第九話 戦闘開始
「お前たち」
博士の問いかけに、
「やるべきことは分かってる」
「コウテイよね」
2人は即答した。
「生きてこちらへ輸送してほしいのです。
本島の方には、NGFどもが居ますので少し手こずるかもしれませんが」
「私達の力があれば充分です」
ギンギツネは自信を持った言い方をした。
「随分自信があるようですね。では・・・」
殺気立っているコウテイを見るのは、初めてだった。
あのハシビロコウでさえも、身を引いてしまう程だ。
無言で支度をし、扉の外へ出て行こうとする。
「コウテイさん、どちらにっ・・・」
「プリンセスを助けに行くに決まってるだろ」
「で、でも、コウテイさん自身も危ないんじゃ...」
「じゃあ、私はここで何をしていろと言うんだ!
このまま、ここに引きこもってろって!?冗談じゃない・・・」
剣幕な様子で、飛び出して行ってしまった。
"あっ"と彼女は手を伸ばしたが、時すでに遅しであった。
「おい、タイリク」
「あっ...!?」
ツチノコに起こされ目を開けた。
スナネコに助けを求めに来たが肝心なところで睡眠タイムに
入ってしまったので、起きるのを待っていたのだ。
そのうちに、自分も寝てしまった。
「行きますよ~」
スナネコが立ち上がっていた。
「何を伝えますか?」
「伝える?」
「彼女の能力は伝えたい事を広範囲に伝えることが出来る能力だ」
「じゃあ・・・」
「いいの?あの2人を置いて行って」
あの2人とは、オーロックスとツキノワのことだ。
「あの2人にはキツイからな。コウテイは」
日の出港から、森の中に数キロ進んだ所だった。
「彼女も能力者なのね。でも、私の能力があれば・・・」
ギンギツネが言った刹那、立ち竦むような突風が吹いた。
「向こうから来てくれたか・・・」
ライオンは微笑んで見せた。
「なに?風を吹かすのがアイツの能力なの?」
眉間に皺を寄せ尋ねた。
「...甘いね。ただの風じゃない...」
彼女がそう言った瞬間
「・・・!」
ギンギツネの右頬に鋭い傷が付き、血が垂れた。
「・・・・」
それは、ライオンも同様だった。
彼女は左指でその傷跡をなぞると、血を口で舐めた。
2人の視線の先にいたのは
「お前ら・・・、プリンセスを返せ・・・!!!」
血相を変えた、コウテイがそこにはいた。
「先制攻撃とか、随分派手じゃない。嫌いだわ。
さっさと凍らせてあげる・・・!!」
氷柱の剣を出し、構えた。
コウテイに駆け出して行く。
「・・・なっ」
コウテイの姿が一瞬にして消えた。
「遅い!」
彼女の声が聞こえたと思った瞬間、
「・・・ッ!!」
ギンギツネの体に複数の傷がつく。
「"空気の切り裂き魔"《エアーザリッパー》。
それが彼女の異名だ」
「チッ、何でそれを早く言わないのよっ!」
後ろに振り向き怒鳴った。
「お前らに構ってる暇はない・・・!さっさとプリンセスを取り戻しに」
「少しは冷静になったらどうだい」
コウテイの姿をライオンは捉えていた。
そして。
「・・・アッ!」
左腕に攻撃を当てられ、跪いた。
「君は風の様に早く動ける。
ただ・・・、光には追いつけない」
「な、何を言ってる!」
「あたしの能力は、"光線"だ」
右手の指を振ると、彼女の言った様に、光の線が糸の如く、
コウテイに向かった。
(・・・避けれない!)
5本の光の線はコウテイの体を簡単に貫いた。
「あがっ・・・」
彼女は後ろに仰け反り倒れた。
「冷静になれば、よかったのに...。ギンギツネ」
「私が攻撃される前に攻撃してよ・・・」
コウテイに近付き右手を差し出した。
「やめ・・・、ろ・・・、プリンセ・・・スを・・・」
「会わせてあげるわよ、今すぐにね」
BGF本部の廊下にて・・・
「あら、身の危険を感じてお帰りになるんですか」
赤い絨毯の敷かれた廊下を歩いていたマーゲイは、ひとりでに呟いた。
「・・・いつまで隠れてるんですか。
博士達の目は誤魔化せても、私の能力の前では意味ないですよ。
姿を現したらどうですか。カメレオンさん?」
「いつから気付いてたんでござるか?」
互いに背中を向け合う形で、姿を現した。
「最初から...、いや、はっきりとは私も覚えていませんね」
「...それならハカセたちに知らせることも可能だった」
「ええ。ですけど、私は博士に従順してるつもりは無いですよ。
私はあくまでPPPのマネージャー。
PPPの皆さんの要求なら聞きますけど、それ以外は聞きません」
「・・・」
「さっさと出てったらどうですか?」
「マーゲイ殿、こちら側に来る気は」
「さっきも言ったでしょう。私はPPPに付いて行きます。
こっちにはまだ、イワビーさん、ジェーンさん、フルルさんがいますから
私は彼女らの為に尽くす覚悟を決めました。それは揺らぎません」
「自分の信念を貫く・・・。何も悪いことは無いでござるね」
「ありがとうございます。
では、くれぐれも、お怪我なさらないように...」
マーゲイはそのまま去って行った。
「・・・という訳なんですよ。先輩」
リカオンの説明を聞いたキンシコウとヒグマは唖然とした。
能力が死んだ後判明するのは聞いたことがないからでもある。
「まあ...、どんな形であれ、お前が生きててくれて良かった」
ヒグマは言った。
「でも、モニター越しにしか会えないのは・・・」
キンシコウが残念そうな顔を浮かべるのも無理はない。
「そんな顔しないでくださいよ、先輩。
私は明るい顔のキンシコウ先輩が好きなんですから...」
「・・・」
「先輩?」
「・・・え、何?何か言った?」
「あ...、いや...、ところでどうしたんですか?」
「何か、金色のキセキセキを配るから受け取れって声がどっかから聞こえて...」
耳を触りながら言った。
「金色のキセキセキ・・・」
時同じくして・・・
「かばんちゃん、今の聞こえた?」
「...うん」
(金色のキセキセキって...、何だろう)
リカオンが作った腕の装置には小型マップも搭載されている。
それを基にとりあえず何か出来ることはないかと考えた。
博士が以前住居としていた、図書館。
あそこに行けば博士の能力の手がかりが得られるかもしれない
という、考えの元だった。
「もう夜だから、どこかで休まないとね」
「うん・・・」
そんな二人の前に現れたのは・・・
「助け・・・、て・・・」
「・・・トキさん!」
「そ、その姿は!」
上空から落下してきたのはトキだったが、
頭の羽は茶色いものでカチカチに固まって動けない。
「あら、お久しぶりですね。生きてらっしゃいましたか」
「ジェーンさん!」
「あんれまあ!サーかばちゃんたちぃ!」
「ア、アルパカ・・・」
ジェーンは蔑む様な目で、2人を見て罵倒した。
「本当にしつこいですよ。ゴキブリみたいです...」
「まあ、ジェーンちゃんは、ここで倒されちゃ困るからぁ先に帰っててぇ!」
「・・・わかりました」
持前の早い移動で、去って行った。
「アルパカさんの狙いは何ですか?」
「ホワイトタイガーちゃんの居場所だよお」
「ホワイトタイガー?」
サーバルは首を傾げた。
「まあ、色々ねぇ。忙しいんだぁ。
トキちゃんは知ってるかなあと思ったんだけど、知らなかったみたい。
だから、ここで・・・お菓子にするんだぁ」
「お、お菓子!?」
かばんは耳を疑った。
「あっ・・・、ああっ・・・」
徐々にトキの体は茶色いもので覆われ、硬直してしまった。
「トキチョコの完成だにぇ~!」
嬉しそうに手を叩いた。
「そんなっ...!」
目の前で起こっている光景が信じられなかった。
「さ~て、今度はどっちをお菓子にしようかにぇ~・・・」
「かばんちゃん!下がって!」
サーバルが前に仁王立ちした。
「・・・うん」
能力のない自分は、下がるしかない。
拳を構える。
「アルパカがそんなことするって思わなかったよ...!」
「ふーん・・・」
すると、金色の宝石の様なものも取り出した。
「いいねぇ!これを試すいい機会だよぉ」
「何か知らないけど・・・、負けないんだからっ!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます