12話 冒険者として
シリウスが話したいそうに、こちらを見つめていた。
『カード発行まで、しばらく話せないか?』
『あ、はい。私で良ければ……』
遠慮しながら、そう答えた。
『そう畏まらなくてもよいぞ。
冒険者として活躍する話だが、本来、最初はFランクとして始める予定なのだが、お前たちは高パラメーターの魔導士、シーズニア大聖堂の神官という、お2人だ。神官様は最も信頼できるからな。従って、FからCランクへ昇格してやる』
シリウスは、ニッと悪いことを考えていそうな笑みを浮かべ、サムズアップした。
冒険者の定義ってよく分からないな……。
『すみません。冒険者のランクについて、教えていただけますか?
遠くから来ましたので、冒険者という職業に疎くて……』
シリウスはやれやれと、肩をすくめながら、冒険者について講座を始めた。
冒険者というのは、魔物討伐や素材の採取等の依頼をこなし、お金を稼いだり、洞窟や迷宮へ探索したりする職業である。
仕事はEランクからSSランクまで、そして特殊ランクがある。ただし、難易度によってランク分けている。
冒険者のランクと同じランクの仕事まで受けられるが、それ以上は実力に伴わないため、受けられない。
ランクはこのような順に、なっているそうだ。
Fランク 冒険者見習い
Eランク 街中の依頼をこなす。
Dランク 街の周辺の魔物や収穫をこなす。
Cランク 洞窟や迷宮など入場許可の権利を得る。
Bランク 災害級の魔物の討伐やレアの素材の収穫等をこなす
Aランク トップクラス 数人しかいない。
Sランク Sランク級の魔物討伐、幻の素材の収穫等
SSランク 英雄 現在では6人しかいない。
『最もお前たちの場合は、Aランク以上といってもいい。イツキ殿の実力は既に、Sランクに匹敵する。しかし、経験が足りないからな。
Cランクスタートして、経験を増やしてほしい』
冒険者はギルドマスター権限で、Cランクまで昇格することができる。Sランクへ昇格できるのはグランドマスターのみであり、ギルドマスターでは権限がないため、出来ないそうだ。
会社に例えるとギルドマスターは支社長、グランドマスターは社長という感じだろうか。
なお、SSランクはSランクでかつ、偉業を果たしているかどうかという条件しか昇格できない。
『まぁ、そういうことだ。
表へ出るまでには、しっかり依頼を果たして、経験を積んでほしい。
頼んだぞ。お前には、直接依頼したいものがあるからな』と依頼ボードへ指をさした。
最後まで、面倒みてくれるいいギルドマスターだわ。
冒険者についての講座を終えたとたん、受付さんが小走りで、向かってきた。
「お待たせいたしました! 冒険者カード出来上がりました。ご確認ください~~」
冒険者カードを受け取り、それを眺めると、表面はCという文字が大きく表示されていた。名前と魔導士とレベルの三つがCの文字より小さな文字で表示されている。
Cランクの場合は紫色なんだね。
シリウスによると、ランクは色分けしているそうだ。
SSランク 黒
Sランク 金
Aランク 銀
Bランク 銅
Cランク 紫
Dランク 青
Eランク 緑
Fランク 灰
冒険者にも特典があり、ホテル1泊無料制度やグルメなどは個室サービス受けられる等、色々あるそうだ。
まるで、クレジットカードみたいだ。
何でも、SSランクの黒カードは凄いらしい。何でも執事がついており、それも無料で使える。
様々な国の王との謁見もできるし、国からの依頼でも拒否出来る権限もあるらしい。
ああ、ブラックカードの凄さが分かってきたよ。
シリウスが、俺の肩に手を乗せて言った。
『そうそう、お前たちには凄い期待しているし、何なら指導してやろうか?』
シリウスの指導を受けるなんて、これは凄いことじゃないだろうか。
『え、いいんですか! ぜひ、お願いします!』
『ははは、気に入ったぞ! 明日またここに来い! 指導してやるぞ!』
何やら、ギルドマスターから、お気に入りにされたようです。
ユアも感心した顔つきで、見つめていた。
受付さんも驚きのあまりに、絶句していた。
『また、来ます。今日は色々とありがとうございました』
◆ ◆ ◆
イツキとユアはこの場を後にし、ギルドマスターと受付さん二人のみになった。
「こりゃあ、期待の星だな。人柄も良いし、これは化けるぞ!」
「ギルドマスターが高い評価を出すなんて、私はとてもびっくりしてますよ。めったに褒めないですもの」
受付さんは、驚きを隠せないあまりに失言した。
耳に入ったシリウスはギロリと、受付さんを見つめた。
「ん? なんて言った?」
「い、いえ。何でもありません。彼らはいったい何者なんでしょうか?」
受付さんは思わず竦んでしまい、話を逸らした。
「さぁな、良く分からん。勘だな。何か大きなことをしそうだと感じたんだ」
「そ、そうですか……」
「明日、楽しみにしてるさ。久々の指導だ。フフフ」
シリウスは入口の扉を眺めて、ニヤリと笑った。
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