6話 旅立ち

 昨晩は神官長メシア、神官3人と侍女たちが、これから旅立つ俺とユアのために、みんなでお祝いしてくれた。


『イツキ様は29歳なのですね! 見た目によらず、お若いです! と言ってます』 とユアから通訳してもらったり、

『念話できないことに、悔しがっているそうです』

 とユア以外の神官3人がぼやいていたことを教えてくれたり、

『相変わらず、人気ですね。イツキ様は』

 とメシアが、からかうように笑ったりしていた。


 メシアが俺のところへ歩み寄って、別れの言葉を【念話】で言った。


『もし、寂しくなりましたら、ここに帰ってくださいね。お待ちしてます。女神様のご加護がありますように……』

『メシアさん、色々とお世話になりました! ありがとうございます。また戻ってきますね!』


 1か月間、色々お世話になったし、良い出会いだと胸をふくらませた。


 ◆ ◆ ◆ 


 現在いるところは、シーズニア大陸のシーズニア大聖堂から神聖法皇国オブリージュへ繋がっている道路だ。

 見渡すと緑いっぱいの森林であった。


 アステルの世界について、ユアから教えてくれた。


 この世界は4つの大陸があり、最も広大な大陸はガイア大陸で、次点がイシュタリア大陸である。

 ガイア大陸は、亜人や獣人族等が沢山住んでいる。人間族もいるが、殆どは旅人や冒険者が多いらしい。人間族が多く占めているのは、イシュタリア大陸だそうだ。


『なるほど、今、俺たちがいる大陸はシーズニア大陸なんですね』

『はい。ここの大陸は危険な魔物とかは少ないですし、神の大陸と言われている所以ですから』


 シーズニア大陸は4つの大陸の中で、最も小さな大陸ゆえに、一周歩く時間は2週間程度なのだと。

 まずは、神聖法皇国オブリージュへ向かうことにした。

 イシュタリア大陸へ向かうためには、神聖法皇国オブリージュの港にある定期船に乗って行かないといけない。


『初めての旅立ちで、ドキドキとワクワクがあります』

『イツキ様、慣れていけば大丈夫ですよ』

『あ、イツキ様って呼び方はどうも歯がゆいんですよ。一緒に旅立つわけですし、呼び捨て頂けると嬉しいかな』


 ユアは頬に人差し指であてた。


『んー、呼び捨てはどうかと思うので、イツキさんでいいですか?』

『あ、はい。それでお願いしますね』


 何か思い出したのか、ユアは人差し指を立てて言った。


『イツキさん、ステータスとかお互い見ませんか? 見せたくないものがあれば、隠してもよいですよ』

『なるほど。見せっこですか。確かにお互い知っておかないとこの先、困ることがありますね。了解です。一部隠してオープンします。ステータスオープン!』


_______________


種族 人間 LV15/100


名前 イツキ:タキシマ 魔導士見習い


HP:500

MP:15000

攻撃:400

防御:350

魔力:15000

精神:15000


スキル所持:言語理解、念話、鑑定、次元収納、魔力感知、魔力操作、下級魔法、中級魔法


称号:異世界からの来訪者

_______________


「………………」


 ユアは固まっていた。


『あれ? ユアさん、どうしましたか?』


 そう言うと、ユアは顔をフルフルと振った。


『……いえ、1万超えが初めて見るもので。次元収納とか古代魔法をお持ちとは……』


 何やら、ブツブツとつぶやくユアさん。

 可愛い顔して、ブツブツするのは何かシュールだった。


『はは、スキルポイントで取得したものなので、誰でも取れるんじゃないでしょうか?』

『スキルポイントですって!』


 目を丸くしたユアが、興奮のあまりにばっと俺に振り向いた。


『レベルアップするとポイントもらえるので、そのポイントでスキルを獲得するんです』

『そんなスキルがあるのですか……』


 ユアは、つっこむ気力が失せたのか、呆然としながら俺をじっと見つめた。

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