2話 始まり
案内されたところは、8人ほど座るような円卓があり、椅子が並べている小さな会議室だった。
メシアは【念話】で、
『では、お掛け下さいませ』と手を差し伸べた後、真剣な眼差しで状況を説明した。
『ここは、アステルと呼ばれる世界です。この世界は、魔法を主体として生活しております。
これは我が女神、ディネヘレゥーネ様からのお言葉ですが、あなたの世界では科学を主体とし、魔法という概念がない世界と聞いております。
まずは、この世界で楽しむがよいとのことでした。
──貴方は、これからどうお過ごしになさいますか?』
『…………まぁ、せっかくの異世界ですし、ゆっくりと生活して慣れていきたいと思っています』
『かしこまりました。イツキ様、色々とお疲れでしょう。まずは、お部屋をご案内しますね』
そこまで歓迎してくれるのか。
『えっ、本当に良いのですか!?』
『ええ、大丈夫ですよ。慣れてきましたら、わたくしに何でもお聞きくださいな』
メシアは、見惚れてしまいそうな微笑みを浮かべた。
『ありがとうございます。宜しくお願いします』
◆ ◆ ◆
案内された部屋は、無数に散りばめられた星屑のような複雑な幾何学模様のタイルが貼られている壁、白い無垢フローリングというシンプルな部屋だ。
ベッドと衣装タンス、テーブルに椅子の4点のみ置かれている。
すごく、シンプルな部屋で落ち着くね。
色々と疲れていたので、ベッドの上にドサッと横になった。
窓の向こうには、いくつかの山がそびえていて、二つの月が仲良く照らしている景色はとても幻想的だ。そんな景色を眺めながら、のんびりと過ごしているところ、ふと思う。
本当に、異世界へ飛ばされたんだなぁ。向こうは、俺が消えた事を心配しているんだろうな……。
ディネヘレゥーネって、ここの世界の神様だったんだ。
異世界に行ってみたいなと、何となく思っただけで、まさか、このような事態になるなんて思いもしなかった。
でも、ここの空気はとてもおいしい。こんなに、おいしいのは初めてな気がする。木々の香り、花々からの甘い匂いが漂っていて、清々しい気分にさせてくれる。
俺が住んでいたところは、本当に汚れた空気なんだと思った。
ポケットからスマホを取り出し、チェックすると圏外と表示されていた。
ここはコンセントとか電波とか、地球の文明とは全く違うし……。
確か、今は剣と魔法の世界にいるんだよね。
バッテリー切れたらもうアウトだし、電源OFFにしておいたほうがよさそうだ。
あっ、補聴器の電池どうするんだ……。ここは電池って、存在しないと思うし、補聴器なしで生きていけるか、不安になってきたぞ。
耳にかける補聴器は電池式で、電池が切れると、全く聞こえなくなってしまう。
タイプによって違うが、俺が使用している補聴器は1か月で電池交換するタイプだ。ただ、水に弱いのが悩みだが。
電池が無くなるのも困るからと早速、補聴器を耳から外した。必要な時にだけ使用しようと思い、保管できそうな箱があるか、部屋あたりに探し出すが見当たらない。
あっ、ファンタジー系の小説で読んだことがある。次元収納とかそういう魔法があるんだよね。次元収納へ保管しちゃえばいいし。
よし、やってみよう。
見様見真似で、片手を広げ「次元収納!」と強く念じて唱えた。
…………シーン。
あれ? 何も起こらない。どうやってやるんだろう。うーむ……後でメシアさんに聞いてみるか。
何か思い出したように、ベッドから立ち上がった。
ステータスって小説読んだ限りでは、ステータスオープンって唱えると表示されたような気がする……やってみるか。
「ステータスオープン!」
瞬く間に、金色の文字が刻印されたやや透明なプレートが出てきた。
うわっ! びっくりした……。どれどれ。
早速、文字を読もうと覗き込む。
おお──、ゲームとかよく出るステータスにそっくり!
あまりにも、リアルなステータスが表示されていたことに、興奮してしまう。
_______________
種族 人間 LV1/100
名前 イツキ:タキシマ
HP:100
MP:100
攻撃:100
防御:100
魔力:100
精神:100
スキル所持:言語理解、念話、【お楽しみに♪】
スキルポイント:100
称号:異世界からの来訪者
_______________
へぇ、オール100って……。テストの百点満点みたいだな。笑えない。
どういった基準なんだろうか? 良く分かんないや。
それにしても、ここの世界ってスキルがあるんだな。
おいっ! 【念話】の次に、【お楽しみに♪】って何ですかっ? 何が楽しみなんだ……。
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