第15話 肩凝り少女とピップ◯レキバン
適当に遊んでいった帰り道、やけに胸の大きい女子高生が発見されたーー。
ブレザーの内側に着た学校指定のベストが、パツンパツンになりボタンが弾けそうな程の。
その膨らみ、というか『山』は、歩く度にプルリンプルリンと揺れていた。
Bカップ麻里沙とは大違いだ。
顔も、黒目が大きくて色白で可愛らしい。長い栗色の髪を腰まで垂らしていた。
年齢は俺達と同じくらいだろう。
俺がその存在に気付いた時には、既に小鳥遊(たかなし)は女子高生のいる方に向かっていた。
俺に挨拶もせずに。
いつもの事ながら仕事の早いヤツである。
俺は電柱の影から様子を見守る事にした。
小鳥遊はその女子高生に一礼すると、持っていたピップエ◯キバンを差し出した。
「お嬢さん、これをどうぞ」
ーーそれってもしかして、
『胸が大き過ぎるから肩が凝るだろう』
という意味なのだろうか?
そうだとしたらとんでもないセクハラだ。
お巡りさんを呼ばれても仕方のないレベルの。
っていうか何でそんなもん持ち歩いてんだよ。
しかしその少女は意味が分からないというような顔をして、小鳥遊を無視して通り過ぎようとした。
「君、自分の身体を大事にしてくれたまえよ。そうじゃなければ、君に惹かれた僕が泣く」
「あのう、どこかで会った?」
巨乳少女は小鳥遊の全身をジロジロ見ながら反応を見せてくれた。
「今さっき、君の姿を見かけたばかりさ」
……いいぞ、彼女の胸については触れてない。
ヤツの事だからとんでもない事を言い出すに違いないと踏んでいた俺は、ひとまず安心した。
しかし、そんな俺の安堵は打ち砕かれた。
小鳥遊の野郎がとんでもない事を言ってのけたのだった。
「君は女性専用車両に乗った方がいいな。その見事に魅惑的なバストを見たら、どんな男でも手を出さずにはいられないだろうから」
…………。
小鳥遊〜〜〜!!!
「おい、行くぞ。お姉さん、すみませんでした」
俺はたまらず隠れていた電柱の影から走り寄り、馬鹿の首根っこを引っつかんだ。
彼女はどんな怒りの表情をしているだろつ。
とっさにバスト少女の顔を見たら、彼女はケラケラと笑っていた。
彼女は小鳥遊に向かってこう言った。
「貴方、面白いわね。あからさまに私の胸を見てくるヤツらはいっぱいいたけど、貴方みたいに遠回しに指摘してくる人なんて始めて。ピップエレキ◯ンなんてね」
……え?
怒ってないのか?
「ーーただし」
彼女の顔が般若のそれに変わった。
やっぱり。
「今度私の胸について話しかけたら、ただじゃおかないわよ」
そう言って彼女は小鳥遊を睨みつける。
「まあ、もう二度と会う事はないだろうけど」
「ああいう風に、わざと怒らせるのがコツなんだ」
小鳥遊は言う。
女を怒らせるって、まあいつも使ってる手だけどな。
前も言ってたし。
だけど美由起も言っていた。
「女の『嫌い』は本当に『嫌い』」だと。
俺も基本的には美由起に同意する。
怒らせるのは逆効果だと何故分からないのか。
ましてや、身体に関する特徴を指摘するなど、一番の悪手だろう。
「ーーと言っても、何だかんだでモテてしまうんだよなあ、お前は」
俺は小さい声でつぶやいた。
「あれ? そう言えば」
電柱の影からではよく見えなかったシーンもあった。
「ん? なんだい雪村」
「あの、肩凝り用の薬はどうしたんだ? ◯ップエレキバン」
「ああ、あれなら」
小鳥遊は何でもない事のように言った。
「彼女に渡したよ。僕も最近肩が凝ってて常用してたから、丁度良かった」
「受け取ってくれたのか、彼女」
「ああ。快く」
その頃、帰宅した巨乳少女ーー水倉メイはと言うと。
きつい制服を脱ぎ捨て、下着姿だけという格好でクッションに座って、肩にピップエレ◯バンを早速貼っていた。
「クーーーーー!! 効く効く!! これなのよね〜〜!!」
彼女とは再会する事になるが、それはまた別の話だ。
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