいのか?)
心の中でささやかな突っ込みを入れつつ牧田は口を開いた。
「おい松本、悪魔が願を叶えるって話に戻るがお前ちゃんと考えてるんだろうな?」
「い、いえ。
どんな願いをかなえてもらえばいいのかさっぱりで…。」
「いいか、頭のいい俺は気が付いていたが、くれぐれも”単発の願い”だけはするんじゃねえぞ?」
「・・・どういう意味?」
松本は軽く頬を膨らませながら首を傾げた。
(ぶりっこみてーなリアクションすんな気持ちわりぃ。)
「いいか、願い事は3つしかできない。
当然、くだらないお願い事は絶対にしてはいけない。
そして、願い事は大きく分けて2種類ある。
それが”単発の願い”と”永続の願い”だ。
”単発の願い”の例としては、”この宝くじで一等を当てたい”みたいな願いだ。
これはその場限り、願いを叶えてもらって終わり。
それに対し”永続の願い”の例としては”宝くじの当選番号がわかる能力が欲しい”だ。
バカのお前でもわかるだろ?
当然、後者のほうがいいに決まっている。
だから”単発の願い”だけは絶対にするなって話だ。
分かったか?」
「う、うん。
分かったよ牧田君。」
さすがの松本も理解したらしい。
「おぉっとぉ。牧田ぁ。
そこに気づくとはさすがだぁ。
だが、実は話してなかった契約のルールがあったことを俺様は今思い出したぁ。」
「はぁ?
ルシウスお前わざと隠してただろ?」
「まぁ、どっちでもいいじゃねえかぁ。
お前の言う通り”単発の願い”はそれっきりでもったいない気がするが実は特典があるんだぁ。」
「特典?」
「特典?」
牧田と松本は首を傾げた。
「そうだぁ。
”単発の願い”はそこそこ無理そうなお願いでも叶えられることがあって、しかも代償がない。
つ・ま・り、ココ一番ってとこで大きな願いを叶えたいときに有効ってことだぁ。
例えば、死ぬ瞬間とかなぁ。」
「なるほど、頭の隅に置いておくよ。」
・・・・・・・・。
「あ、あのぉ、これからどうするんですか?」
松本が牧田に聞いてきた。
「そうだな・・・。
とりあえず天使に遭遇したらどうするかとか作戦でも考えるか。」
「そ、そうで」
「あの!話に割ってすいません!
今、他の悪魔から連絡があってこの近くで天使に追われているそうです!
助けに行きましょう!!」
ヘクトールが少し大きめの声で言った。
「・・・行くか。
悪魔の絶対数が減ると困るのは俺たちだ。
松本、お前は俺の後ろで天使との戦いを見ておけ。」
そう言って牧田は立ち上がり部屋のドアを開けた。
(なんだかんだで牧田君って優しいよな…。)
松本も立ち上がり牧田についていった。
「よし行くぞ!」
「は、はい!」
「場所は浅沼工事現場の近くだそうです。
急いでください!」
二人は家を飛び出し現場に向かうため走り始めた。
――――。
1、2分走ったとこで牧田は一つ疑問をぶつけた。
「そういえばルシウス。」
「なんだぁ?」
「ヘクトールはああやって他の悪魔から連絡が来るのになんでお前は来ないんだ?」
「俺様は格下は相手にしたくないんだぁ。
だから少なくとも俺様と同等のヘクトール以外は俺様と連絡が取れないようにしてある。」
「やっぱりお前性格悪いな!」
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