ある日「ただいまー」という言葉とともに家の扉をくぐる主人公
すると、その先は異世界だった! 異世界サバイバル、開幕!!
……とまあ、ここまでの流れで「ああ、巷にあふれかえっているなろう系だな」と思う人は大多数だろう。実際私もそう思っていた
しかし、読み進めているうちにわかる――この作品はそんな区分には収まりきらない
加速度的に増えていく世界の謎。なろう系ではよくある【スキル】にも一捻り手が加えられている上に、おおよそ登場するキャラクターのすべてに突出した個性的な部分が存在する
上辺だけ見れば……そう、なろう系
周りの人物がほとんど女性で、主人公はフツーの学生で、と見栄えのない設定だが、この作品の場合はその設定に「ただし」がずっとついて回るのだ。そして、その「ただし」が作品を誰もが読んだことのないものに昇華させていっている
そして、キャラの背景や口調のみならず、明確な立ち位置、スタンスの違いによる書き分けが熟達している。「あれ? この名前の奴は確か……」とか思い返す必要もない。「この名前っていうことはこいつか!」「このセリフはこいつしか言わねえ!」と、キャラを瞬時に、違和感なく理解することが出来る
そして、それらのキャラが張り巡らせる権謀術数――先がとても気になる
深まっていく謎を追うミステリー要素
拠点を築き、食料不足をなんとか解消せんとするサバイバル要素
最後に、手に汗握るサスペンス要素……
すべてを欲しがる欲張りな貴方に、迷いなくオススメ出来る一作です