55話 プロメダルギウス鉱石
フェニックスからプロメダルギウス鉱石の採掘許可をいただけたので、採掘し始める。
「これがプロメダルギウス鉱石の原石だ」
シンゲンが手に持つ原石をかざすと、黒い輝きを放っていて、キラキラと反射している。
まるで、黒曜石に近い。
「これを採掘してほしい。イツキ殿の必要な分は報酬として渡そう」
「あ、はい。ありがとうございます」
シンゲンから革袋を受け取ったが、俺の身の丈よりデカい革袋に目を丸くする。
え? これをガドレアまで運ぶの?
「ああ、フェニックス様からのお詫びで、今回は多めに持っていってもよいそうだ」
「そうね。ワタシは散々、迷惑をかけてしまいましたわ。
ね、そうでしょう? 我が子たち」
フェニックスの足元あたりに小さな火の精霊たちが、ワイワイと騒いでいた。
「ふふふ、我が子たちは歓迎しているようです」
可愛い精霊たちだ。火がフルフルと、揺れていたり、手を振っていた。
フェニックスに聞いたら、火の精霊たちは山賊に荒らされたことで逆鱗に触れたらしい。
だが、【再生の炎】で生き返らせたそうだ。
今の火の精霊たちは元気になり、子どものように遊びまわっている。
『『キャッ、キャッ♪』』
火の精霊たちはクーと追いかけっこしたり、クーの上に乗ったり楽しんでいる。
ユアも、魔法で輪を描いたりと、交じって楽しんでいた。
『イツキさん、すごく可愛いですよっ!』
『ご主人様、熱いかなと思ったら、熱くないよっ!』
ユアとクーは嬉しそうに、はしゃいでいるみたいだね。
リフェルは採掘作業に参加したがっているので、俺と一緒に鉱石を掘り探している。
『ねー、イツキ、この鉱石を次元収納に入れてくれるかな?』
採掘中にリフェルから【念話】で、可愛らしくおねだりするようにウインクをしてきた。
だが、ここはシンゲンたちがいる。あまり、見せびらかすとややこしくなるだろう。
『今回はシンゲンたちがいるから、次元収納は控えたほうがいいじゃない?』
『あ、そうだったね。仕方ないか──』
あっけらかんと採掘作業に戻るリフェルに、やれやれと呟きを漏らした。
採掘がおわり、3メートルほど大きい革袋がパンパンになっていた。全部で5袋分あるのだが、どうやって持ち帰るんだ……。
そう考えていた時、シンゲンは鉱石がたくさん詰め込んでいるデカい革袋の2袋を、ひょいと持ち上げる。
「!!」
シンゲンが軽々しく持ち上げていることに、驚きを隠せない。
「ん? 軽そうに見えるか?」
「はい。軽いものを手に取ったように見えましたよ」
「がはは、オレは七星王だぜ? とまぁ、【身体強化】というスキルを使っているから問題ないさ」
【身体強化】って【補助魔法:エンカレッジブレイブ】とは違うのだろうか?
脳内に、叡智様からの説明が流れてくる。
〈【身体強化】と【補助魔法:エンカレッジブレイブ】の効果は同じです。
【身体強化】はスキルの1つであり、肉体を強靭化にしたり、限界をさらに引き出すスキルです。なお、一定の時間経過すると、
【補助魔法:エンカレッジブレイブ】は一定の時間の間に強化される魔法ですが、魔力が枯渇するか、効果が切れると元のステータスに戻ります〉
なるほど……。
どっちも一長一短なんだ。【身体強化】は効果期間が長く、1日も持つらしい。そういう意味では、有力なスキルだろう。
そう考えていると、叡智様から更に説明の続きをする。
〈主は、魔力が膨大なため、永続魔法を覚えると良いでしょう〉
目の前に、ステータスプレートが出現する。
それを見つめると、
【永続補助魔法:エターナルブレイブを習得しました】
と表示されていた。
えっ、こんなにあっさりと?
どんな魔法なのか、調べたらヤバイ魔法だった。【エンカレッジブレイブ】より最上位補助魔法であり、かつ俺が止めるまで、効果が永続になる。
とりあえず、その魔法を無詠唱で自らかけてみる。
【女神の加護】も合わさっているのか、より倍増になっていた。
小指一本で、鉱石がパンパン詰まったデカい革袋を軽く持ち上げてしまう。
……これって、やりすぎじゃない?
「んなぁっ! イツキ殿、どこからそんな腕力を!」
とシンゲンたちが目を丸くしていた。
「はは……レベルアップしたお陰で、補助魔法が更に強くなりました」
とりあえず、誤魔化しておいた。
そろそろ、早くガドレアへ戻らないといけないようだ。夜行性の魔物が増え、危険も増してくるからだ。
「フェニックス様、今日もありがとうございます」
シンゲンの第一声に、俺たちもお礼をする。
「みなさん、ご苦労さま。シンゲンよ、山賊がここに来てしまった。契約をきちんと果たせ。引き続き、抜かりなく管理せよ!
それと、イツキを頼みますよ」
「……はい。心入れました」
とシンゲンはふたたび頭を下げた。
「ふふ、貴方たちの旅に良き縁を──」
と、翼を広げたフェニックスは優しげな微笑みを浮かべ、溶岩が流れる火口のところへ潜っていく。
火の精霊たちにも、バイバイと可愛らしく手を振っていた。
『『『またね──!』』』
バイバイしたイツキたちは、採掘したプロメダルギウス鉱石を詰め込んだ大きな革袋5袋を抱えながら、イリス火山を後にした。
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