第1話 契約


人生はゲームだと思っている。


日々起こる問題をどう攻略するか、自分の望みをどう叶えればいいのか、それをみな考えている。


そんな必死にがんばってるやつを見るとかわいそうだなって思う。


そういうのを楽しめるのはいわゆる”できない”奴らだ。


できないから問題をクリアした時の達成感が得られ、その結果楽しめる。


だが、俺は違う。


俺は”できる”奴だ。


一般のやつらが努力する時間の何十倍、何百倍も短い時間で物事を習得し攻略してしまう。


だから努力だとか達成感とかとは無縁すぎる。


ロールプレイングゲームで魔王を倒しに行くのに初めから最強ステータスのようなものだ。


なにも楽しくない。


そんな俺、牧田 巧|(まきた たくみ)は最近おもしろいものに出会った。


いや、ものというかヒトというか生物というか。


まあその辺はどうでもいい。


事が起きたのは昨日の夜のことだ。


―――――。


突然、俺の”影”が地面からはがれ、立ち上がった。


部屋で本を読んでた俺は一瞬驚いた。


だが普段の生活に飽きている俺は何とも興味深かった。


そしてその影が俺に話かけてきた。


「おい牧田、俺様は悪魔だ。

お前の願いを”何でも3つ”叶えてやる代わりに、お前がもし死んだときはその魂を悪魔に引き渡すっていう契約を結ばないか?」


唐突な展開に困惑したがおもしろさが上回った。


「あぁ、いいだろう。

俺はもうこの世界に飽きていたところだ。

契約する。」


詳しいことは聞かなかった。


死んだ後のことなんてどうでもいい。


ただ今が楽しいと思えるようになるならそれでよかった。


「クックック、ありがとよぉ。

じゃ俺はお前が死ぬまでこの影に潜って共存していくから、よろしくなぁ。

俺様の名は”ルシウス”だ。

叶えたい願いがあったらまた呼んでくれ、じゃあな。」


そういってルシウスとかいう悪魔は俺の影に潜っていった。


―――――――――。


ここまでが昨日の話だ。


どうだ、この世界が少しだけ楽しそうになっただろ?

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