いじめっ子の戯れ。【三人称視点】


【いつも寂しそうな君が気になってメッセージを送りました。良かったら俺と友だちになってくれませんか?】


【本当だよ。クラスは違うけど、いつも君を目で追っていたんだ。メッセージなら顔を合わせない分、本音で語り合えるだろう?】


【あのアニメ面白いよね。俺もよく観てるよ。他に好きなものはあるの?】


【暗い? そんなことない。君は物静かな落ち着いた女性なんだよ。周りの心無い言葉なんか気にしちゃいけない】


【俺と親しいとみんなにバレたら、君が更にいじめられるかもしれないからこの事は二人だけの秘密にしよう】


【君のことが好きだよ】




「ふふっ、マジうけんだけど…みきみたいな根暗ブスを相手してくれる男なんているわけないのにね」

「玉井ってば最近、幹とのメッセージやり取りハマってるね」


 放課後の教室。

 部活や帰宅で生徒達がいなくなった1年5組の教室内には3人ほどの生徒しか残っていなかった。

 少女たちは帰宅する気配もなく、スマートフォンをいじったり、化粧をしたりして過ごしていた。

 その中のひとり、玉井と呼ばれた少女は鼻を鳴らしておかしそうに笑うと、スマートフォンの画面を友人達に見せびらかした。


「だって暇なんだもーん」

「あいつ…これ知ったら……学校来なくなるんじゃない?」

「いいじゃん。そしたらこの学校が少しキレイになるんじゃない? あいついっつも暗いし目障りなんだよね〜。勉強しかできないくせになんでこの学校にいるんだか」


 それは妬みなのか、はたまた退屈しのぎに目についた人間をいじめているのか。それは彼女たちに問いかけてみないとわからない。いじめをする理由は大体が「ただなんとなく」という理由が多いらしいから、もしかしたら彼女たちもそれなのかもしれない。


 玉井は愉快そうに笑いながら、自分のスマートフォンを覗き込んだ。口元を歪めて、スマートフォンの液晶の向こう側…通信先の相手を嘲笑していた。


「最初はあっちも警戒してたけどぉ…最近は何でもべらべら話してくるようになったんだぁ。…私達の事を言ってきた時に、味方のフリして相手したら…コロリと騙されてさ~ちょろいよね〜」


 ピロリン♪と通知音がなる。

 彼女は画面をタップして、ターゲットから返ってきた返信メッセージを見て…唇を歪めた。


「でもそろそろ飽きてきたから……ネタばらししちゃおうかな…」

「…なにすんの?」

「…そうだなぁ…」


 楽しそうにそう呟いた玉井は悪巧みをする表情を浮かべたのである。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る