第2話 破棄


ここまでが昨日の話であれからルシウスには会ってない。


とりあえず叶えてもらう願いを考えるか。


まあ、もうすでに一つは決まっている。


”不老不死の体”を手に入れることだ。


とりあえず死にさえしなければ楽しそうなことが見つかるかもしれないしな。


これをお願いしよう。


「おいルシウス、叶えてほしい願いができた。」


すると俺の影が地面からはがれ立ち上がった。


「おぉ、さっそくお呼びかぁ?」


「ああ、叶えてほしい願いがある。

俺の体を不老不死にしてくれ。」


(いったい俺の体はどうなるんだろうか・・・。)


ちょっとだけ怖かった俺は目をつぶって願いが叶うのを待っていた。


「・・・フフッ。

ハハハハハハハハハハッッッ。」


ルシウスが突然笑い出した。


「ど、どうしたんだよ。

もう終わったのか?」


「バァーカ、そんな願い叶えられるわけねえだろぉが。」


「・・・は?」


「だーかーらー、無理だって言ってんのが!

言語処理力低すぎかよ。」


「言ってる意味くらい分かるわ!

いや、でも、だって、お前昨日何でも願いを3つ叶えてやるって言ってたじゃねーかよ!」



「あぁー、あれは願いを何でも”俺様ができる範囲で”叶えてやるっていう意味だ。」


「おい、おもいっきり詐欺じゃねえかよ。

俺は今の生活がクソつまらないからお前の契約に乗ったんだ。

それなのに、いざ叶えてくれって言ったら無理ですって?

そんなのきいてねえよ。

契約は無しだ。今すぐ切る。」


「お前が聞いてこないから契約の詳細を言わなかったまでだぁ。

ちなみに契約を切るというなら契約違反ということで代償を払ってもらうことになるがいいのかぁ?」


「代償ってなんだよ?」


「”死”だ。」


「はぁ、マジであり得なさすぎる。

ヒトがすることじゃねえ、悪魔だ。」


「あぁ、俺様は悪魔だけどなにか?」


「・・・・・・・。」


「頭のいいお前ならもうわかるよなぁ?

なんの願いも叶えてもらえずに今この場で死ぬのか、願いを3つ叶えてから死ぬのか。」


「それは後者だけど…。」


「だろぉ?」


「・・・だがな、お前は一つ勘違いをしている。」


「あぁ?何を勘違いしてるってぇ?」


「俺はこの生活に飽きている。

そこでお前が現れた。

しかし、何でも願いをかなえてくれるって言いたにもかかわらず、大した願いも叶えられそうにない。

このまま俺は今と変わらずに、この人生というゲームを最強ステータスでクリアするつまらない毎日を過ごさなければいけない。

それはごめんだ。

なに一つおもしろくない。

クソゲーだ、つまらなさすぎる。

つ・ま・り、俺はいつ死んでもかまわないってことだ。」


「ほぉー、人間風情がなにを言うかと思えば。

じゃあ死んでみろよ。

俺様はお前らと違い長い年月生きているから知っているぞぉ。

人間に限らずだが、すべての生物に共通して存在する恐怖、それが”死”だぁ。

断言しよう、死を恐れず死ぬことはお前にはできない。」


「こっちこそ、悪魔風情のお前に人間の気持ちがわかったようなこと言われたくないね。

まあ、その辺のゴミ共はそうかもしれないが俺は違う。」


そう言って牧田は部屋の窓を開けた。


「いくらここが2階でも、頭から落ちれば即死だよな?」


「あぁ、即死だけどそれがどうしたぁ?

どうせ死ぬことはできない。」


「そうかよ、じゃあ俺はここで死んで天国に魂をお渡ししてくるわ。」


牧田は窓の淵に立った。


そしてそのまま体の重心を前に傾けた。


重力によって牧田の体は頭から落ちていく・・・はずだった。


しかし気づくと視界に広がるのは庭のコンクリートではなく部屋の天井だった。

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