絶筆

勝利だギューちゃん

第1話

私は作家だ。

それなりに名は知れている。

作品は、アニメ化もドラマ化もされた。

賞もとった。


傍から見れば、順風満帆と言えるだろう。

自分でも否定しない。


確かに、運はいいほうだと思う。


今も1本の作品を書いている。

今回の作品は、自分の自伝的作品だ。


だが・・・


これが私の生涯最後の作品となる。

結果として、遺作になるわけだが、自殺するわけではない。


いわば「絶筆」だ・・・


歳を取ると技術的には書けても、心がついてこない。

歳を取れば取るほど、技術よりも精神力が重要となる。


その精神力が無くなると、表向きは名作でも、薄っぺらな物となる。

つまり、駄作でも名前だけで、売れてしまうのだ。


だが、私はそれには耐えられない。

正当な評価がほしい。

「あの人の作品だから」

その理由で売れるのは、辛い。


なので、私はもう、潔く筆を折る。

そして、最後に自分の半生を、残しておこうと思う。


そして、最後の作品にとりかかった。

題は、ありきたりだが、

「歩(あゆみ)」


今の私には、もってこいだろう。


余生は、かねてよりの夢であった隠遁生活をしようと思う。


「先生、出来ましたか?」

担当が来た。

「ああ、後少しだ。1時間程で出来る。」

「わかりました。お待ちしています。」

担当は、ソファでそわそわしている。


「先生」

「どうした?」

「私は、先生の処女作が好きです」

「現在完了形か?」

「はい」

私の処女作、なぜか今でも、一部に人気があるようだ。


題は、「これから」。

未来への希望に満ちた少年たちの、物語だが、自分でも売れるとは思わなかった。


彼らも、もう還暦を過ぎている。

そろそろ休ませてあげよう。


最後のページを書きおえた。

そして、担当仁渡す。


「先生、お疲れ様でした」

そう言って、編集部へと戻っていた。

私は安堵のため息をつく。


最後は、こう締めくくった。

「お疲れ」と・・・



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絶筆 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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