第10話 おまけ


激しい雨の中、牧田は家に向かって全力疾走していた。


「やべえ風邪ひいちゃうよ。」


パーカーを頭から被り少しでも濡れないようにしていた。


「おい牧田ぁ、お前さっきまではあんなに頭の回転よかったのになんで今はそんなアホなんだぁ?」


「は?どういうことだよ。

パーカー頭から被って濡れないようにするのがベストだろ。」


「さっきの能力使えばお前1滴も濡れずに帰れるだろぉ?」


「・・・たしかに。」


ルシウスの案がベストであるのは明白だった。


「”リリット”」


そう唱えると牧田の周り1センチほどの雨粒がとまった。


その場にたたずむ牧田は全く濡れない。


代わりにまた耳が聞こえなくなった。


「おぉ、すげぇ!!めっちゃ便利じゃん!」


そんな牧田を見て爆笑しているものがいた。


ルシウスだった。


「ハハハハハっ、牧田ぁお前やっぱりアホだなぁ。

アホすぎる。

まぁ、この笑いも悪口も聞こえてないようだけどなぁ。」


ルシウスが後ろで笑っているのに気づかず、牧田はまた家に向かって走り出した。


その直後だった。


「うわっ、どういうことだよこれ!!」


そう言って牧田は不思議そうに能力を解除した。


「おいルシウス、どういうことだよこれ。

めっちゃ濡れるじゃねえか。

しかも普通に走るより濡れたんだけど。」


見ると牧田は顔から足までずぶ濡れになっていた。


「いいやぁ、問題ない。

ただお前は、お前自身の周りの雨粒を止め続けた。

すると、お前の目の前には雨粒が大量に集まって、水の膜みたいなものができる。

そこに自分から突っ込んだだけだ。

俺様の罠だとも気づかずになぁ。」


「うっ…。この悪魔め…。」


「悪魔ですけどなにかぁ?」


「・・・・・帰る!!」


茶化すルシウスを無視して牧田は全力で走り出した。


(少しでもルシウスのことを信じた俺がバカだったぜ。)


その後も続くルシウスのどうでもいい茶化しを無視しているうちに家に着いた。

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