15話 再び冒険者ギルドへ

 早朝、シリウスの指導を受けるために、1人で冒険者ギルドへ向かった。


『おお、やっと来たか。早速訓練するぞ! 訓練場へ行こうか』


 シリウスが受付のところで、待機していたみたいだ。

 ギルドマスターって、もしかして暇なのかな?


『何言ってんだ。暇じゃないぞ。約束したじゃないか? 指導してやると』


 シリウスは額に青筋を立てていた。


 いや、どうして暇だと分かったんだ……。

 無理矢理、訓練場へ連れていかれ、厳しい指導を受けたのだった。


 ――数時間後。


 訓練が終えたとき、シリウスは満足げに目を細めた。


『うむ、よくできたな。この調子で鍛えて行けよ』

『ありがとうございました。魔法を剣に付与するという技は、ためになりました!』

『がはは、しかし、お前は魔導士見習いなのに、剣使えるじゃないか。素質ある』

『ありがとうございます。優しいギルドマスターで良かったです』


 本音を言うと、シリウスが愉快そうな顔つきになって、俺の肩に手を乗せた。

 

『おお、可愛い奴め! ――今日はここまでだな。これから面会の時間があるんでな』


 と告げ、この場で別れた。

 帰り際に、ロビーにある依頼ボードの方へ向かった。


 次の大陸に行っても、大丈夫だな。あと数回で依頼達成すれば、ランクBに昇格出来るだろう。

 依頼ボードを眺めると、一つ気になる依頼があった。


【Cランク素材を調達し、シーズニア大聖堂まで配達求む!】


 お、これを受注しようか。せっかくなので、依頼書を手に取り、受注した。

 これから宿屋へ戻ろうとしたところ、受付さんからトントンと俺の肩を叩いてきた。


「あの……イツキ様、重大な依頼がございましたので、ギルドマスターのお部屋まで、来ていただけませんか?」


 来てほしいということだろうか、俺は受付さんにコクリとうなずいて、あとについていった。


 ◆ ◆ ◆


 ギルドマスターの部屋にて、シリウスが強張って言った。


『すまん。また会ったな。先程の面会の方が、イツキ殿に用件があったそうだ。また、呼び出して悪かった』


 と、頭をボリボリとかいたシリウスに、老年の聖騎士は怪訝そうな顔を浮かんでいた。

 老年聖騎士がシリウスに言った。


「彼は耳が遠いのかい?」

「そうだな。耳が遠いから、念話でやり取りしている」

「なんと! 念話とは……。ワシは念話、出来ないのでな。すまないが、通訳願いたい」


 シリウスはいいぜとうなずいた。続いて、俺に【念話】で伝えてくれた。


『そちらは、神聖法皇国の法皇直属騎士団の方だ。名はガイゼル。それと――』


 法皇直属騎士団は、法皇や王族を守護する聖騎士であった。白銀の鎧をまとっており、カイゼル髭を生やしていた。。見るからに、老年だが優しそうな目つきをしていて、若々しく感じる。

 そんなガイゼルは懐から手紙を取り出し、その手紙を俺に渡す。

 シリウスが【念話】で言った。


『彼が言うには、法皇からの謁見の申し出だそうだ』


 えっ、なんで!? そんな偉い方から申し出なんて、何か悪いことした?

 

 シリウスは苦笑いした。


『はは、とりあえず、手紙を読んだらどうだ?』


 あ、はい。とりあえず、手紙を読むと――


「イツキ様、貴方に心より感謝を申し上げます。リリーナが危ない目に遭ったそうですが、イツキ様のお陰でとても助かりました。

 リリーナはイツキ様と、もう一度逢いたいそうです。是非とも、お話しませんか? わたくしも、あなたとお話をしたいと思っています。

 良いお返事をお待ちしております。――ディーナ法皇」


 ……え? マジですか。

 老年の聖騎士ガイゼルが、俺に向かってひざまずいた。


「此度はお礼も出来ず、申し訳ない。改めて、礼を言う。ありがとう」


 ガイゼルの言っていることをシリウスが、耳代わりとして教えてくれた。


『ガイゼルはお前に、ありがとうって感謝しているぞ』


 あ、いえ、どういたしまして!


『で、どうだ? 返事はどうする?』


 お偉い方は忙しそうだし、謁見って色々、準備があるだろう。


『謁見については、承知致しました。1週間後はどうでしょうか?』

『1週間か。ガイゼルに伝えておくぜ』


 シリウスがガイゼルに、1週間後に謁見することを伝えた。

 ガイゼルは了承したとうなずいて、この場を後にした。



 そういえば、ユアさんが言っていたな。

 この世界は、六大精霊王と女神という周期になっている。

 六大とは火、水、土、風、光、闇だ。

 六大精霊王は労働の日にあたり、女神にあたる日は休暇という制度になっていると聞いた。

 今日は風の日だから、一週間後の謁見は風の日ということになる。

 謁見が終わった後に、大聖堂からの依頼をこなすほうがよさそうだな。それまでは、他の依頼分をこなすことにするか。


『っははは。おい! 凄いな。法皇様と謁見とはな!』


 シリウスは笑いながら、俺の背中にバンと力強く叩いた。


 痛い……。

 痛いですよ。シリウスさん……。


『びっくりしましたよ。まさか、昨日、助けた少女がリリーナ皇女様だったなんて知らずに……』

『まぁ、そういうことだ。彼女はとても、良い御方だ。失礼のないよう、挨拶してやるといいぞ』

『はい。ご忠告、ありがとうございます。では、また』


 ぺコリと頭を下げて、冒険者ギルドを後にしたのだった。


 ◆ ◆ ◆ 


 宿屋へ戻り、ユアと【念話】で話し合った。


『イツキさん、お帰りなさい。どうでしたか?』

『ユアさん、重大な報告があります』

『はい。重大な報告ですか。何でしょう?』

『1週間後の風の日に、法皇様との謁見があります』

『やはり……。昨日、助けたリリーナ皇女様のお陰でしょう』


 あ、分かるんだ。そりゃそうだよね。


『はい。それと謁見終わった後に、大聖堂へ戻りませんか?

 依頼ボードにCランク素材を調達し、シーズニア大聖堂まで届ける依頼がありましたので、行こうかなと思っています』

『Cランク素材を調達ですか? ああ、そういうことですか』


 ユアは何やら、納得していることに首を傾げた。


『ユアさん、何か知っていますか?』

『……いえ、大丈夫です。喜ばれると思いますよ!』


 それでも、ユアはわざとらしくニッコリと微笑んだ。


 一体、何だろう? うーん。まぁいいや。いつか分かってくるだろうしね。


 この一週間は、シリウスの指導の下にスキルや魔法について練習したりしてきた。甲斐があって、いくつかのスキルや魔法を習得できた。


 確認のために、ステータスを見るか。

 ステータスオープン!

_______________


種族 人間 LV20/100


名前 イツキ:タキシマ 魔導士


HP:1000

MP:20000

攻撃:650

防御:600

魔力:20000

精神:20000


スキル所持:言語理解、念話、女神の加護、鑑定、隠蔽、虚偽、叡智、次元収納、魔力感知、気配感知、魔力操作、元素魔法、空間操作


スキルポイント:2080


称号:異世界からの来訪者、叡智を司る者

_______________


 こんなものかな。しかし、【叡智】は流石にすごいな。レベル1上げるだけで、1000ずつですよ!

 【空間操作】スキルは消費ポイントが10ポイントだったので、すぐに獲得した。もちろん、時空魔法を扱えるようにするためだ。

 だって、日本に帰れるかどうかだしな。【叡智】を使いこなしたら聞いてみよう。


 補聴器はまだ使えるし、電池も残っている。【次元収納】のお陰で、電池の消耗の減り具合がかなり遅い。

 これなら1年は、持つようだ。普通は1か月で切れてしまうのだから。


 電池が切れるまで、聞こえるようにならなくちゃ……。

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