第2話
「おねえさーん、ちょっとこっちにきて」
気付けばルゥは私の背後、少し離れたところに立っていて、ルゥの前にはそれまでにはなかったはずの扉が立っていた。扉だ。材質は何かはわからないけれど、建物も何もない場所に扉だけがあったのだ。
ぎょっとして近付くと、ルゥは急かすように促した。
「おねえさん、ほら、このとびらをあけてみて」
扉には取っ手がついていて、回して押し開けるような構造になっていた。取っ手を掴んで扉を開けると、その向こうに見えるものはまるで景色が違っていた。
「な、何、これ……?」
そこには砂地が横に広がっていて、更に向こう側には湖よりも広く水辺が広がっていた。
「おねえさん、これがうみだよ! さ、あそびにいこう!」
ルゥは私の手をとって、扉の向こうへと誘う。私はルゥに手を引かれて扉をくぐった。砂地は靴を履いていても感じられるほど熱を持っていた。空は晴れていて、強い陽射しが眩しかった。
「うみ……って湖の大きいののことなの?」
私が訊くと、ルゥは首を傾げた。
「ニンゲンのクベツのことばのことはよくわからないけど、もともとは『うみ』がさきにあったんじゃないかなあ? で、『みず』の『うみ』だから『みずうみ』なんだよ」
私はルゥの答えの意図するところがよくわからず、心の中で疑問符を飛ばしていると、ルゥは水の広がる方―うみ―へと私を連れて行った。
「みずにさわってみて、おねえさん。そしてなめてみてよ」
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