25話 大聖堂からの依頼
リリーナの護衛依頼を終わらせた俺たちは【深紅のクォーツ亭】のところに、ユアと一緒に泊まった。
その宿屋のオーナーであるキャサリンさんが、毎回「ウフフ」と、からかうような笑みをでからかってくる。
恥ずかしいので、止めてほしかった……。
ユアはシニフィ語を身振り手振りしながら、【念話】でやり取りしている。
《『イツキさん、準備出来ました』》
《「ありがとう。そろそろ、出発、しますか」》
俺も声を出しながら、シニフィ語で身振りをする。つたない声だけれど、それでも頑張って声を出していた。
先日、ユアがシニフィ語を覚えたい! とお願いされたし、ユアの気持ちを大事にしたいのだから。
ユアが身振り手振りした。
《『大聖堂からのCランク依頼は、サフランモネアの採取でしたね!』》
サフランモネアという植物は、皇族や貴族令嬢が愛用している高級ハーブティーの1つで、独特の苦みがありクセがある味わいだ。
美容効果があり、貴族令嬢には好評らしい。
ただ、数が少なく、貴重な素材のようだ。これはCランクの依頼で、報酬は金貨3枚となる。
広大な森をやっと抜けたのち、大草原が広がった。その向こうに、湖のほとりに花畑らしき場所を発見した。
そこに、サフランモネアが生息していると聞く。
その植物は魔物に食べられないよう、方向を失わせる香りを出しているため、感知系スキルがないと発見が出来ない素材なんだそうだ。
俺が【魔力感知】で探っている最中、ユアはそこで立ち止まり小首を傾げた。
『……なんか、おかしいです』
目の前にある花畑の辺り一面が、争いの跡のように無残になっていた。
『これではサフランモネアの採取が、予定より少なくなりそうです』
『そうみたいだね。争いの跡がいくつかあるし、何故か凍っているところがあるね。もしかして、フロストウルフが争ったのかな?』
先日、リリーナの護衛依頼で大聖堂へ向かう途中に、ランクBのフロストウルフ4匹が現れたのだ。無事に討伐できたが、原因は結局、分からずじまいで調査中だった。
もしかしたら、花畑にあるかもしれない。生き残っているサフランモネアの採取のついでに、調査してみるか。
探し回っているところ、花畑にぺたりと倒れている仔犬がいることに気付く。
『ユアさん、向こうに倒れている仔犬がいるみたい』
『そのようですね。魔力が衰弱のようで、死にかけているようです』
ひどい傷だった。背中にひっかき傷があり、見るから痛そうだった。
「クゥーン……」
ユアがその仔犬の鳴き声を聞き、
《『あ、クゥーン……と鳴っています。生きているようです』》
と可愛らしく犬の仕草を真似た。
鳴き声と仕草まで、真似る必要があるのかなと頭を傾げる。
ひとまず、死にかけている仔犬を先に助けることにしよう。
【中位回復魔法:ヒーリング】を発動し、死にかけている仔犬を治してあげた。
どうやら、俺の【ヒーリング】は魔力が膨大なため、ただの【ヒーリング】でも最上位魔法に相当するほどみたいだ。
死にかけていた仔犬は目を大きくして、自分の体をきょろきょろとした。
死にかけで申し訳ない……すごく可愛いんだけど……。
見た目は生まれたてのシベリアンハスキーみたいだ。青と白を合わせた模様となっており、神秘的に感じられた。
何の仔犬なのかな? 【鑑定】してみよう、
【鑑定!】
______________________
種族 ? Lv20/200
名無し
HP:3500
MP:3000
攻撃:4500
防御:3526
魔力:3875
精神:3560
_________________________
見た目は可愛い仔犬なのに、3000は超えていた。
おお、結構ステータスが高いな。あれ? 俺、負けてるじゃん。
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