おばあちゃんとホオジロザメ


 昔々、あるところにおじいちゃんとおばあちゃんがおりました。


 おじいちゃんは山へ芝刈りに。


 おばあちゃんは川へ洗濯に行きました。


 おばあちゃんが川で洗濯をしていると川上からどんぶらこ、どんぶらこ、ホオジロザメが流れてきたではありませんか。


 ホオジロザメはすぐさまおばあちゃんに狙いを定めて食らいつこうとします。


「ひょお!!」


 しかし、おばあちゃんは奇声をあげて空中に逃れ、流れる水の如き自然な動作で地面に着地し、ホオジロザメと相対します。


「まさかまだこの辺りにサメがおったとはのう・・・・・・」


 おばあちゃんは陸に上がったホオジロザメに構えを向け、戦闘態勢を取ります。

 ホオジロザメもおばあちゃんの闘気を感じ取ったのかその場から動きません。


 おばあちゃんは嘗て、多くのサメを葬ったサメハンター。


 対するホオジロザメも多くの人間を食らったサメ。


 サメハンターとサメが出会った時、天は雷鳴を呼び寄せ豪雨が降り注ぐ。


 生き残るのはどちらか。


 食うか食われるかの戦いが始まるのです。


「キェエエエエエエエエエエ!!」


 おばあちゃんの跳び蹴り、それに合わせるようにホオジロサメは噛みつこうとするが間一髪避けた。

 大気は裂かれ、地面は割れ、ホオジロサメの皮膚は軽く抉れた。


「これを避けるとはよるのお・・・・・・」


 流石おばあちゃん。

 まだまだサメハンターとして現役です。

 これを皮切りにサメとおばあちゃんの死闘は激しさを増していきます。


 サメが放った竜巻に飲まれるも間一髪脱出したり、おばあちゃんの手刀をフカヒレで受け止めたりとお互いに危うい場面が何度もありました。


「まさかここまでやりおるとは――すまんのうおじいちゃん。ワシの死に場所はここかも知れぬ」


 サメハンターにとってサメの一騎打ちで死ぬことは最高の栄誉であり、そしてサメとの戦いで死ぬことは逃れられぬ宿命でもあります。


 何を言っているのか分からないと思いますが作者である私も何を書いているのか分かりませんがたぶんそう言うことなのでしょう。


「こぉおおおおおおおお!!」


 おばあちゃんの右手に気が集中していきます。

 ホオジロザメは何かを感じ取っておばあちゃんに口から熱線を放ちました。

 熱線はおばあちゃんを包み込み、遠くにある山を穿ち、地平線を越えて大気圏を飛び越えて宇宙に飛び出し、月の表面に着弾して核爆発級のキノコ雲が起きました。


 しかしおばあちゃんは――


「この勝負――引き分けじゃな・・・・・・」


 おばあちゃんの手刀がホオジロサメの脳を破壊しました。

 しかしおばあちゃんは下半身が消し飛び、気を使い果たして安らかに眠りました。


 何事かと思ったおじいちゃんはこの光景を見て全てを悟りました。


「サメハンターにとってサメとの戦いで散るのは最高の栄誉・・・・・・全力で戦った上での討ち死にならば誇りを抱いて天にいけるじゃろう。礼を言うぞ――サメよ――」


 おじいちゃんもまたサメハンター。


 おばあちゃんと同じサメハンターだからこそサメハンターの宿命も運命も誇りも全て理解し、おじいちゃんはおばあちゃんの墓の隣に最後に戦ったホオジロサメの墓も建てました。


「ワシもサメとの戦いの中で死ぬ。だからそれまで待ってくれぬかのう」


 そしておじいちゃんはまだ見ぬ強敵に備え、今日も山へ芝刈りに行きましたとさ。


 完 

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