お前は裸の王様にすぎん
むかしむかしあるところに悪政を敷き、暴虐の限りを尽くしている悪い王様がおりました。
金銀財宝やめぼしい女をかっ攫い、適当に理由をでっちあげて弱い国に攻め込んでめぼしい物を奪いさる。
逆らう者は美しい女以外は皆殺し。
誰もが生きる希望を失い、恐怖に震えて生活していました。
そんな国にある男が現れました。
胸に七つの傷があるかどうかは分かりませんが、両肩に白いパッドに青ジャケット。
恵まれた長身の体格に深い悲しみを背負っていそうな凛々しい顔立ちの男。
その男は国に現れては次々と国王の配下を不思議な拳法で打ち破っていきます。
最初は国王も問題視しておりませんでしたが次々と配下を討ち取られていくウチに内政面で支障をきたしていき、諸侯達が反乱を起こして兵士達も国王を見限っていきます。
追い詰められた恐怖政治の末路なんてそんなもんです。
そして遂に王様はこの国を追い詰めた男と相対します。
「どうやら醜い豚がこの国を統治していたようだな」
拳をボキボキ鳴らしながら近付いて男は行きます。
男が言うように国王は好き勝手に悪政していた反動で醜い豚のような外見になっていました。
そう言われて国王は腹が立ちながらボウガンを向けます。
「そんな矢では俺を倒すことは出来ん」
「だ、黙れ! お前さえ、お前さえいなければ!」
そう言って国王はボウガンを向けた手を震えさせます。
「撃ってみろ」
「なに?」
「撃ってみろと言っている」
「ちくしょおおおおおおお!! 舐めやがって!!」
国王は躊躇いなくボウガンを放ちました。
ボウガンから放たれた矢は胸に吸い込まれていきます。
しかし男はその場に突っ立ったまま微動だにしません。
「スローすぎてアクビが出るぜ」
「なっ!?」
なんと男は二本の指でボウガンの矢を止めたではありませんか。
そして男は躊躇いなく国王に向けて矢を返します。
「ぎゃあああああああああああ!? いでぇえええええええええ!! いでぇえええええよおおおおおおおおおおおお!!」
「貴様には、地獄すら生温い」
ボウガンの矢は国王の肩に直撃。
醜く泣き喚き始めました。
「誰か、誰か助けてくれ!! 殺される!! 殺されてしまう!! 世は国王であるぞ!!」
「今のお前は裸の王様に過ぎん――終わりだ」
「ま、待て? 何をするつもりだ!?」
ゆったりとしたペースで、そして力強く一歩、一歩国王に近付いて行きます。
国王にはまるで死神が歩み寄ってくるように見えました。
失禁しながら国王は「欲しい者ならなんでもやる!! 何でもするから助けてくれ!!」と懇願しました。
しかし男はそんな国王の訴えを無視して国王の体に拳を放ちました。
「ほあたぁあああああああああああああああああああ!!」
「ぎゃぁああああああああああああ!?」
「お前の皮膚の感覚を数百倍にしておいた。永遠に藻掻き苦しむがいい」
「いでぇ!! いでぇえよぉ!? うわあああああああ!! うわぁあああああ!?」
国王は涙や鼻水、汗を撒き散らし、絶叫しながらその場でのたうち始めました。
あまりの激痛に衣服を脱ぎ捨て、裸になりました。
男はその場から立ち去ります。
こうして国王の悪政は終わりました。
国王は数日間激痛に悶え苦しみ、死にました。
その有様に国王を見限った臣下すら同情する有様だったそうです。
新たな国の統治者がが選ばるために一悶着がありましたが――それはまた別のお話です。
そして国王の恐怖政治に終止符を打った男の行方。
さらに正体までもが誰も分かりませんでした。
ただ各地でも今回のような騒ぎを引き起こしては何も無かったカのように去っていくぐらいしか分かりませんでした。
その男に関してある老人が言いました。
「世が乱れる時、北斗七星を司る拳法が現ると聞く――言い伝えは本当であったか」
そして今日もまた何処かで乱れた世を正すべく、拳法使いの男が拳を悪党相手に向けるのです。
「死にたい奴から掛かってこい」
と――
END
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