助けるべき対象
あとで知った話だが、どうやらカルディナは帝国の姫君だったらしい。
それがわかったとき艦内は騒然とした。
しかしおかげで共和国圏内に入れたので、うまく取引できたとは言えるのであろう。
さらにここであることがバレてしまったのである。
アルーンは元共和国軍少将であったということ、ケネスも元技術将校であったということである。
元々軍を退役していたら、この艦に乗る羽目になったので、本人たちはあまり気にしていないらしい。
だがまた軍に戻りたくはないので、あくまで臨時徴兵のままでということにしてもらったようだ。
この際だからと、全員の身元を調べたところ、リズがとある王国のお姫様だということが判明し、これがアルーンに衝撃をもたらした、「リズ、お前…あいつの妹なのか」
「アルーン、貴方兄様を知ってるの!?」
「知ってるも何も戦友だった…」
「そう…一緒に戦ってたのね…」
「あぁ…」
「君の国に行きたい」
そういいだしたのはアルーンだった。
「どうして?」
「約束したんだ、あいつと…、君と君の国を守るって…」
「そう…好きにするといいわ」そうリズは呟いた。
カルディナは怒っていた、自分をここまで蔑ろにするとは許せない! 自分は帝国の姫なのだ、自分は選ばれしものなのだ、だからこそアルーンが気になっていた。
自分を特段特別扱いせず、普通の女性として話ししていたこと、接していたこと。
そう一言で言えばカルディナは恋をしたのだ、アルーンにである。
アルーンの全てが欲しいとまで思っている。
今までは欲しいものなぞ、誰かに言えば、それこそお祖父様やお父様に言えばなんでも手に入った、しかし、今回だけは違う。
おそらくお祖父様やお父様に言っても駄目だろう、自分で手に入れなければならないのだ、と直感でわかっていた。
だからこそ、自分ができることすべてを使ってアルーンを手に入れなければなるまい…。
そう感じ取ったのであった。
そしてブレット大佐を呼んだのであった。
ビーービーー! 非常ベルが鳴って全員が戦闘態勢を整える。
アルーン、ケネス、リズは格納庫にてネイオンの準備を行なっていた、
「今度の相手は本気だろうな」アルーンがいうと、ケネスが聞いた「なんでわかるんだ?」 「共和国圏内に入ったのにまだくるからだよ」 確かに言われてみれば、とケネスとリズは納得した。
「だから二人とも気を抜くなよ」
「わーかってるって」 「わかったわよ」
そういって三人は出撃した。
「奴さんは何が相手かね?」
そうまったりと待機して敵を待っていると、
「まずいな、今回はまずい」
アルーンの声色が変わった。
グウィンさんたちを下がらせて、と言おうとした瞬間ビームがグウィン隊を引き裂いたのであった。
「グウィンさん!早急に艦の守りを固めるよう、艦長に伝えて!!」
あぁ、わかったとグウィン隊は下がっていった。
そして自分たちにも火砲を打たれているのがわかって、回避行動をしたところに、敵ネイオン隊はいたのである。
「随分と久しぶりですねブレット大佐」
「うむ、そちらこそ随分と久しいなアルーン少将」
ブレット大佐の左手にはリズのネイオンが、右手には先ほど出した避難民シャトルが。
「共和国軍将校だったあなたとしては、どちらが助けるべき対象なんでしょうなぁ」
「両方助けたくば、このまま我が帝国軍の捕虜になってもらいましょう」
「どちらか片方だけの場合、どちらか片方には死んでいただくことにしましょうか」
相変わらずめんどうなことをしてきやがる、
テリーは少し待って意を決したように、私は両方を助けたい主義なんでね!っとブレット大佐にビームを放った。
おおっと、と両手を離したブレット大佐ではあるがそれと同時にビームで両方を仕留めようとしていたのである。
テリーが打ったビームは避けられ、避難民シャトルに打たれたビームがあたる! 危ない!
間一髪シールドが間に合ったようだ、
リズは!? そう言ってリズの方を見るとケネスのネイオンがいてうまくシールドで防いでくれていたらしく、ホッとしたのであった。
ふむ、作戦は失敗ですな、今日のところはこれで失礼しよう。そう言って撤退していくブレット大佐達であった。
格納庫に戻ると、「私は死んでもよかったっていうの!?」そう真っ直ぐアルーンに聞いたリズであった。「そんなことあるわけないじゃないか…」
「だが軍人として正しい道を選んだまでだよ…」
リズは仕方がないとは言え、自分が選ばれなかったことに悲しみを抱いたのであった。
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