第24話 巨乳少女の策略
小鳥遊(たかなし)がナンパしたおっぱいの大き過ぎる女子高生、水倉メイと、ラノベ作家をやっている俺の従兄弟が知り合いだったーー。
水倉メイは、にいにの頭からその大き過ぎるおっぱいを下ろし、今度は肩に乗せ始めてムニュムニュと揺らした。
「そのマッサージは肩凝りに効かねー。柔らかいから」
「そんな事は分かってますよー、ただ、胸が重いからどっかに乗せてると私の方がラクなんだよね」
「だからって俺を乳置きに使うな。机の上にでも乗せとけって
でも、ちょっと待て。
さっきにいには2、3歳年下なだけの女子中学生と付き合っている俺を犯罪者呼ばわりしていたが、こっちの方がよっぽど犯罪じみてるじゃねーかよ?
「水倉は、元々俺のラノベが好きでさ。ネットで出回ってた出版社の授賞式の写真に写ってた俺を見たんだとさ」
俺の疑念を先回りしてそれを晴らそうとするかのごとく、にいには説明した。
「そう! 写真で照画(てるが)センセーの顔を特定して、S駅近くの本屋によく行くって情報も察知してたから、もしかしてと思ってたの!! 顔を見た時この人だ! って確信したから」
「話しかけたっていう訳ですか……」
「あったりー!!」
水倉メイは馬鹿だった。
いや、別に巨乳キャラに馬鹿が多いという2次元とかのイメージが先行してそう思ったという訳ではなくて。
いきなり話しかけたら拒絶されるという選択肢はハナから頭に無かったのか。
その点ちょい、小鳥遊に似てるようで、まあ戦略があるか無いかで言うと似てないのだが。
だけど、28歳でいい年頃、しかもおっさん体型のにいにと巨乳の女子高生って、組み合わせ的に何というか生々しいんだよな。
水倉メイは、今度はにいにの膝の上に座って、おっぱいをパソコンのキーボードに乗せていた。
まさに猫がよくやる仕事の邪魔の仕方である。
「おい、邪魔」
「そう?」
(この2人、付き合ってんのかな……)
当然と言えば当然な俺の疑問をまたもや見透かすかのように、にいにはこちらを向いた。
「言っとくけど、コイツとは何にもないからな」
「……そっか」
何にもない割にはおっぱいあしらいが上手いんだが。
まあ俺はにいにを信じておく。でも、何のために家に出入りさせてるんだ?
「ーーって、おい! デリート押そうとしてんじゃねえよ!!」
にいにが、相変わらず膝の上に乗ったままの水倉メイの腕を掴む。
「センセー、でもこのゲンコウいまいちだよ?」
「素人のお前が言うな」
「素人だから言うんだよー!」
そう言って彼女は俺を見据え、
「私、照画センセーのペットなんだ!」
と、誇らしそうに宣言した。
その情景を黙って見守る俺に、にいにはわざと敬語を使って言う。
「この人ね、馬鹿なんですよ……」
「ああ!! ひっどーい!!!」
水倉メイは報復としておっぱいでキーボードをガチャガチャと動かした。
「お、おまえーー!!」
「…………」
「馬鹿なんですよ」。
まあ、馬鹿なんだろうよ。
でも、このセリフで、いくらなんでもそこまでカンの鈍くない従兄弟(俺)はにいにが水倉メイを大切にしている事が分かってしまったのであった。
落ち目のラノベ作家と、それなのにいつまでもついてくる猫みたいな巨乳の女子高生。
悪くない組み合わせかもしれないと俺は思った。
※※※
水倉メイが買ってきてくれたスポーツドリンク風の甘めジュースを飲みながら、休憩を終えたにいにはまた机に向かった。
彼女、今度は仕事の邪魔をしないらしい。
馬鹿猫にも、飼い主の心の機微が分かるのだ。
しかし俺にとっては良いタイミングだった。
水倉メイの目に、小鳥遊はどんな風に見えたか。
彼女がにいにの事を好きなのは自明の理だが、大人しく肩凝り用の薬を受け取ったという事は、少なからず小鳥遊に好意を持ったんじゃないのか。
まあ、別れ際に「もう2度と会う事もないけど!」などという捨て台詞も吐いていたが。
出されたお菓子をもぐもぐ食べながら、水倉メイとその時の話をする俺。
「そっか、あの子、小鳥遊くんっていうんだ。忘れてないよ、キョーレツなナンパの仕方だったから」
「はい……。改めて、すみませんでした」
俺は年上女子高生にまたもや謝罪の言葉を述べた。
彼女はかんらかんらと武将みたいに笑ってみせる。
「怒ってないよ。怒ったふりをしたけどね。だってさ、失礼ではあったから。でもあの肩凝り薬、ちゃんと効いたしさ。洒落た事する良い友達じゃない!」
ああ……、またもや小鳥遊がモテている。
まあ水倉さんが好きなのはにいにだからこの場合は特殊ケースなんだけど。
俺は水倉さんにも小鳥遊の事情を話す事にした。
記憶喪失の事。
そのせいで振られた相手の記憶は消されてしまう事。
水倉さんも忘れられているかもしれない事。
彼女は大きな2つの柔らかそうなマウンテンの前で腕を組み、俺に質問した。
「手酷く振られた相手の事を忘れるって事はさ、私の事も忘れてるのかな?」
「その可能性もなくは無いんです」
「ちょっと、小鳥遊くんに今から電話なりで聞いてみてくれない? 私を覚えているか」
「…………」
美由起とケンカっぽい事になって以来、俺は小鳥遊のナンパにも付き合わなくなった。
つまり、学校で顔を合わせ、簡単な挨拶をして、普段通りに振る舞いはするがあまり会話はしたくなかった。
だがこの場合は仕方ない。
俺は小鳥遊にメールをする事にした。
彼女ーー水倉さんには何か考えがあるらしい。
実は水倉メイさん、馬鹿だと思ってたがそうじゃないのかもしれない、と思い当たった。
まあ、じゃなきゃアニメ化までしたラノベ作家の頭脳派にいにがいつまでも相手にする訳がないのである。
この人、おっぱいと同じで脳みそも人より大きいのかもしれないなと思った。
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