第十一話 青い稲妻
長い間歩き、センザンコウの住処へ到着した。
「センザンコウいるー?」
フェネックが声を掛けた。
「何?」
彼女は平気そうな顔をして出てきた。
「あれ、フェネック?久しぶりだね。」
「突然だけど、ちょっと私たちに協力してほしいんだよねぇー」
「協力?」
フェネックは端的に現在のわかる範囲での状況を説明した。
案の定、困惑した顔をした。
「つまり、私が狙われてるの・・・?」
「ああ...」
横にいたタイリクが頷いた。
「とにかく捕まったらダメなのさ」
「わかった...。あなた達の言うこと信じる」
「助かるよ、センザンコウ」
「んー...、センザンコウには初めて会った気がしないのだ...
初めて会ったのに...」
アライさんが目を閉じ腕を組みながら言った。
「それはどうでもいいでしょ...。
ともかく、私達は博士達にセンザンコウが取られないように守らなくちゃ」
「とにかく、誰かメンバーと合流しない事には...」
その時だった。
「あーっ!!一足遅かったですかっ!?」
声で4人が一斉に振り向いた。
砂漠の真ん中に不釣り合いな青色のフレンズ。
「君はっ...、マイルカ!?」
「あれぇ?タイリクさん、どうしてこんなところに?
なんでNGFのフレンズさんと一緒にいるんですか?
まさか、裏切ったんですか?」
「えっ、どういうことなの?」
フェネックが彼女の顔を覗き込むように尋ねた。
「・・・それは」
「タイリクさんは博士さんの手下でシロクジャクを捕まえに行く途中だったんですよ」
マイルカは驚いた顔を浮かべながら、大声で語った。
「じゃ、じゃあ、タイリクオオカミはアライさん達の敵だったのか!?」
「...ど、どうなってんの?」
状況がわからないセンザンコウは尚更困惑した。
「マイルカ...、私は反旗を翻すつもりだ。
私は、BGFでもNGFでもない。私は私だ。自分自身の意志に従って動く」
腕を胸に当て、主張した。
「そうですか...。それは残念です。折角願いが叶えてもらえるチャンスを自ら棒に振るなんて。
それじゃあ、そのチャンス、私が貰いますね!センザンコウを頂きます!」
「私は...、守るべき物を守る。そう誓ったんだ...」
右手にバチバチと閃光が走った。
後ろを振り向き、こう伝えた。
「...2人はセンザンコウを頼む」
頷き、了解を示した。
(タイリクさんの能力はバチバチする嫌なヤツ...。
接近されない様にしないとですね...)
マイルカは彼女の能力については既に知っていた。
それはタイリクも同様だった。
(奇跡開放・・・、試してみるか)
金色のキセキセキを握りしめ、思い切りジャンプする。
すると、光が包み込んだ。
「なんですかっ!?」
マイルカが目を見開き驚く。
彼女は一々、オーバーリアクション取る。
「あ、あれはっ・・・」
フェネックが上を見上げた。
光の中から現れたのは、手には黄色と黒の警告色の長い棒を持ち、
赤い横帯の入った制帽を被り黒いスーツを身に纏っている。
"鉄道員姿のタイリクオオカミ"の後ろ姿だった。
腰からチェーンの付いた懐中時計を取り出す。
(〆切は10分...)
「うわぁ...、とても強そうですねぇ...」
マイルカは息を飲んだ。
「お前に負ける訳にはいかない...!」
遮断機の棒を回すと、バチバチと不穏な音を立てる。
(何ですか...、あれは充電をしている?なら、先手は)
「エレキテックレールウェイ!!」
「へっ!?」
先に行動したのはタイリクだった。
マイルカの足元には黄色の二本の線が引かれている。
後方から槍の様な電撃が天から物凄い速さでこちらに向かって来る。
彼女もそれを認識したが、避けるのが遅れた。
「あうウッ!!」
「黄色い線の内側で待ってればいいのにね...」
「バチバチは嫌ですよぉっ!!」
彼女は身体をゼリー化し、地中に潜る。
普通であれば、電気は地面に逃げる。、
その為地中の相手にタイリクの能力は通用しないのだが...。
棒を地面に突いた。
「...メトロオブトーキョー」
数秒後である。
「ぎゃあああっ!?」
悲鳴を上げてマイルカが砂地の地中から飛び出して来た。
「これで終わらせる...!」
棒を回して、彼女に向けた。
バチバチと電気が立つ音も激しくなる。
「マルーンターミナル!」
3方向からの電撃が一つになり、巨大な稲妻がマイルカに直撃した。
「あああああっ!!!!」
強力な電撃技を喰らったマイルカは、倒れ込んだ。
「す、すごい雷だったのだ...」
「マイルカもきっと...」
フェネックとアライさんも、ダメージを受けたマイルカが
これ以上足掻くことは無いと見立てた。
だが...。
「・・・あははっ。あははははっ!!」
あろうことか、体を震わせながら立ち上がったのだ。
「まだ生きてるのか。しぶといね」
「すごいですねっ...。その力...。私も欲しいなぁ!!
...マイルカちゃん、ガチになりますっ!!」
「うあっ!?」
センザンコウの声だ。
「のだっ...!」
「あっ!」
マイルカはゼリー状の触手でセンザンコウを縛り天へ持ち上げた。
「助けてっ!!」
「どうです?あの触手は私の体の一部です。
先程の様な派手なバチバチを撃ったら、彼女までビリビリ・・・。
私を壊したいのなら、強力なバチバチを流さないとダメ。
あなたが勝てる手段はもうないんですよ!!あはは!!」
嬉しそうに笑う。
(電気をアイツに流さない為には...、一か八か...)
「オオセンザンコウ...、少し我慢してくれ!」
「えっ!?」
突き刺すような状態で、マイルカに猪突猛進した。
(バカですね...、仲間も痛い目に会わせてまで私を倒そうとするとは...)
「いいですよっ!突き刺してビリビリさせてくださいッ!!!」
彼女は棒をマイルカに突き刺した。
ゼリー化の能力のせいでどんどん飲み込まれている。
「痛っ...」
センザンコウもバチッ、と静電気の痛みを感じた。
だが、それ程協力でもない。
一方棒が刺さったまま、飛び上がった。
「さあ...!強いビリビリをっ!!」
「生憎、道連れにするのはオオセンザンコウの方じゃなくて、私の方だ」
「は?」
「アライさん!私とオオセンザンコウを泡で覆ってくれ!」
と、大声で叫んだ。
「のだ...?」
「早く!!」
切羽詰まった声を聞き、アライさんは慌てて、
自分の能力を使い、突き刺さったままのマイルカ、そして、オオセンザンコウを
壁を作る様に、個別に泡で包んだ。
「ど、どういうことですか!?」
「電気を使わずにお前を倒す」
「そんなバカなっ!この場に電撃以外で私を倒せる能力なんてっ...」
すると、内ポケットからペンを3本取り出した。
「いいかい?ここには...、ボールペンが3本ある。これで君を倒す」
「そんなハッタリは通用しないですよっ...」
「私は創作以外ウソは吐かないさ。
...フェネック!!君の能力でこのペンを爆破しろっ!!」
その声はフェネックの耳までしっかりと届いた。
だが、そんなことをすれば、泡の中にいる二人は...。
精一杯声を張り上げた。
「そんなことしたらっ!!タイリクさんまで巻き込んじゃう!!!」
「私のことは考えるなっ!元々、君らとは敵同士だ!
それに今は、オオセンザンコウを守ってほしいっ!!急げッ!!!」
「フェネック!」
アライさんもそう、声を掛けた。
「・・・ハァ」
深く息を吐いて、意識を集中させた。
「そんなっ...、まさか!!こんなハズじゃ!!
海を綺麗にする願いがっ!!!」
酷く取り乱した様子でマイルカが言った。
「さあ、この話にオチを付けようか。最もベターな、爆破オチだけどね...」
棒が刺さっている所にボールペンも無理矢理差し込んだ。
「いやああああっ!!!」
「行けっ...!!」
フェネックが泡に向かって手を振りかざした。
それと同時に。
ボカンッ!!!!!
巨大な爆発音が響いた。
「おあっ!」
センザンコウを縛り付けていた触手は液体化し、泡が弾けた。
「のだあっ...!」
落ちてきた彼女をアライさんが間一髪で受け止めた。
「うあっ...」
タイリクは元の姿に戻っていた。
「タイリク!!」
すぐさまフェネックが駆け付けた。
「...、守ることが出来て良かった...。
キリンもきっと...、喜んでくれっ...ゲホッ...」
口から血を吐く。
「大丈夫...!?」
「ハハ...、君の能力は凄いね...。
フェネック...、アライさんとセンザンコウを守ってくれ...。
君なら、大丈夫さ...」
精一杯の笑顔を見せた。
「君らやかばん達の力で...、
新たなこの島の
「タイリク...!!!」
一方その頃。
「ホイップウェーブッ!!」
白い生クリームの波がジャガーに襲い掛かる。
何故か彼女は目を閉じている。
「ジャガーさん!」
思わずかばんが声を掛けた。
(...今!)
直前で飛び上がり、技を避ける。
「後ろは想定済みだよぉ!!」
既に展開していたエクレアの電撃攻撃。
「誰が後ろからなんて言った?」
「...!?」
素早く拳を引いた。1秒足らずの行動。
「真空突き...!!」
「に゛ぇ゛っ!?」
その顔に拳が飛ぶ。単に殴ったとは思えない程飛ばされた。
「私がいるのは、後ろ右斜め、あんたの盲点だよ...」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます