7話 初めての野営

 ユアは呆然としたのであった。


 これだけで唖然させられるなんて、【叡智】とか【女神の加護】とかは伏せた方がよさそうだ。

 誰にも悟られないように、隠蔽系スキルも取った方がいいかも知れない。

 向こうについたら、検討しよう。


 ユアはひとまず、心を落ち着かせた。


『ふぅ……。次は、私ですね。ステータスオープン!』


______________


種族 人間 LV55/100


名前 ユア 魔導士


HP:2080

MP:2500

攻撃:818

防御:1253

魔力:2835

精神:2540


スキル所持:念話、魔力感知、魔力操作、元素魔法、精霊魔法、神聖魔法


称号:シーズニア大聖堂の神官、祝福を捧げる者

______________


『レ……レベル55って、すごいですね! 元素魔法と精霊魔法、そして神聖魔法ですか。習得まだなんですよね』

『イツキさんの方がすごいと思います! 次元収納とか使える人って、あまりいないですよ! しかも、一万越えですし……』


 ジトっと見つめるユアに、俺は乾いた笑いをした。


『はは、今の時点じゃ、使いこなせていないので、ほとんど宝の持ち腐れですけど……』


 そうなのだ。優れたスキルがあっても、使いこなせていない無駄なスキルになっている。

 分かりやすく言えば、今まで慣れていた自転車乗りから重量自動二輪車へ、いきなり乗るという感じだろう。

 完全にものにするには、訓練するしかあるまい。

 異世界に飛ばされて一か月というわけだから。まだまだ、ヒヨコなのである。

 唯一、ものにできたのは、【念話】と【鑑定】、【次元収納】であった。


 ちなみに、俺は旅人が良く使われる、皮のレザーベスト、白いシャツ、皮のブーツにフード付きの皮のコートを着ている。

 いわゆる、旅人の服だ。

 食材や野営に必要なもの、鞄とか持ち物がなく、手ぶらになっているのは【次元収納】を使って仕舞っている。もちろん、ユアの持ち物も一緒に仕舞ってある。


『便利なスキルじゃないですか……』

 とユアがぼやいたことは伏せておこう。

 ただ、街中歩く場合、手ぶらは怪しまれるので鞄だけ出しますけど。



 夜になりかけてきたので、ちょうどいい原っぱのところを探す。


『このあたりなら、野営できますね』

『ええ、久々の野営です。昔、私は結構、旅してましたから』


 野営の準備はユアの方が長けているので、俺はユアの指示を受けて【次元収納】からテントを取り出して張ったり、メシアたちから頂いた食料を料理して、食事したりしていた。

【次元収納】は無空間なので時間の概念とか空気も無く腐ることはない。時が止まった状態の食料だと、わかるだろうか。

 本当に、便利なスキルだと思う。


 これから向かう神聖法皇国オブリージュについて、説明してくれた。

 その国は女神ディネヘレゥーネを拝める人々が集まり、一つの国として出来たのだそうだ。

 歴史はとても古く1500年は続いている。そして、現法皇は35代法皇である。

 早朝、出発すれば夕方あたりに、到着するそうだ。


 ユアが尋ねた。


『イツキさんは女神様の招待で、ここに来られたと伺っています。この機会に、神聖魔法を習得してはいかがですか?』

『……違います。招待ではないですよ。勝手に連れていかれたという方が正しいです。まぁ、神聖魔法とはどんな魔法なんですか?』


 招待じゃないんだよな。あの女神は全然、俺の話を聞いてくれなかった。【叡智】使いこなせば、どんな魔法かわかるのに。

 いち早く、【叡智】を使いこなせなくては!


 ユアが人差し指を立てて言った。


『神聖魔法とは、女神様との契約を行い、信仰によって使役する魔法ですね。属性といえば、光に属する魔法の1つなのですが、補助魔法の1つと言えます。

 私も神聖魔法を扱えるのですが、元素魔法と精霊魔法を主体としていますので、そこまでは強くないです』


 この世界の魔法は、いくつかある。

 元素魔法は、火、水、地、風の四属性を行使する魔法の1つ、

 精霊魔法は、この地にいる精霊の力を借りて行使する魔法の1つ、

 神聖魔法は、女神の儀式によって契約し、信仰する神の力を借りて行使する魔法の1つ、

 因みに時空魔法は、俺が使っている次元収納も時空魔法の1つのようだ。


『時空魔法は扱える人がいないですし、失われた古代魔法の1つなんですよ』


 ユアが、目立つようなことは控えた方がよろしいかと、助言してくれた。


『魔法はそのまま使えるのですが、スキルがあるかないかで、威力も効果もかなり違います』


 魔法とスキルの組み合わせによって、強くなることがあるという。

 確かに、【次元収納】も元と言えば、時間停止の箱に近いかもしれない。うん、【時空魔法】を習得したいものだ。


 テントの中は、俺とユアと一緒に横になっていた。

 この世界について、スキルやら魔法やら色々教わり、仮眠しながら朝迎えた。


 ユアは女性なので、一緒に寝泊まりという体験は本当に緊張した。

 いや、ホントに。男として冷静に保たなくては! と密かに決意したのであった。

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