第11話 観取(前編)
家に着いた牧田は真っ先に温かい風呂に浸かった。
「はぁぁ、疲れたぁぁぁ。
でも楽しかったぁぁぁ。」
雨でぬれて冷えた体を温かいお湯が包み込む。
まるで高級ベッドにくるまってるかのような気持ちよさがそこにはあった。
「ほぉ、死にかけてなお楽しいという言葉が出るとは、なかなかな奴だぁ。」
「わっ!!
ルシウス、お前風呂場にまで出てくんじゃねえよ!」
「なに恥ずかしがってんだぁ?
思春期かおめぇはよぉー。」
牧田の目の前に体育座りをする真っ黒な影、ルシウスが現れた。
「は?別に恥ずかしがってなんかねえよ。
てか、急に出てくんなって。
びっくりするじゃねえかよ。」
「まぁいいじゃねえか、たまにはよぉ。
少し聞きたいことがあってなぁ。」
「なんだよ、お前から俺に聞きたいことがあるって珍しいな。」
真っ黒なシルエットだけで表情が無いからよくわからないが、割とまじめな口調からそういう内容なのかと思った。
「牧田ぁ、お前好きな女とかいねぇのかぁ?」
ブッ!
「あまりの予想外さに噴出しちまったじゃねえか!
クソくだらねえこと聞いてんじゃねえよ!」
「なんだぁ、その反応はいるって感じだなぁ?」
「い、いねえよ別に。」
「まあ、そんなことに俺様は1ミクロも興味ねぇ。
本題に入らせてもらうぞぉ。」
(いちいちクソむかつく野郎だな。)
数日一緒にいてこれが悪魔のコミュニケーションのとり方なんだと割り切って、いちいち愚痴るのをやめた。
「牧田ぁ、お前どのタイミングであのベルとか言うやつの能力がわかったんだぁ?
俺様は最後までわからなかったぞぉ。」
「あ、ああ。あいつとの戦いのことか。
はじめにやつの攻撃が”光”に由来するものかもしれないと思ったのはビルの間に入ってすぐの時だった。」
「ほぉ、だいぶ早いじゃねぇかぁ。
俺様はずっとよくわからないビームを撃ってきてるものだとばかり思ってたぞぉ。
どうやって分かったんだぁ?」
ルシウスが全く分かってなさそうだったので、牧田は普段からのイライラを発散するかのようなドヤ顔で語ってやることにした。
「まぁ、ビルの間に入った時点では疑惑程度だったんだ。
街中を走って逃げていた時は攻撃が全く見えていなかった。
ルシウスが避けてくれてコンクリの地面に穴が開いたのを見て、初めて攻撃されていたことに気が付くレベルだった。
でも、ビルの間に入って攻撃されたとき、なぜかその攻撃は見えたんだよ。
つ・ま・り、今まで全く見えなかった攻撃が見えるようになったのには、何か理由があるのではないかと仮定した。
そして、その理由は環境が変わったことによるものではないかと仮定した。
ビルの間に入ったときに環境が大きく2つ変化していたことに気が付いたか?」
「い、いやぁ。覚えてないなぁ。
あの時は敵の攻撃が来たらお前によけさせることに集中してたからなぁ。
まあ、あの近距離じゃあどっちにしても避けられなかったがなぁ。
で、何が変わったんだぁ?」
「1つ目は雨が降り出してきた事だ。
これによって太陽の光がさえぎられる。
そして、もう1つはビルの間に入ったことによって周りの光があまり入ってこなかったってことだ。
この2つから、敵はこの環境に起因して能力が弱まったと仮定できる。」
「はぁ、なるほどなぁ。
でもそれだけじゃ別の能力の可能性もあったんじゃないのかぁ?」
「そのとおりだ。
雨が降る・ビルの間のじめじめしたところに行く、つまり”光量”でなく”湿度”によって敵の能力が低下していた可能性もあった。
さらに、ビルの間は無風状態。
”風量”に起因するものだったかもしれない。
この時点で俺は、敵の能力が”光・炎・風”のいずれかに絞っていた。
だが、ここでコンクリに穴が開いたことを思い出した。
俺は考えた。
果たして炎にあそこまでの貫通力を持たせられるだろうか、と。
もし俺が炎の能力を得たらそういう攻撃法にはしない。
炎だったらもっと効果的な戦い方があるからな、少なくとも貫通力を持たせたりはしないだろうな。」
「炎だったらどういう感じで戦うんだ?」
「炎ならまず相手が逃げられないように炎で敵の周りを囲むだろ?
そのまま火力を上げて敵の脱水症状を狙う。
そうすればいくら悪魔の力で避けれるといっても、避けようがないから敵を倒せる。
つ・ま・り、そうしてこないってことは敵がよっぽどのバカか炎の能力じゃないってことだ。」
「ほぉ、なるほどねぇ。
それでお前はどうやって”光”の能力だとわかったんだぁ?」
「それは、、、実は分からなかったんだよね。」
「・・・・はぁ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます