9話 冒険者ギルド

 冒険者ギルドは、3階建ての立派な建物になっている。昨晩、泊まった宿屋と同じ赤レンガの建物だった。2mぐらい大きな窓が沢山あり、外からでも中がはっきり見えた。

 入り口は、俺の背の二倍ぐらい大きな両開き扉になっていた。造形が凝っているのか、絵画のように見えた。

 ここでも、芸術の域に達しているなと感じた。


『ユアさん、冒険者ギルドなんですが、こんなに美しい建物なんですか? 芸術的だと感じます』

『あら、嬉しいですね。そうなのです! 神聖法皇国は神の国ですから、芸術家も沢山います。芸術家も女神様を信仰して下さりますし、女神様は芸術家に芸術系スキルを与えているのですよ!』


 国のことを褒められて嬉しいのか、ユアはテンション高くなっていた。


『凄いですね。ずっと滞在したくなります』

『ふふ、ありがとう』


 イツキとユアは【念話】で話し合っているが、周りから見れば、2人仲良く、見つめ合っていて、デートしているように見えるだろう。

 もちろん、ユアは大聖堂の神官なので、有名人であった。


 当然、周りは「彼は何者だ?」、「男がいたとは……」、「悔しい!」など疑いの目で見る者、衝撃を受けた者、嫉妬する者がいた。

 そして、「かっこいい男だわ!」、「お似合いだなぁ」、「幸せそう。私も幸せになるわ!」など温かい目で見る人々もいた。

 周りから様々な視線を出しているのに関わらず、お二人とも、お花畑状態で気付いていないのである。


 ◆ ◆ ◆


 冒険者ギルドの中に入ると、受付までの通路沿いに、存在感のある石像が左右3つずつ並んでいた。


『ここ並んでいる石像は、英雄たちの石像なのです。偉業を達成し、SSランクになった記念として建ててくれます。今、並んでいるのは6体なので、Sランクでかつ偉業を果たし、SSランクになった英雄は6人ということになります』

『へぇ、そうなんだ!』


 そういえば、この世界は戦争がある。

 魔物もいるから、偉業を果たしたんだろうな。


『特に偉業が素晴らしいのは、ユウカ:カンザキという英雄ですね。魔王軍からの侵攻を討ち払い、国を救った英雄です。

 それと、剣聖フリードも英雄の一人です。いくつかの国を食い荒らす、天災級の魔物の討伐を果たしました』


 それはすごいわ!

 ん? ユウカ:カンザキって、神崎優香ですよね?

 日本人の名前っぽいけど、その人も、俺と同じ異世界からの来訪者なのかな?


 ユウカ:カンザキの石像は、長髪で身長がすらっとしていて、優雅に感じるスタイルだ。

 いかにも、魔導士です! とアピールするようなポーズで、造形を凝らした魔導士の衣装を着ていた。

 石で加工しているのに、再現性が非常に高く、リアルに感じられた。


 受付の女性が、きれいなお辞儀をした。おさげの眼鏡っ子の女性だった。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。どのような用件でお越しでしょうか?」


 受付さんから声かけてきたが、ユアが耳代わりとして対応してくれた。


「冒険者登録しに来ました。私と彼、2人でお願いします」

「神官様! どうして登録に! あ、すみません……。

 ご登録について、了承致しました。登録する前に、ステータス鑑定石ではかる必要があります。こちらへご案内いたします」


 目を丸くしてしまった受付さんだったが、仕事であることを思い出し、切り替えて対応した。

 

『これからステータス鑑定されますので、次元収納とかは隠しておいてくださいね』


 ユアからの【念話】に俺はうなずいて、隠蔽系スキルを発動させた。

 スキル:【隠蔽】で、〈女神の加護、叡智、次元収納、スキルポイント、称号〉を全て隠蔽した。

________________________


種族 人間 LV15/100


名前 イツキ:タキシマ 魔導士見習い


HP:500

MP:15000

攻撃:400

防御:350

魔力:15000

精神:15000


スキル所持:言語理解、念話、鑑定、魔力感知、魔力操作、下級魔法、中級魔法


称号:なし

________________________


 被鑑定用のステータス出来上がりだね。

 宿屋でスキルポイントを使って、【隠蔽】というスキルをとって、練習しまくったのだ。スキルポイントは、たったの5っておかしい。

 うまく隠してくださいね、と言われてる気がする。


 受付さんが、鑑定石へ導くように言った。


「では、鑑定を開始します」


 第一にユアが、鑑定石の上に手を乗せた。

 鑑定石が光り輝き、やがて消えていくと、プレートに文字が浮かんできた。


_______________


種族 人間 LV55/100


名前 ユア 魔導士


HP:2080

MP:2500

攻撃:818

防御:1253

魔力:2835

精神:2540


スキル所持:念話、魔力感知、魔力操作、元素魔法、精霊魔法、神聖魔法


称号:シーズニア大聖堂の神官、祝福を捧げる者

_______________


 受付さんは、ステータス表示されたプレートを取り、ユアに尋ねた。


「ありがとうございます。そういえば……神官様の方は何故、冒険者になろうとしたのでしょうか?」

「彼と一緒に、旅立つことになったんですよ」


 ユアがそう答えると、受付嬢は何やら俺をじっと見つめているようだ。

 受付さんから何やら話しかけられたが、言ってることが分からず首を傾げてしまう。

 ユアが答えてくれた。


『イツキさんの番ですよと言ってますよ』

『あ、俺の番ですね。助かります』


 先程まで、ユアと同じように、鑑定石の上に手を乗せた。


________________________



種族 人間 LV15/100


名前 イツキ:タキシマ 魔導士見習い


HP:500

MP:15000

攻撃:400

防御:350

魔力:15000

精神:15000


スキル所持:言語理解、念話、鑑定、魔力感知、魔力操作、下級魔法、中級魔法


称号:なし

_______________________


 ちゃんと隠蔽できているな、と安心した。

 ──だが、ここで大きな問題が出てしまった。


「え、ええぇ~~、1万越え! しかも魔導士見習いなのに1万越え!」


 受付さんが目を大きく開き、口パクパクしながら叫んだ。

 はぁ……と、こてかみを抑えるように、呆れ顔で呟くユアは俺に【念話】を飛ばした。


『イツキさん…………貴方は常識というものを、教えなければなりませんね……』


 俺はとりあえず、聞こえないフリをしておいた。

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