第十三話 甘ったるさに終止符を

「ンハァ...、ハァ...、ハァ...」


(まさか、こんな無能力者ごときに苦戦するなんてぇ...。

キセキセキの力を解放してるのにぃ...)


素早く、ジャガーは彼女の胸ぐらを掴み上げた。


「...スイーツの時間は終わりだ」


片手を引き、腹部に直撃させた。


「んぐっ...!!」


単なる、能力の無い、ただの拳なのに。

一発が...、重い。



「ハァ...、ふうぅ...」


「その拳、重いだろ?...私の思いがこもってるからな」




「ジャガー...、アルパカ...」


サーバルも立ち上がってその激闘を眺めていた。


「2人とも...」


かばんも息を飲んで見つめた。





「コツメカワウソはもう、戻って来ない。

だが、私はアンタらBGFを恨んでいる訳じゃない。

君達の死は望まない!その命尽きるまで、懺悔すべきだ...!」


そう言い放ち、再度拳をアルパカに突き出した。


「アアッ...」


一度倒れ込むが、ゆっくりと膝を付きつつ、立ち上がった。



(普通に真っ向勝負じゃ話にならないにぇ...。ここは...)


咄嗟に後ろを振り向き、何かをサーバルに投げつけた。


「...!」


「みゃっ!?」


サーバルの口の中にダイレクトに放り込まれたのはロールケーキだった。


「お前何をしたっ!?」


ジャガーが声を荒らげる。


「選手交代だよぉ...」


サーバルは、四つん這いになってゆっくり口を動かしている。


「サーバルちゃんっ!!」


かばんが慌てて声を掛けるが、聞こえていない様だ。

クチャクチャと口を動かす。


「あ...、あまくて...、うみゃい...!!」


歓声を上げる。


「おいしいでしょぉお?もっと欲しいならぁ、

ジャガーを倒しておいでぇ!」



「小癪な真似を...!」



「はーいっ!!」


威勢良く返事したサーバルはジャガーに向かう。


「どうしよう...」


「狼狽えるな!かばん!サーバルは元に戻してやるっ...。

そして、この甘ったるい戦いにも...!終止符を打ってやる!」


(アイツの身体の中にあるあれを出せば...!)


サーバルが向かってくる。


タイミングを見計らい、思いっきり右足を振り上げった。


「おりゃあっ!!」



「うびゃぁっ...」


腹に思いっ切り蹴りを入れられた彼女は手で押さえつつ、

ふらふらと膝を落とした。




「ウッ...みゃ...、おえ゛っ...」



「うわっ...」


かばんもドン引きである。



「そんなあっ!?」


「これで本当に終わらせてやる...!神風拳しんぷうけん


アルパカの後ろ首を狙い、思いっきり手刀を振り下ろした。




彼女はうつ伏せになり、起き上がる気配を見せない。


かばんはサーバルを介抱していた。


「大丈夫?」


「だ、大丈夫...、大丈夫...」


片手で涎と涙を拭った。



一方ジャガーは、アルパカが所持していた金のキセキセキを取った。

すると、奇跡解放が解除された。


「これが金のキセキセキ...。他のヤツに使われると厄介だ」


「にぇ...」


「立てるか?」


「...」


「そんなしけた面をするんじゃない。失敗したら、やり直せばいいじゃないか」


「...!違うのぉ!奴が...」


バンバンッ!




「ア、...アルパカ!!」



「ジャガーさん!上ですっ!」


かばんが叫んだ。



「Hello!エブリバディ!ガールズandガールズ!」



「アイツは...」


「くっ...、BGF最高幹部の1人、ハクトウワシ...」


ハクトウワシは銃を握りしめていた。


「ミスジャガー...、YouはホントーにLuckyGirlですねぇ!もう弾がナッシング!」


「ふざけるなっ!!」


ジャガーが声を荒らげた。


「フフッ、ミーの能力知ってますよネ?

分裂ですヨ。分裂したワタシは片割れが倒されても、

もう片方が生き残れば、ミーは生き残る...。

I am アンデッドボディー!スイーツギャングとは違って、最強デス!

ノーアビリティのyouにミーは倒せない!

...奥にいるあなた達も同じデース!」


ジャガーは先程の戦いで体力を消耗している。

下手に動けない。


「私だって、一生懸命特訓したんだからっ...!」


サーバルが立ち上がる。


「サーバルちゃん...」



「フフッ...、キッズが出しゃばらないでくださいネ!」


そう言ってから、すぐの事だった。


「みゃっ!?」


身体を持ち上げられ、上空に連れ去られる。


「はっ!?」


ジャガーもだ。

ハクトウワシが2人になっている。


勢いよく地面に叩き落とし、土煙が舞った。


「サーバルちゃん...、ジャガーさん!!」


手も足も出ない、とはまさにこの事だろう。

2人とも、一瞬にしてやられた。


「うみゃぁぁ...」


頭を抑えサーバルが苦しそうに唸る。

そして、自分の目の前にも彼女は現れた。


「残ってるyouは...」


「たえっ...」


「さっきからルックばっかりネ...。

ヨワソーだからescapetimeをプレゼントフォーユー!」



(...、僕も...、僕が...、能力を使えれば...

僕がもっと強ければ...。見ていることしかできないの?)


「ま、待てっ!!」


「What?」


「親友を...、大切な友達を傷つけて...!許さない!!」


「フフフッ!口で言うのはsoイージーね!

本当は何もできないのに...。悲しいですネ」


彼女の言う事は正しい。

僕は何も出来ないのだ。

目の前の惨劇を見ても、何も手を差し伸べられない。


「ユーも、キャッツもミーには勝てないのデス!

素晴らしいGodislandが完成するのをお楽しみに!Konoha is God!!」


立ち去ろうとした時だった。


「おい待てっ!」


後ろを振り向くと、そこにいたのはヘラジカだった。


「何ですカ?次から次へと...」


「ヘラジカさん!」


「かばんっ!これを受け取れ!」


丸い物体を投げ渡された。


「これは...」


「キタキツネがお前に渡せと言って、私に託してきた。

君なら"未来"を変えられるはずだ!私は予定があるのでな、失礼するぞ!」


ヘラジカはそう言うと姿を消した。


「も、もしかしてこれで戦えって...?」


「何ですか?そのホビーは?」


(キタキツネさんが何を思ってこれを託したのかわからないけど...)


「かばんちゃんには手を出さないでよっ!!」


サーバルが起き上がって拳をハクトウに向けた。

すぐさま分身を出し、背後の彼女の腕を止める。


「「シツコイですね!!」」


蹴りとパンチ、2人のハクトウがサーバルに攻撃した。


「ミャッ...!!」


後ろに倒される。悲痛な彼女の声。

それに耐えきれなくなった。


「ハクトウワシさん...!

相手はサーバルちゃんじゃなくて、この僕だっ!」


「さっきから口ばかり...、

ユーじゃあなたに勝てないってコト、証明してみせるネ!」


2人のハクトウが同時に自分の方を向いた。


「かばんちゃんっ...!」


(お願い、何とかなって!!)


足元にキタキツネからもらった物を、思いっきり叩きつけた。

ボカーンッという音共に、煙が巻き起こる。


「What is somoke!?」


「...あ、あれは!?」


「...んっ」


サーバル、ジャガー、ハクトウが一斉に見つめる。

煙の中から、現れたのは、

背が伸び、髪も伸びた。黒いジャンパーが風になびく。

だが、背中の白い鞄と赤い服は健在だった。

間違いない、彼女だ。


「...、懐かしい空気、私の記憶の片隅にある...。

色々語りたいけど、あまり時間が無い...」


「youは誰ですか!?」


「私は...、"未来から来たかばん"。

過去の私からあなたを倒す様に頼まれた。

ハクトウワシ、あなたを倒して見せる!」


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けものフレンズ~Story of God Island~ みずかん @Yanato383

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