48話 新たな仲間

 王城の広場にて、コンスリェロ国王やテレーゼ王妃、側近や騎士たちが悲しげな笑みを浮かべながら、並んでいた。


 英雄アローンが愛用したと伝えられている聖剣クラウソラスを腰際に装備していて、アローン王国の紋章が彫られた胸当ての防具に、青い生地の服を着服しているリフェルが、手を挙げた。


「父上、リフェルは修行の旅に行ってまいります」

「気を付けてまいれ。もし、何かあったら手紙を」

「はい! ……イツキ殿、ユア殿、よろしくお願いします」


 リフェルは国王陛下に元気のいい声をあげた。

 コンスリェロ国王が俺のところに振り向いて言った。


「余からの褒美だ!」


 騎士たちが、馬車を持って来て俺たちのところへ置いた。2頭の馬に立派な馬車だった。


 なぜか、贈与されることになっている。

 俺はそこまで頂いていいのか、恐る恐ると尋ねた。


「陛下から贈与されるなんて……本当によろしいのでしょうか?」

「その通りじゃ。ぜひとも受け取ってくれ!」


 イツキとユアは魔族の策謀を見破り討ち払い、アローン王国を救った英雄だ。だからこそ、コンスリェロ国王は贈与されて当然だと答えた。


「余は大変、感謝しておる。なお、馬車は奇襲に備えて頑丈にしておいた。それ以上に、もっといい褒美をやりたかったのじゃが……。リフェルが頭を下げてくれなくてな」


 いえ、それは困ります。荷が重くなります。聖金貨5枚も頂いたばかりなのに……。

 リフェルが胸に手を当てて一礼した。


「では、父上、行ってまいります」

「うむ、寂しくなるが、イツキ殿とユア殿をよろしく頼むぞ!」


 親子の別れは、あっさりしたものだった。


 ガドレアへ出発しに、リフェルは手綱を持ち、

「さぁ、出発するぞ!」と馬車を動かしたのだった。


 ◆ ◆ ◆


 アローン王国が見えなくなってきたころ、イツキとユア、クー、そして、リフェルは馬車の中にて会話を交わっていた。


「改めて、自己紹介をしよう。私、リフェルは………いや、ここはもういいな。

 ──自己紹介するねっ! あたしはリフェル。七星王の1人であり、南星の剣聖と呼ばれているよっ!」


 威厳があって、堂々とした佇まいを感じる風貌から急に、年相応の態度に変わった。


「えっ……」

「口調が変わってますね」


 リフェルの変貌に、俺とユアはアレ? いつもと違うというような顔つきになってしまった。

 そんな俺たちを見たリフェルは、可愛らしい笑みを浮かべた。


「あはは、公の場はそうなんだけど、素はこんな感じだよ」


 話を聞くと、南星の剣聖という称号を得てから、挑戦者や貴族、王族など面会が増えたそうだ。それだけでなく、弟子になりたい、という剣士たちも結構来ている。

 普段の彼女は威厳が無く、気さくなのだが、

「リフェルは威厳が足りない。南星の剣聖に相応しい威厳を持つように!」

 と国王から助言を受けた以降、威厳のある態度にしたのだと。


「あたしはこういうの、疲れるんだ。これから一緒にいるわけだし、のびのびとしたいからね」


 ユアは納得した。


「なるほど……そういうことだったのですね」


 リフェルがじっと俺を見つめて問うた。


「あたし、みんなのことを知りたいんだけど、教えてくれる? 例えば、アローン王国に入国した理由とかね」


 俺たちは、イエスとうなずいた。これまでの経緯やアローン王国へ入国した理由を教えた。

 今後のことを考え、お互いに知った方が良いということでユアが提案した。


「リフェルさん、ステータスの見せ合いしましょうか?」

「その方が早いかもね! じゃあ、あたしから見せるね! ステータスオープン!」


________________________


種族 人間 LV98/100


名前 リフェル・シュバリエ 南星の剣聖


HP:15500

MP:6500

攻撃:16600

防御:14510

魔力:6540

精神:12860


スキル所持:剣聖術、剣神解放、威圧、弱体化無効

称号:七星王・南星の剣聖、英雄アローンの血族、アローン王国第二王女、剣術を極めし者

________________________


 す……凄いな。これが、七星王なのか。

 

 リフェルがニコっと微笑んでおねだりした。


「ねー! ねー! イツキとユアのこと、知りたいなぁ」

『ボクも忘れないで!』

「えっ?」


 リフェルから見れば、クーはガウガウと吠えているように見えるからなのか、頭の上に、はてなマークが浮かんでいた。

 ユアがクーの言っていたことを翻訳した。


「クーはボクも忘れないで、と言ってますよ」

「え? 言ってる事、分かるの?」


 ユアとイツキが、クーの言っていることが分かると耳にしたリフェルは、目をパチクリさせる。


「これは念話というスキルを使っているのです。クーは未熟のようで、同じ念話使える者でないと難しいようです」

「なんでもありなんだね……」


 唖然とするリフェルは、イツキとクーがじゃれ合っている様子を見やり、微笑ましくなっていた。


「イツキとクーは、何を話してるのかな?」

「そうですね。イツキさんは、いい子だねと褒めちぎっています。

 クーは、ご主人様♪ ご主人様♪ と甘えていますね」

「なにそれ! 本当にじゃれ合ってるね! 面白いね!」


 リフェルはピンとひらめいて、ユアにお願いした。


「そうだ。あたしも念話を使えるようになりたいんだけど、どうやればいいの? 出来ないと困ることがあると思うし」

「そうですね。リフェルさんは剣聖ですし、すぐに出来るかもしれません」


 ユアはそう言って【念話】の習得方法を教えたとたん、リフェルのステータスプレートが浮かんだ。

【念話 習得しました】と。

 リフェルはガッツポーズするように言った。


「よしよし! 念話を手に入れたよ!」


 ユアが目を丸くした。


「……あっという間ですね。流石です」


 リフェルが振り向いて【念話】を飛ばした。


『念話出来たよ──! 言い忘れたけど、イツキとユアのステータス見せてくれる?』


 おお、リフェルから【念話】が届くとは。流石、七星王だ……。


 ユアが手を挙げる。


『では、私からですね。ステータスオープン!』

______________


種族 人間 LV70/100


名前 ユア 魔導士


HP:4200

MP:4800

攻撃:2080

防御:2250

魔力:4518

精神:4600


スキル所持:念話、共有念話、魔力感知、魔力操作、元素魔法、精霊魔法、神聖魔法

称号:シーズニア大聖堂の神官、祝福を捧げる者

_______________


『へぇ! ユアってシーズニア大聖堂の神官様だったんだね! 魔族を拘束した【女神の鎖】は、ユアだったんだ』

『ええ、魔族は普通の魔法だと破れてしまうかもしれないので、最上位の神聖魔法にしたんですよ』

『なるほどね~~。やっぱ凄い! あ、クーはどうなのかな?』

『ボクはこれだっ!』


 ドヤ顔で見せるクーはステータスオープン出来ないので、代わりに俺がクーを【鑑定】し、プレートを表示させる。

___________________________


種族 神狼 LV50/200


名前 クー 


HP:6500

MP:5450

攻撃:6856

防御:5597

魔力:4854

精神:5081


スキル:空間転移、氷魔法、暗黒魔法、嗅覚感知

称号:フェンリルの子、イツキの眷属

_________________________



『えっ、めちゃ強くない?』


 久しぶりに鑑定した俺でも、驚きを隠せない。ユアもリフェルも、言葉を失っていた。


『クーって、仔犬じゃなかったの?』

『いえ、クーは仔犬ではないですよ。フェンリルの子どもなんです』

『えっ……えええええ――――っ!』


 思わず声を上げたリフェルは、クーを眺めてはじっと見つめていた。

「やっぱり、ただの冒険者じゃない……」と呟くリフェルだった。


 気を取り直したリフェルは、イツキはどうなの? と尋ねる。


 そういえば、ずっとステータス確認していないな。以前よりレベルアップしたと思う。

 うん。今回も【叡智】と【神の加護】の他に隠蔽しますか。


『ステータスオープン!』

_______________


種族 人間 LV30/100


名前 イツキ:タキシマ 魔導士


HP:2100

MP:30000

攻撃:1680

防御:1560

魔力:30000

精神:30000


スキル所持:言語理解、念話、(女神の加護)、鑑定、(隠蔽)、(叡智)、次元収納、魔力感知、魔力操作、気配感知、感知遮断、元素魔法、神聖魔法、透視、クリアボイス

称号:異世界からの来訪者、(叡智を司る者)


【(かっこ)の部分は隠蔽中】

_______________


 やっぱり、上がっているな。

 30000になりましたか。そうですか。


「えっ……さ、3万?」

「イツキ、貴方は七星王なの?」


 ユアは目を丸くし、リフェルは震えたような声色でじっと見つめていた。



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